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半死半生
はんしはんしょう
はんしはんせい
[「半死」は「はんじ」、「半生」は「はんぜい」「はんじょう」とも。]
作家
作品

芥川龍之介

【手紙】

「何です? 僕は蛇(へび)でも出たのかと思った。」
 それは実際何でもない。ただ乾いた山砂の上に細(こま)かい蟻(あり)が何匹も半死半生(はんしはんしょう)の赤蜂(あかはち)を引きずって行こうとしていたのです。赤蜂は仰(あおむ)けになったなり、時々裂(さ)けかかった翅(はね)を鳴らし、蟻の群を逐(お)い払っています。

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太宰治

【トカトントン】

「ようし! 頑張ったぞ!」と附添の者が叫んで、それを抱き上げ、私の見ている窓の下に連れて来て、用意の手桶(ておけ)の水を、ざぶりとその選手にぶっかけ、選手はほとんど半死半生の危険な状態のようにも見え、顔は真蒼(まっさお)でぐたりとなって寝ている、その姿を眺めて私は、実に異様な感激に襲われたのです。

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太宰治

【新釈諸国噺】

わしもいよいよ一人前の角力取りになったか、ありがたいわい、きょうからわしは荒磯だ、すごい名前じゃないか、ああまことに師の恩は山よりも高い、と涙を流してよろこび、それからは、どこの土俵に於(お)いても無敵の強さを発揮し、十九の時に讃岐の大関天竺仁太夫を、土俵の砂に埋めて半死半生にし、それほどまで手ひどく投げつけなくてもいいじゃないかと角力仲間の評判を悪くしたが、なあに、角力は勝ちゃいいんだ、と傲然(ごうぜん)とうそぶき、いよいよ皆に憎まれた。

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泉鏡花

【取舵】

婦女等(おんなたち)は船の動くと与(とも)に船暈(せんうん)を発(おこ)して、かつ嘔(は)き、かつ呻(うめ)き、正体無く領伏(ひれふ)したる髪の乱(みだれ)に汚穢(けがれもの)を塗(まみ)らして、半死半生の間に苦悶せり。

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田山花袋

【重右衛門の最後】

 重右衛門は怒つたの、怒らないのツて、
「何だ、この女(あま)!」
 と一喝して、いきなり、その髪を執(と)つて、引摺倒(ひきずりたふ)し、拳(こぶし)の痛くなるほど、滅茶苦茶に撲(なぐ)つた。そして半死半生になつた女房を尻目にかけて、其儘(そのまま)湯田中へと飛んで行つた。そして、酒……酒……酒。

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夏目漱石

【坑夫】

御経の文句を浪花節(なにわぶし)に唄(うた)って、金盥の潰(つぶ)れるほどに音楽を入れて、一荷(いっか)の水と同じように棺桶(かんおけ)をぶらつかせて――最後に、半死半生の病人を、無理矢理に引き摺り起して、否(いや)と云うのを抑えつけるばかりにしてまで見せてやる葬式である。まことに無邪気の極(きょく)で、また冷刻の極である。

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尾崎紅葉

【金色夜叉】

それに気絶するほど頭部(あたま)を撲(ぶた)れたのだから、脳病でも出なければ可いつて、お医者様もさう言つてお在(いで)ださうだけれど、今のところではそんな塩梅(あんばい)も無いさうだよ。何しろその晩内へ舁込(かつぎこ)んだ時は半死半生で、些(ほん)の虫の息が通つてゐるばかり、私(わたし)は一目見ると、これはとても助るまいと想つたけれど、割合に人間といふものは丈夫なものだね」


「又! もう言ふな。言ふな。廃める時分には廃めるわ」
「廃めなければならんやうになつて廃めるのは見(みつ)ともない。今朝貴方(あなた)が半死半生の怪我をしたといふ新聞を見た時、私(わたし)はどんなにしても早くこの家業をお廃めなさるやうに為(さ)せなかつたのを熟(つくづ)く後悔したのです。

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坂口安吾

【街はふるさと】

 しかし、無理ムタイに脱出できるたった一つの口があった。それは、怒り、逆上である。
 記代子は半死半生の経験によっても、冒険や危険に怯える心を植えつけられはしなかった。むしろ、なつかしみさえした。彼女があの怖しい経験から教訓を得たとすれば、あのようなことを再びしたくないことではなくて、あのような場合に処する技法に対する期待であった。

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有島武郎

【或る女(後編)】

葉子は自分で造り出した不思議な迷宮の中にあって、意識のしびれきるような陶酔にひたった。しかしその酔いがさめたあとの苦痛は、精神の疲弊と一緒に働いて、葉子を半死半生の堺(さかい)に打ちのめした。葉子は自分の妄想(もうそう)に嘔吐(おうと)を催しながら、倉地といわずすべての男を呪(のろ)いに呪った。

