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悪戦苦闘
あくせんくとう
  1. 悪い状況の中で苦しい戦いをすること。
  2. 困難に打ち勝とうと努力すること。
作家
作品

芥川龍之介

【蜜柑】

――その理由が私にはみこめなかった。いや、それが私には、単にこの小娘の気まぐれだとしか考えられなかった。だから私は腹の底に依然として険しい感情をたくわえながら、あの霜焼けの手が硝子戸をもたげようとして悪戦苦闘する容子ようすを、まるでそれが永久に成功しない事でも祈るような冷酷な眼でながめていた。

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芥川龍之介

【開化の殺人】

 是に於て予は予の失恋の慰藉ゐしやを神に求めたり。当時築地に在住したる英吉利宣教師ヘンリイ・タウンゼンド氏は、この間に於ける予の忘れ難き友人にして、予の明子に対する愛が、幾多の悪戦苦闘の後、漸次ぜんじ熱烈にしてしかも静平なる肉親的感情に変化したるは、いつに同氏が予の為に釈義したる聖書の数章の結果なりき。

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島崎藤村

【夜明け前 第一部下】

水長二藩の提携は従来幾たびか画策せられたことであって、一部の志士らが互いに往来し始めたのは安藤老中あんどうろうじゅう要撃の以前にも当たる。東西相呼応して起こった尊攘派の運動は、西には長州の敗退となり、東には水戸浪士らの悪戦苦闘となった。

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太宰治

【二十世紀旗手 ――(生れて、すみません。)】

 家人の緊張は、その日より今にいたるまで、なかなか解止せず、いつの間にやら衣紋竹えもんだけを全廃していた。なるほどな、とそのときはじめて気づいたことだが、かの衣紋竹にぞろっと着物かかって居るかたちは、そっくり、あの姿そのままでございました。そのほかにも、かれ、蚊帳吊るため部屋の四隅に打ちこまれてある三寸くぎ抜かばやと、もともと四尺八寸の小女、高所の釘と背のびしながらの悪戦苦闘、ちらと拝見したこともございました。

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太宰治

【男女同権】

こぞの道徳いまいずこ」という題の、多少、分別顔の詩集を出版いたしましたところ、一ぺんで私は完全にダメになりました。ダメのまた下のダメという、わば「ほんもの」のダメという事になりまして、私は詩壇に於いて失脚し、また、それまでの言語に絶した窮乏生活の悪戦苦闘にも疲れ果て、ついに秋風と共に単身都落ちというだらし無い運命に立ちいたったのでございます。

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太宰治

【佳日】

「あ。これは。」と私はやはり意味のわからぬ事を言い、卑屈に笑って、式台の端に腰をおろし、大あぐらの形になって、でたり引っぱったり、さまざまに白足袋をなだめさすり、少しずつ少しずつ足にかぶせて、ひたいににじみ出る汗をハンケチで拭いてはまたも無言で足袋にとりかかり、周囲が真暗な気持で、いまはもうやけくそになり、いっそ素足で式台に上りこみ、大声上げて笑おうかとさえ思った。けれども、私の傍には厳然と、いささかも威儀を崩さず小坂氏がひかえているのだ。五分、十分、私は足袋と悪戦苦闘を続けた。やっと両方えた。

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坂口安吾

【桂馬の幻想】

 ところがこの一戦は木戸に良いところがまったくなかった。中盤すでに歴然たる敗勢で、押されに押されてずるずると押し切られた。木戸は喘ぐような悪戦苦闘のあげく、前局で散歩にでかけたと同じような時刻には脂汗でぬれたような悲愴な様で別室へ下って一時間ほど寝こんだそうだ。

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坂口安吾

【茶番に寄せて】

 だから道化は戦い敗れた合理精神が、完全に不合理を肯定したときである。即ち、合理精神の悪戦苦闘を経験したことのない超人と、合理精神の悪戦苦闘に疲れ乍らも決して休息を欲しない超人だけが、道化の笑いに鼻もひっかけずに済まされるのだ。道化はいつもその一歩手前のところまでは笑っていない。そこまでは合理の国で悪戦苦闘していたのである。突然ほうりだしたのだ。むしゃくしゃして、原料のまま、不合理を突きだしたのである。

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坂口安吾

【勉強記】

 遂に赤蛙の生きた奴を食うところまで心をきめたが、どうしても食いたくないという意志などがあって、相反目せる精神がひとつの人体内に於てまき起す争いの結果は乱暴だ。食べられたくない赤蛙よりも、これを食べようという先生の方が、より以上に慌(あわただ)しく惨澹たる悪戦苦闘をするのであった。

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幸田露伴

【蒲生氏郷】

一旦は引退かれるが宜くはないか、と云った折に、ギリギリと歯をくいしばって、ナンノ、藤五郎成実、魂魄たましいばかりに成り申したら帰りも致そう、生身で一トあしでも後へさがろうか、とののしって悪戦苦闘の有る限りを尽した。それで其戦も結局勝利になったため、今度このたびの合戦、全く其方一手の為に全軍の勝となった、という感状を政宗から受けた程の勇者である。

