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平身低頭
へいしんていとう
作家
作品

島崎藤村

【破戒】

それには先づ貴方に御縋(おすが)り申して、家内のことを世間の人に御話下さらないやうに。そのかはり、私も亦(また)、貴方のことを――それ、そこは御相談で、御互様に言はないといふやうなことに――何卒(どうか)、まあ、私を救ふと思召(おぼしめ)して、是話(このはなし)を聞いて頂きたいのです。瀬川さん、是は私が一生の御願ひです。』
 急に高柳は白い毛布を離れて、畳の上へ手を突いた。丁度哀憐(あはれみ)をもとめる犬のやうに、丑松の前に平身低頭したのである。

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芥川龍之介

【河童】

 クラバックは細い目をいっそう細め、いまいましそうにラップをにらみつけました。
「黙りたまえ。君などに何がわかる? 僕はロックを知っているのだ。ロックに平身低頭する犬どもよりもロックを知っているのだ。」
「まあ少し静かにしたまえ。」

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下村湖人

【次郎物語 第一部】

 そう言って、父は自分の胸を拳でぽんと叩いた。二人は父にそうどなられると、すぐべたりと坐って、平身低頭した。
 次郎は、父のすぐ横に坐って、その光景を見ていたが、一面恐怖を感ずると共に、父の英雄的な態度に対して身ぶるいするような感激を覚えた。そして、彼自身が仲間と喧嘩をする場合の、すばしこい、思い切った遣口(やりくち)が、こうしたことに影響されていなかったとは、決していえなかったのである。

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徳冨蘆花

【小説 不如帰】

 「こらあどうだね?」
 「そいつは話せないやつだ。僕はよくしらないが、ひどく頑固(がんこ)なやつだそうだ。まあ正面から平身低頭でゆくのだな。悪くするとしくじるよ」
 「いや陸軍にも、わかった人もあるが、実に話のできン男もいるね。去年だった、師団に服を納めるンで、例の筆法でまあ大概は無事に通ったのはよかッたが。

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太宰治

【虚構の春】

いまは、私と彼等二人の正義づらとの、面目問題でございます。かならず、厳罰に附し、おわびの万分の一、当方の誠意かっていただきたく、飛行郵便にて、玉稿の書留より一足さきに、額の滝、油汗ふきふき、平身低頭のおわび、以上の如くでございます。なお、寸志おしるしだけにても、御送り申そうかと考えましたが、これ又、かえって失礼に当りはせぬか、心にかかり、いまは、訥吃(とっきつ)、蹌踉(そうろう)、七重(ななえ)の膝を八重(やえ)に折り曲げての平あやまり、他日、つぐない、内心、固く期して居ります。俗への憤怒。貴方への申しわけなさ。

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太宰治

【駈込み訴え】

私がもし、おまえの足を洗わないなら、おまえと私とは、もう何の関係も無いことになるのだ」と随分、思い切った強いことを言いましたので、ペテロは大あわてにあわて、ああ、ごめんなさい、それならば、私の足だけでなく、手も頭も思う存分に洗って下さい、と平身低頭して頼みいりましたので、私は思わず噴き出してしまい、ほかの弟子たちも、そっと微笑(ほほえ)み、なんだか部屋が明るくなったようでした。

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徳冨健次郎

【みみずのたはこと】

よく寝惚(ねぼ)けて主人(しゅじん)に吠えた。主人と知ると、恐れ入って、膝行頓首(しっこうとんしゅ)、亀(かめ)の様に平太張りつゝすり寄って詫(わ)びた。わるい事をして追かけられて逃げ廻るが、果ては平身低頭(へいしんていとう)して恐る/\すり寄って来る。頭を撫でると、其手を軽く啣(くわ)えて、衷心を傾けると云った様にはアッと長い/\溜息(ためいき)をついた。

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織田作之助

【夫婦善哉(めおとぜんざい)】

二三度押問答(おしもんどう)のあげく、結局お辰はいい負けて、素手では帰せぬ羽目になり、五十銭か一円だけ身を切られる想(おも)いで渡(わた)さねばならなかった。それでも、一度だけだが、板の間のことをその場で指摘(してき)されると、何ともいい訳けのない困り方でいきなり平身低頭して詫(わ)びを入れ、ほうほうの体(てい)で逃(に)げ帰った借金取があったと、きまってあとでお辰の愚痴(ぐち)の相手は娘(むすめ)の蝶子(ちょうこ)であった。

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宮本百合子

【一連の非プロレタリア的作品  ――「亀のチャーリー」「幼き合唱」「樹のない村」――】

実際の場合に、人道主義的、正義派的な若い小学教師が、小学教育の偽瞞に目ざめる動機は「万兵衛は悪いと思います」という子供のイデオロギー的な言葉よりさきに、校長、教頭などが金持、地主、官吏の子供らばかりをチヤホヤし、その親に平身低頭し、自身の地位の安全のためにこびる日常の現実に対して素朴な、しかし正当な軽蔑と憤りとを感じることから始る例が多い。