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小出楢重

【めでたき風景】

そして強そうな大人に対してはあまり向かってこないが女、子供、子守、老婆、幼児に対してはまったく威力を持つ。彼女は不意に背後からその両足を高く挙げてわれわれの肩を打つのだが、大概のものは一度で倒れてしまう。私は散々その足蹴にされている女や子供を見た。奈良公園の車夫どもは長い竿を持って彼らを追うのだが、もし誰も救うものがいなかったなら、半死半生の目にあうかも知れない。

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坂口安吾

【保久呂天皇】

「犯人は誰だ。名を云え。誰が盗んだ。白状しろ」
 連呼しながら二人の首をしめあげたのである。二人は半死半生になったが犯人の名を云わなかった。心当りがなかったのだから言わなかったのは無理がない。

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佐藤垢石

【魔味洗心】

 さて、嘉平老の拾った蜂鱒は、九百六、七十匁ほどあって、まず一貫目近い大ものである。半死半生の失神状態となって、上新田の雷電河原のしも手へ流れついたのであるから、末だ全く死んでしまっているわけではない。鮮味、実に賞すべきものがあったであろう。

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田中英光

【野狐】

焼酎(しょうちゅう)一升飲んでもケロリとしているので、酒と一緒に催眠剤を飲むようになる。また、そのほうが安上りというサモシイ気持もあったのだ。そのおかげで私は、桂子の肉体と催眠剤の中毒患者になった。そのどちらもが一日でもないと、禁断症状がおこり、私は口を利く気力さえない半死半生の病人のようになる。

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黒岩涙香

【幽霊塔】

何しろ主人が外へ出ると、門に錠を卸してその鍵を持って去るとは全で番人のない家の様だが、内はガラ空か知らんと、此の様に思いつつ進み入ろうとすると、甚蔵は馬車の中から又呻いて余を呼び「門が開いたらその鍵を返して下さい」と請求した、半死半生の癖に仲々厳重な男である、是も何か家の中に秘密がある為に、斯う用心の深い癖と成ったのに違いない、余はその秘密を看て取る迄は此の家を去らぬ事に仕よう。

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押川春浪

【本州横断 癇癪徒歩旅行】

東京の電車に乗ってもそうだ。大の男や頑強なるべき学生輩に至るまで、窓から太陽が射して来ようものなら、毒虫(どくちゅう)にでも襲われたように周章(あわ)てて窓を閉ざして得意でいる。事(こと)小(しょう)なりと雖(いえど)も、こんな奴等も剛勇を誇る日本国民の一部かと思うと心細くなる。半死半生の病人や色の黒くなるのを困る婦女子ではあるまいし、太陽の光線(ひかり)がなんでそんなに恐(こわ)いのだ。

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三遊亭圓朝
鈴木行三校訂編纂

【業平文治漂流奇談】

友「騙りだ/\」
 と夢中になって友之助身を震わして騙り/\と金切声で言うと、ばら/\と内弟子が三四人来て、不埓至極な奴、先生を騙りなどと悪口雑言(あっこうぞうごん)をしては捨置かれぬ、出ろと襟髪(えりがみ)を取って腕を捕(つか)まえて門前へ引摺り出し、打擲して、前に申し上げた通り割下水の溝(みぞ)へ倒(さか)さまに突込(つきこ)んで、踏んだり蹴たり、半死半生(はんしはんしょう)息も絶え/″\になりましたが、口惜しいから、
 友「さア殺せ、さア殺して仕舞え/\」

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小出楢重

【油絵新技法】

 しかしながら、人はなかなか容易に死に切れるものではない。画技の下敷となり半死半生の姿を以て、しかもそれに馴(な)れ切って平然と生きている処の大勢があるものである。そして形だけは整頓した処の、例えば甲冑(かっちゅう)を着けたる五月人形が飾り棚の上に坐っている次第である。

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山村暮鳥

【ちるちる・みちる】

「どうでせう、あの態(ざま)は」
 喧嘩(けんくわ)はすぐには止(や)みませんでした。
 馬(うま)と馬(うま)は仲善(なかよ)く、鼻(はな)をならべて路傍(みちばた)の草(くさ)を噛(か)みながら、二人(ふたり)が半死半生(はんしはんしやう)で各自(てんで)の荷馬車(にばしや)に這(は)ひあがり、なほ毒舌(どくぐち)を吐(は)きあつて、西(にし)と東(ひがし)へわかれるまで、こんな話(はなし)をしてゐました。

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小島烏水

【天竜川】

 谷川の水であるから、海にあるやうな深い水の魔魅(まみ)はないかも知れない、けれどもまた海の水のやうに、半死半生の病人が、痩せよろぼひて、渚をのたうち廻つたり、入江に注ぎ入る水に、追ひ退けられたりする甲斐性なしとは違つて、冷たい空の下でも、すゞし絹のやうに柔らかに、青色の火筒(ほや)のやうに透明に、髪の毛までも透き通るまでに晶明に、

