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▼参考書
嫣然一笑
えんぜんいっしょう
にこやかに笑うさま。
作家
作品

二葉亭四迷

【 浮雲 】

 お勢は大榎(おおえのき)の根方(ねがた)の所で立止まり、翳(さ)していた蝙蝠傘(こうもりがさ)をつぼめてズイと一通り四辺(あたり)を見亘(みわた)し、嫣然(えんぜん)一笑しながら昇の顔を窺(のぞ)き込んで、唐突に、
「先刻(さっき)の方は余程(よっぽど)別嬪でしたネー」

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泉鏡花

【 義血侠血 】

「おまえさんはよっぽど情なしだよ。自分の抱いた女を忘れるなんということがあるものかね」
「抱いた? 私が?」
「ああ、お前さんに抱かれたのさ」
「どこで?」
「いい所(とこ)で!」
 袖(そで)を掩(おお)いて白糸は嫣然(えんぜん)一笑せり。
 馭者は深く思案に暮れたりしが、ようよう傾けし首(こうべ)を正して言えり。

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寺田寅彦

【 あひると猿 】

この西洋人の車は一方の泥(どろ)よけがつぶれただけですみ、われわれのバスは横腹が少しへこんでペイントがはがれただけで助かった。肥(ふと)った赤ら顔の快活そうな老西洋人が一人おり立って、曲がった泥よけをどうにか引き曲げて直した後に、片手を高くさしあげてわれわれをさしまねきながら大声で「ドモスミマシェン」と言って嫣然(えんぜん)一笑した。そうして再びエンジンの爆音を立てて威勢よく軽井沢(かるいざわ)のほうへ走り去ったのであった。

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牧逸馬

【 戦雲を駆る女怪 】

「あら、ヘンダスン少佐でいらっしゃいますの? あたくし、古いお友達のような気がいたしますわ。どこかでお目にかかったことがございますわねえ少佐。」
 甘い抑揚(よくよう)をつけて言った。嫣然(えんぜん)一笑、東洋でいう傾国(けいこく)の笑いというやつ。そいつをやりながら、触れなば折れんず風情(ふぜい)、招待的、挑発的な姿態を見せる。ところが、少佐の声は、興(きょう)もなさそうに乾いたものだった。

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Last updated : 2025/12/26