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八紘一宇
はっこういちう
全世界の地の果てまでを一つの家のように統一して支配すること。
「日本書紀 ‐ 神武即位前己未年三月」の「兼六合以開都、掩八紘而為宇」に基づく。
 元来は国の内を一つにする意であったが、第二次大戦期、軍国主義のスローガンとなり、日本が海外侵略を正当化する標語として用いた。[大辞泉、日本国語大辞典などより]
作家
作品

坂口安吾

【安吾巷談 野坂中尉と中西伍長】

私は日映というところの嘱託をしていたが、そこの人たちは、軍人よりも好戦的で、八紘一宇はっこういちう的だとしか思われなかった。ところが、敗戦と同時に、サッと共産党的に塗り変ったハシリの一つがこの会社だから、笑わせるのである。
 今日出海を殴った新聞記者も、案外、今ごろは共産党かも知れないが、それはそれでいいだろうと私は思う。我々庶民が時流に動くのは自然で、いつまでも八紘一宇の方がどうかしている。
 八紘一宇というバカげた神話にくらべれば、マルクス・レーニン主義がズッと理にかなっているのは当然で、こういう素朴な転向の素地も軍部がつくっておいたようなものだ。シベリヤで、八紘一宇のバカ話から、マルクス・レーニン主義へすり替った彼らは、むしろ素直だと云っていゝだろう。
 こういう素朴な人たちにくらべれば、牢舎で今も国民儀礼をやっているという大官連は滑稽千万であるし、将校連がマルクス・レーニン主義に白い目をむけ、スターリンへの感謝を拒んで英雄的に帰還するのも、見上げたフルマイだとは思われない。


 しかし一方に、彼を再び偶像に仕立てて、国民儀礼や八紘一宇の再生産にのりだしそうな集団発狂が津々浦々に発生しかけているのである。この集団発狂は、彼個人の意志によって、未然に防ぎうる性質のものだ。


 私は祖国を愛していた。だから、祖国の敗戦を見るのは切なかったが、しかし、祖国が敗れずに軍部の勢威がつづき、国民儀礼や八紘一宇に縛られては、これ又、やりきれるものではない。私はこの戦争の最後の戦場で、たぶん死ぬだろうと覚悟をきめていたから、諦めのよい弥次馬であり、徹底的な戦争見物人にすぎなかったが、正直なところ、日本が負けて軍人と、国民儀礼と、八紘一宇が消えてなくなる方が、拙者の死んだあとの日本は、かえって良くなると信じていました。もっと正直に云えば、日本の軍人に勝たれては助からないと思っていました。国民儀礼と八紘一宇が世界を征服するなんて、そんな茶番が実現されては、人間そのものが助からない。私の中の人間が、八紘一宇や国民儀礼の蒙昧、狂信、無礼に対して、憤るのは自然であったろう。

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坂口安吾

【水鳥亭】

今までの学者は石器時代の遺跡を地下から発掘しましたが、私は生きている生活を発掘しているつもりなのです。八紘一宇の精神にも一致します。遺跡の発掘は米英的な科学にすぎませんが、私のは、学問の真髄、日本精神にのっとった唯一最後のものなんです。ここまでこなければ、考古学は分りません。

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桐生悠々

【煎じ詰めれば】

 従って彼等は国家主義者、民族対立主義者であって、コスモポリタンなる我を解する能わず、国家または民族の一員としてその義務を尽すに忠実なりと雖も、「恭倹己を持し、博愛衆に及ぼす」超国家的、超民族的にして、彼等のいうところ「八紘一宇」の一大理想その物を、かえってみずから破壊せんとしている。

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石原莞爾

【最終戦争論・戦争史大観】

天皇が東亜諸民族から盟主と仰がれる日こそ、即ち東亜連盟が真に完成した日であります。しかし八紘一宇の御精神を拝すれば、天皇が東亜連盟の盟主、世界の天皇と仰がれるに至っても日本国は盟主ではありません。


そこで真の世界の統一、即ち八紘一宇が初めて実現するであろうと考える次第であります。もう病気はなくなります。今の医術はまだ極めて能力が低いのですが、本当の科学の進歩は病気をなくして不老不死の夢を実現するでしょう。


 最終戦争によって世界は統一される。しかし最終戦争は、どこまでも統一に入るための荒仕事であって、八紘一宇の発展と完成は武力によらず、正しい平和的手段によるべきである。


 以上はしかし理論的考察で半ば空想に過ぎない。しかし、日本国体を信仰するものには戦争の絶滅は確乎たる信念でなけれはならぬ。八紘一宇とは戦争絶滅の姿である。口に八紘一宇を唱え心に戦争の不滅を信ずるものがあるならば、真に憐むべき矛盾である。日本主義が勃興し、日本国体の神聖が強調される今日、未だに真に八紘一宇の大理想を信仰し得ないものが少なくないのは誠に痛嘆に堪えない。

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宮本百合子

【戦争はわたしたちからすべてを奪う】

中立とは(あらゆるギセイを払って)購うべきものであり、永久平和を守ることは、戦うことより困難であることを知っていた。」「日本だけが、この次の大戦から保護されるということは有り得ないだろう。現実を忘れた空想的な平和論は八紘一宇の思想と相通ずる軽薄な夢にすぎない。」


平和に対するこのようなおそろしいほど具体的な現実を、石川達三という作家が見おとしている現実こそ、あまりに架空的ではないだろうか。八紘一宇の思想を否定することにからめて、日本の人民男女の良心に立つ実際の行為を、浅薄な夢とすることは、決してあたっていないし、善意的でもない。こんにちでは、八紘一宇という言葉をひきあいとして平和への人民の意志をけなすそのことが、一九五〇年代の日本の変質した八紘一宇の姿である。

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宮本百合子

【平和への荷役】

まして、資本主義がファシズムの段階に入り、全く人民の犠牲そのものによって戦争を強行しようとするとき、まさに大量的にほふられようとする生けにえたる人民に、ファシズム戦争の本質を示そうとする者たちがあることなどはもってのほかである。「一億一心」「滅私奉公」「八紘一宇」のスローガンを、かりにも批判し分析する者は非国民とされ国賊とされ、赤とされた。そして、治安維持法と戦時特別取締法とが、大きい残虐な口をあいて、それらの人々を噛みくだいた。

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Last updated : 2022/11/23