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甲賀三郎

【ニッケルの文鎮】

気丈なおかみさんと見えて押入れを開けると、長持ちの中で人が唸っているようなので家政婦と二人で恐々開けると、現在のご亭主が後手に縛られて猿ぐつわをはめられていたんだって、可哀相に二昼夜程自分の家の長持ちに入っていたんだわ。半死半生になっていたのですって。

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宮本百合子

【ことの真実】

その身でぶつかり、たたかい、つきぬけ、かきのけてきたことがらとしての範囲に集注して、あとはきりすてている。宜川の集団の住居の雪の夜、延吉(エンキチ)という西北方の町から、半死半生でたどりついた三人の良人たちについても、そのおそろしい憔悴のさまは描かれているが、延吉というソ同盟軍の町につれられていった三人が、なぜ、どうやってそこにあらわれたのか、当然わかっていただろう事実は、ふれられていない。

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岡本綺堂

【半七捕物帳 小女郎狐】

ともかくも「御仕置例書」には下総国(しもうさのくに)新石下村(しんいししたむら)とある。寛延元年九月十三日夜の亥(い)の刻(午後十時)から夜明けまでのあいだに、五人の若い男が即死、二人が半死半生という事件が出来(しゅったい)したので、村中は大騒ぎになった。


大の男が七人も重なり合って倒れているのであるから、殆ど足の踏みどころもない。それを一々呼び起すと、かすかに返事をしたのは甚太郎と権十の二人だけで、番人の七助と佐兵衛、次郎兵衛、弥五郎、六右衛門の五人はもう息が絶えていた。ほかの二人も半死半生であった。

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海野十三

【東京要塞】

 すると、彼は何思ったか、手にしていたアルミの弁当箱をがたんと音をさせて地上に投げだすが早いか、そのまま身を躍らせてどぼーんと堀のなかに飛びこんだ。
「おーい、しっかりしろ」
 彼は片手に半死半生(はんしはんしょう)の酔漢を抱えあげた。そしてすっかり救命者になって、酔漢を助けながら、のそのそと堀から上ってきた。二人とも泥まみれの濡(ぬ)れ鼠(ねずみ)であった。
「おーい、しっかりしろ。どうしたんだ。傷は浅いぞ。いまどこかの病院へつれてってやるからな」

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佐々木味津三

【右門捕物帖 卍のいれずみ】

「そこがつまり、あばたのだんなのひどすぎるところだというんでがすがね。なにしろ、あのとおり吟味といや、きまって拷問に掛けるのがお得意のだんななんだから、ずいぶんとかわいそうな責め折檻(せっかん)をしましたとみえましてね、もうここのところずっと半死半生の病人でしたよ」
「どんな科(とが)でそんなに責められたのか、耳にしていることはないか」

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夢野久作

【巡査辞職】

台所で一知が茶漬を掻込(かっこ)んでいるらしい物音に耳を澄ますと、直ぐに跼(しゃが)んで、片手で砥石を持上げてみた。砥石の下には頭をタタキ潰された蚯蚓(みみず)が一匹、半死半生に変色したまま静かに動いていた。草川巡査は、その蚯蚓を凝視しながら、砥石をソッと元の通りに置いた。

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谷譲次

【踊る地平線 血と砂の接吻】

 こんなふうに日向(ソル)よりも日蔭(ソンブラ)の席がずっと高価(たか)い。そうだろう、陽かげは涼しいにきまってるから――なんかと思うと大変な間違いで、ではどうして日蔭が高級席かというと、これにはまた大いに西班牙(スペイン)的な理由がある。それは、突かれ刺されて半死半生になった牛は、苦しいもんだから例外なしに陽影へ日かげへと這入って来て、死ぬ時はいつも日蔭席の真下ときまっている。

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国枝史郎

【血曼陀羅紙帳武士】

(水が飲みたい、水を!)
 しかし川は、彼女のいる川縁から、一丈ばかり下の方を流れていた。そうして、川縁から川までの崖は、中窪みに窪んでい、その真下は岩組であった。
 その岩組の間に挾まり、腰から下を水に浸し、両手で岩に取り縋り、半死半生になっている男があった。渋江典膳であった。

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中里介山

【大菩薩峠 恐山の巻】

面を見知り、名を聞きとっておかなかったのが残念だ。それともう一つは鬼だ、鬼の正体だ、土間までたしかに拉(らっ)し来(きた)っていたはずの鬼の正体。多分、それは生捕って来たらしいが、生捕らないまでも、半死半生にして引摺って来たものには相違ない。その正体を見届ける隙がなかったのが、いかにも残念だ。

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Last updated : 2022/11/23