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坂口安吾

【明治開化 安吾捕物 その一 舞踏会殺人事件】

X国大使チャメロスが加納五兵衛の娘お梨江(当時十八)に執心で、総理上泉善鬼にその意をほのめかしたから、善鬼と五兵衛が汗水たらしてお梨江を口説き、ついに平身低頭して頼んだけれども、お梨江は、
「オトトイおいで」
 と、学習院の卒業生にあるまじき言葉を用いて、てんで問題にならなかったという。

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上村松園

【作画について】

 当時アメリカ人やイギリス人と言えば幕府の役人まで恐れて平身低頭していた時代で、これも何かの政策のために、そのアメリカ人に身を売らされようとしたのでありましょう。
 それをアメリカ人何ぞ! という大和女性の気概をみせて、悠々と一首の歌に日本女性の意気を示して死んで行った亀遊の激しい精神こそ、今の女性の学ばなくてはならぬところのものではないでしょうか。

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岡本かの子

【老主の一時期】

 読経(どきょう)の声が、ずつと高くなると娘達の姿はかき消えて、今度は店の番頭小僧、はした達のまぼろしがぞろ/\眼の前をとほり始めた。
 瞼(まぶた)をべつかつこうした小僧もあり、平身低頭の老番頭、そのかげから、昔、かけ先きの間違ひで無体(むたい)に解雇した中年の男のうらめしさうな顔も出る。

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小出楢重

【大切な雰囲気】

 おちよやんは時々私達へそっと喋る。「あのおっさん気をつけなはれや、いやらしおまっせ……。」
 その手で煙管へたばこをつめながら、老人は私の前へいかめしくも坐って「何ということをした。罰あたりめが、恩を仇で返すとはそのことや」といった。私は平身低頭以外の何物でもなかった。

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久坂葉子

【灰色の記憶】

――上等の御茶を、上等の茶器を使って出す。お湯はたえずたぎらせておかねばならない。濃すぎても、うすすぎても、日本一の毛織物の人達は堂々と文句をいう。下っ端の若僧でも、こちらの重役は平身低頭している。寒い受付にすわっていて、彼等がやって来ると、
「マイド、ドウモ」
 と挨拶する。

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中里介山

【大菩薩峠 安房の国の巻】

 こう言われて、兵馬はまたも取りつく島がありません。こっちから無礼を加えた上に、ここまでついて来て、なお執念深く喧嘩を売りかけようというのだから、もう堪忍袋(かんにんぶくろ)が切れてよかりそうなものを、ここでも平身低頭の体(てい)で詫(わ)び入るのだから、この武士の堪忍力の強さと言おうか、意気地なしの底無しと言おうか、それに兵馬は呆(あき)れながら、
「お人違いとあらばぜひもござらぬが、御姓名が承りたい、いずれの御家中でおいでなさるか、それも承りたい」

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ディッケンズ
佐々木直次郎訳

【二都物語 上巻】

家柄は賤しいがすこぶる富裕な一人の収税請負人に、褒美として彼女を与えたのであった。この収税請負人は、頭部に黄金の林檎のついた身分相応な杖を携えながら、今、外側の室の来客の中にいて、人々に大いに平身低頭されていた。

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佐々木味津三

【旗本退屈男 第四話 京へ上った退屈男】

いかさま大道狭しと八九人の取り巻を周囲に集(たか)らせて、あたりに人なきごとく振舞いながら、傲然(ごうぜん)としてやって来たのは、一見して成り上がり者の分限者(ぶげんしゃ)と思われる赤ら顔の卑しく肥った町人でした。しかも、その取り巻の中には、公卿侍(くげざむらい)か所司代付きか、それともどこかの藩のお留守居番か、いずれにしてもれっきとした二本差が四人までも平身低頭せんばかりにしながら集(たか)っているのです。――退屈男の口からは自(おの)ずと皮肉交りな冷笑がほころびました。

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谷譲次

【踊る地平線 海のモザイク】

 この旅券捜査には、下宿の老夫人をはじめ、同宿の連中から女中一同まで、総動員で手――というより眼――を貸してくれたのだったが、ついに徒労に帰して、翌朝早く、私たち二人は倫敦(ロンドン)の日本領事館へまかり出た。そして平身低頭、泣きを入れてやっとのことで新しい旅券の再下附を受け、それでようよう乗船することが出来たわけだが――もっとも、帰国の船なら旅券なしでも乗れるけれど、そのかわり、旅券入用の土地、例えば、英領植民地などへは、寄港しても上陸することを許されない

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海野十三

【未来の地下戦車長】

信長、声をあららげ、『答えぬとは、無礼者。なぜに答えぬ。そちはこの脇差が欲しゅうないか』蘭丸つづいて平身低頭(へいしんていとう)いたし『おそれながら、申上げます。御脇差は、欲しゅうござれど、私はお答えいたしませぬ』『なぜじゃ、わけをいえ』

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Last updated : 2022/11/23