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▼参考書
比翼連理
ひよくれんり
作家
作品

泉鏡太郎

【人魚の祠】

 下(した)へ行(ゆ)くと學士(がくし)の背廣(せびろ)が明(あかる)いくらゐ、今(いま)を盛(さかり)と空(そら)に咲(さ)く。枝(えだ)も梢(こずゑ)も撓(たわゝ)に滿(み)ちて、仰向(あをむ)いて見上(みあ)げると屋根(やね)よりは丈(たけ)伸(の)びた樹(き)が、對(つゐ)に並(なら)んで二株(ふたかぶ)あつた。李(すもゝ)の時節(じせつ)でなし、卯木(うつぎ)に非(あら)ず。そして、木犀(もくせい)のやうな甘(あま)い匂(にほひ)が、燻(いぶ)したやうに薫(かを)る。楕圓形(だゑんけい)の葉(は)は、羽状複葉(うじやうふくえふ)と云(い)ふのが眞蒼(まつさを)に上(うへ)から可愛(かはい)い花(はな)をはら/\と包(つゝ)んで、鷺(さぎ)が緑(みどり)なす蓑(みの)を被(かつ)いで、彳(たゝず)みつゝ、颯(さつ)と開(ひら)いて、雙方(さうはう)から翼(つばさ)を交(かは)した、 比翼連理(ひよくれんり)の風情(ふぜい)がある。
 私(わたし)は固(もと)よりである。……學士(がくし)にも、此(こ)の香木(かうぼく)の名(な)が分(わか)らなかつた。

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Last updated : 2025/12/26