作品に出てくるものの数え方(助数詞)
 
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通
作 家
作 品
夏目漱石
【思い出す事など】
この静かな宵(よい)を心地(ここち)よく白い毛布の中に二時間ほど送った時、余は看護婦から二通電報を受取った。一通を開けて見ると「無事御帰京を祝す」と書いてあった。そうしてその差出人は満洲にいる中村是公(なかむらぜこう)であった。他の一通を開けて見ると、やはり無事御帰京を祝すと云う文句で、前のと一字の相違もなかった。余は平凡ながらこの暗合(あんごう)を面白く眺めつつ、誰が打ってくれたのだろうと考えて差出人の名前を見た。
有島武郎
【或(あ)る女 (前編)】
古藤(ことう)が木村と自分とにあてて書いた二通手紙を取り出して、古藤がしておいたように、枕(まくら)の下に差しこんだ。
有島武郎
【或(あ)る女 (後編)】
倉地は幾十通とある郵便物を見たばかりでいいかげんげんなりした様子だったが、だんだんと興味を催して来たらしく、日の順に一つの束からほどき始めた。
岡本綺堂
【青蛙堂鬼談 青蛙神(せいあじん)】
三月三日の午(ひる)ごろに、一通速達郵便がわたしの家の玄関に投げ込まれた。
徳冨蘆花
【不如帰(ほととぎす) 小説】
今の奥様の輿入(こしいれ)後奥台所の大更迭を行われし時も中将の声がかりにて一人(ひとり)居残りし女、これが終始浪子のそばにつきてわれに好意の乏しきが邪魔なれど、なあに、本人の浪子さえ攻め落とさばと、千々岩はやがて一年ばかり機会をうかがいしが、今は待ちあぐみてある日宴会帰りの酔(え)いまぎれ、大胆にも一通艶書(えんしょ)二重(ふたえ)封(ふう)にして表書きを女文字(もじ)に、ことさらに郵便をかりて浪子に送りつ。
伊藤野枝
【出奔】
「郵便! 藤井登志という人いますか」
「ハイ」
出て見ると三通封書を渡された。一通はN先生、一通は光郎、あとのはねずみ色の封筒に入った郵便局からのだ、あけて見ると電報為替だ。N先生から送ってくだすったもの、先生からこうしてお金を送って頂こうとは思わなかった。と思うと登志子はもう涙をいっぱい目に溜めていた。
菊池寛
【青木の出京】
青木が、涙を流しながら誓った送金は、いつが来ても実現しなかった。雄吉は堪らなくなって、二、三度督促の手紙を出した。青木からは、それに対して一通ハガキさえ来なかった。彼は、最後にほとんど憤りに震えているような文面の手紙を出した。それに対しても、青木は沈黙を守り続けた。
菊池寛
【俊寛】
彼は、目の前で、成経と康頼とがその垢(あか)じみた衣類を脱ぎ捨てて、都にいる縁者から贈られた真新しい衣類に着替えるのを見た。嬉し涙をこぼしながら、親しい者からの消息を読んでいるのを見た。が、重科を赦免せられない俊寛には、一通玉章(たまずさ)をさえ受くることが許されていなかった。俊寛は、砂を噛み、土を掻きむしりながら、泣いた。
田澤稲舟
【五大堂】
流石やさしき文人とて、折にあひたる古歌などひくゝ口すさみ、我にもあらで立ずみし袂にさはりしものあるにぞ、何かとばかりおどろき見れば、いづこより投ぜしか、簪に結びし玉章一通足もとに落ちりてひろひあぐるを待ゐる風情、これ初恋の面影と、しるやしらずや月さへも、まよひの雲につゝまれて、ひかりもいとゞうすれゆく、艶にゆかしき夕なり。
樋口一葉
【大つごもり】
お峰が引出したるは唯二枚、殘りは十八あるべき筈を、いかにしけん束のまゝ見えずとて底をかへして振へども甲斐なし、怪しきは落散(おちちり)し紙切れにいつ認めしか受取一通
(引出しの分も拜借致し候        石之助)
さては放蕩かと人々顏を見合せてお峰が詮議は無かりき、孝の餘徳は我れ知らず石之助の罪に成りしか、いや/\知りて序に冠りし罪かも知れず、さらば石之助はお峰が守り本尊なるべし、後の事しりたや。
浴槽の花嫁
【牧逸馬】
七月八日に夫妻は同町の一弁護士を訪れて、彼のいわゆる「形式」として、ヘンリイがまず自己の所有のすべてを妻ベシイに遺(のこ)す旨(むね)の遺言書を作製して署名した。ベシイは一通同じ意味の遺言を調(ととの)えて、型どおり弁護士立会の下に夫婦それを交換した。遠い慮(おもんぱか)りとして、ベシイはこの良人(おっと)の処置を悦んだが、案外それは近い慮(おもんぱか)りだったのだ。
岡本綺堂
【心中浪華(なにわ)の春雨(はるさめ)】
六三郎は懐ろに書置きを持っていた。それは親方に宛てたもので、単に御恩を仇(あだ)に心得違いをして相済まないという意味が認(したた)めてあった。お園は自分と仲のいい朋輩に宛てて一通書置きを残してあった。それには六三さんを江戸へやるのがいかにも可哀そうだから一緒に死ぬということが書いてあった。
 
   
 
 

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Last updated : 2023/02/24