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▼参考書
一杖一鉢
いちじょういっぱつ
きわめて質素な身なりの僧侶を形容する語。
作家
作品

高山樗牛

【瀧口入道】

然ればにや失意の情に世をあぢきなく觀じて、嵯峨の奧に身を捨てたる齋藤時頼、瀧口入道と法(のり)の名に浮世の名殘(なごり)を留(とゞ)むれども、心は生死(しやうじ)の境を越えて、瑜伽三密の行の外、月にも露にも唱ふべき哀れは見えず、荷葉の三衣、秋の霜に堪へ難けれども、一杖一鉢に法捨を求むるの外、他に望なし。 實(げ)にや輪王(りんのう)位高(くらゐたか)けれども七寶(しつぱう)終(つひ)に身に添はず、雨露(うろ)を凌がぬ檐(のき)の下にも圓頓(ゑんどん)の花は匂ふべく、眞如(しんによ)の月は照らすべし。
風(かぜ)靜(しづか)なるに、六波羅わたり斯かる大火を見るこそ訝(いぶか)しけれ。いづれ唯事(たゞごと)ならじと思へば何となく心元(こゝろもと)なく、水汲みて急(いそ)ぎ坊に歸り、一杖一鉢、常の如く都をさして出で行きぬ。

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Last updated : 2025/12/26