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▼参考書
平凡陳腐
へいぼんちんぷ
作家
作品

正岡子規

【墨汁一滴】

『日本』へ俳句寄稿に相成候(あいなりそうろう)諸君へ申上候(もうしあげそうろう)。筆硯(ひっけん)益※(二の字点、1-2-22)御清適(ごせいてき)の結果として小生の枕辺(ちんぺん)に玉稿(ぎょっこう)の山を築きこの冬も大約一万句に達し候(そうろう)事(こと)誠に御出精(ごしゅっせい)の次第とかつ喜びかつ賀(が)し奉(たてまつ)り候。しかるところ玉稿拝読致候(いたしそうろう)に御句(おんく)の多き割合に佳句の少きは小生の遺憾とする所にして『日本』の俳句欄も投句のみを以て填(うず)め兼候(かねそうろう)場合も不少(すくなからず)候。選抜の比例を申候(もうしそうら)はんに十分の一以上の比例を取り候は格堂(かくどう)寒楼(かんろう)ら諸氏の作に候。その他は百分の一に当らざる者すら有之(これあり)候。多作第一とも称すべき八重桜(やえざくら)氏は毎季数千句を寄せられ一題の句数大方二十句より四、五十句に及び候。されどその句を見るに徒(いたずら)に多きを貪(むさぼ)る者の如く平凡陳腐の句も剽窃(ひょうせつ)の句も構(かま)はずやたらに排列(はいれつ)せられたるはやや厭はしく感じ申候。また一題百句など数多(あまた)寄せらるる人も有之候。一題百句は第一期の修行として極めて善き事なれどその中より佳句を抜き出す事は甚だ困難なるべく、ましてその題が火燵(こたつ)、頭巾(ずきん)、火鉢(ひばち)、蒲団(ふとん)の類(たぐい)なるにおいては読まずしてその句の陳腐なること知れ申候。

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Last updated : 2025/12/26