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岸田國士

【新劇自活の道】

 勿論、西洋諸国に於ても、先駆的傾向の著しい劇場は、常に経営難に陥つて、絶えず悪戦苦闘を続けてゐるのですから、日本だけがさうだとは云へませんが、それは、既に、西洋では、民衆の欲求と趣味に応じた「現代の演劇」をもつてゐて、その時代より一歩進んだものを求めるのは、常に少数の選ばれた人に限られてゐるからです。

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宮本百合子

【獄中への手紙 一九三九年(昭和十四年)】

女のリディキュラスな面はそこから出ているとさえ云える位です。今日までの歴史のなかで、女が愛されることをもとめずに、愛して行くよろこびに生きようと覚悟のきまる迄にはどの位の悪戦苦闘がいることでしょうね。何故なら、女のなかにこれまでの歴史の跡はきつくつけられているのですから、やはり愛されたいという受身の望みが激しくあります。

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宮本百合子

【鏡餅】

 佐太郎が目ばたきしながら訊いた。まさはよっぽどくたびれたと見え、絣の羽織のわきあけから懐手をしたまま、首をたれ黙って合点をしている。
 進がやっぱり、窓際にもたれたままその様子を見て、
「大分悪戦苦闘したらしいね」
と云ったので、皆がドッと笑った。

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田中英光

【野狐】

 
 そして家に帰って、文学三昧ぶんがくざんまいに戻ってみたが、すでに終戦後の作家飢饉ききんで、多くの流行作家が世に出た後では、私は、いわゆる、バスにのりおくれた形で、持込みの原稿もなかなか売れなかった。その私の悪戦苦闘に対しても、妻は一向、同情しなかった。ヤケになった私は将来、私に余裕ができたら、別に愛人を作ってもよいかと、妻に尋ねると、妻は冷然と、(ええ、お金さえ下さればお父さんなんか家にいなくてもいいわ)といった。

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豊島与志雄

【「紋章」の「私」】

而も、余りに頭脳がよくて密集してくる映像や内部に閃めく抽象物の氾濫に、適度の処理を失いがちであって、その内面の複雑さに圧倒されつづけている。自意識過剰の実行力ない男である。之に対照させられてる雁金八郎は恐らく、作者には心理的に縁遠い人物であろう。彼は実際的発明のために悪戦苦闘しながら邁進する。

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知里幸恵

【日記】

おゝ、おん身は、顔の形を無くし、右の手を失ひ、左の手をきられるまで佛蘭西の為に悪戦苦闘してくれたか。さらば……とジョフル元帥は、彼の醜く腫上って顔といふ形もない彼の一兵士の熱に皮むけた唇に其の唇をつけて強いキッスを与へた。

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海野十三

【空襲警報】

 帝都の風景は、見たところ、どこも変っていなかった。焼夷弾や破甲弾、さては毒瓦斯弾などにやられて、相当ひどい有様になっていることだろうという気がしていたが、意外にも帝都は針でついたほどの傷も負っていなかった。昨夜、悪戦苦闘した乗客たちは、何だか、まだ夢を見ているのではないかという気がしてならなかった。

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倉田百三

【愛と認識との出発】

 私の今後の生涯はこの恋愛の進展的継続でありたい。私らが恋の甘さを味わう余裕もなく、山のごとき困難は目前に迫って私らを圧迫している。私らは悪戦苦闘を強迫された。ああ私は血まみれの一本道を想像せずにはいられない。その上を一目散に突進するのだ。力尽きればやむをえない。自滅するばかりだ。

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国枝史郎

【加利福尼亜の宝島 (お伽冒険談)】

 小豆島紋太夫とホーキン氏とが、前後に大敵を引き受けて進退全くきわまったことは、既に書き記したが、さてその後どうしたかと云うに、他に手段もなかったので小豆島紋太夫はオンコッコ軍に向かい、またホーキン氏は地下人軍に向かい、悪戦苦闘をしたものである。

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林不忘

【丹下左膳 日光の巻】

「ホホウ、例の大金の所在を知るこけ猿とやら――どれどれ」
 乗り出す吉宗公……愚楽老人はまるで自分が悪戦苦闘ののち、やっと手に入れたような顔つきだ。

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長谷川時雨

【マダム貞奴】

人の魂を汚すようなことは、その人自身の反省にまかせておけばよいではないか? わたしは道学者でない故に、人生に悩みながらほそい腕に悪戦苦闘して、切抜け切抜けしてゆく殊勝さを見ると、涙ぐましいほどにその勇気をたたよみしたく思う。

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吉川英治

【三国志 図南の巻】

 攻めるもなん、防ぐも難。
 両軍は悪戦苦闘のままたがいに譲らず、はや幾月かを過していた。

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Last updated : 2022/11/23