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▼参考書
不平煩悶
ふへいはんもん
作家
作品

二葉亭四迷

【浮雲】

 凡(およ)そ相愛(あいあい)する二ツの心は、一体分身で孤立する者でもなく、又仕ようとて出来るものでもない。故(ゆえ)に一方(かたかた)の心が歓ぶ時には他方(かたかた)の心も共に歓び、一方(かたかた)の心が悲しむ時には他方(かたかた)の心も共に悲しみ、一方(かたかた)の心が楽しむ時には他方(かたかた)の心も共に楽み、一方(かたかた)の心が苦しむ時には他方(かたかた)の心も共に苦しみ、嬉笑(きしょう)にも相感じ怒罵(どば)にも相感じ、愉快適悦、不平 煩悶(はんもん)にも相感じ、気が気に通じ心が心を喚起(よびおこ)し決して齟齬(そご)し扞格(かんかく)する者で無い、と今日が日まで文三は思っていたに、今文三の痛痒(つうよう)をお勢の感ぜぬはどうしたものだろう。

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Last updated : 2025/12/26