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▼参考書
泡沫夢幻
ほうまつむげん
作家
作品

高山樗牛

【瀧口入道】

 深草の里に老婆が物語、聞けば他事(ひとごと)ならず、いつしか身に振りかゝる哀の露、 泡沫夢幻(はうまつむげん)と悟りても、今更ら驚かれぬる世の起伏(おきふし)かな。樣を變へしとはそも何を觀じての發心(ほつしん)ぞや、憂ひに死せしとはそも誰れにかけたる恨みぞ。あゝ横笛、吾れ人共に誠の道に入りし上は、影よりも淡(あは)き昔の事は問ひもせじ語りもせじ、閼伽(あか)の水汲(みづく)み絶えて流れに宿す影留らず、觀經の音已(や)みて梢にとまる響なし。いづれ業繋(ごふけ)の身の、心と違ふ事のみぞ多かる世に、夢中(むちゆう)に夢を喞(かこ)ちて我れ何にかせん。

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Last updated : 2025/12/26