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蝸牛角上
かぎゅうかくじょう
作家
作品

田山花袋

【田舎教師】

先生など幸福ではあるし、得意でもあるし、これからますます自分の懐抱かいほうを実行していかれる身なんですから」こう言って、自分の田舎寺に隠れた心の動機を考えて、主僧は黯然あんぜんとした。
「世の中は 蝸牛角上かぎゅうかくじょうの争闘――私は東京にいるころには、つくづくそれがいやになったんですよ。人の弱点を利用したり、朋党ほうとうを作って人をおとしいれたり、一歩でも人の先に出よう出ようとのみあくせくしている。実にあさましく感じたですよ。

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河東碧梧桐

【南予枇杷行】

 従来巨石文化の遺跡として知られてゐるのは、大和三輪のそれである。三輪みわは大国主命をまつるといはれてゐるが、その巨石群は大洲柳瀬やなぜ山に発見されたのと、ほぼ同一規模であるといふ。その他石を神体とする大小諸社各地に散在してゐるが、大洲のそれのやうに、立石(メンヒル)、机石(ドルメン)、環状石群(ストーン・サアクル)等各種の形状を尽くして、整備保存せらるゝもの、真に天下無比であるといふので、有史以前の考古探討趣味は、蝸牛角上の争ひである現町政をさへ圧倒しつゝある。

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村井弦斎

【食道楽 春の巻】

文学界の人はことに何事も感情任せで 蝸牛角上かぎゅうかくじょうあらそいをしているから文筆を以て天下に貢献するような仕事は出来ず、実業界は道義全く地を払って更に信用の重んずべき事を知らん。

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北村透谷

【想断々(1)】

 世は挙げて彼等を欽慕す。歴山れきざん王、拿翁なをう、シイザル、之を英雄と称し豪傑と呼ぶ、英雄は即ち英雄、豪傑は即ち豪傑、然れども胸中の理想に立入りて之を分析すれば、片々たる蝸牛角上の傲児のみ。

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高山樗牛

【人生終に奈何】

 人生つひに奈何、是れ實に一大疑問にあらずや。生きて回天の雄圖を成し、死して千歳の功名を垂る、人生之を以て盡きたりとすべきか、予甚だ之に惑ふ。生前一杯の酒を樂しむ、何ぞ須ひん身後千載の名、人は只行樂してまんか、予甚だ之に惑ふ。蝸牛角上に何事をか爭ふ、石火光中に此身を寄す、人は只無常を悟りて終らんか、予甚だ之に惑ふ。吁、人生終に奈何。

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中里介山

【大菩薩峠 不破の関の巻】

 吹き出でたのは、例の覚えの「鈴慕」の一曲。
 それ、「虚空」が天上の音であって「虚霊」が中有ちゅううの音、「鈴慕」に至って、はじめて人間じんかんの音である――ということは前に述べたこともある。それを繰返して言えば、行けども行けども足の地上を離るるということなき人間の旅――歩み歩ませられながら、御自分は、いずれより来って、いずれに行くやを知らない、萩のうわ風ものわびしく、萩のうら風ものさびしい、この地上を吹かれ吹かれ、流され流され行く人生――そこに蝸牛角上の争いはあるけれども、魚竜ついに天に昇るのかけはしは無い、 わずかに足を地につけながら仰いで天上の楽に憧れるの恋がある、「鈴慕」は実にそれです。さればこそ、無限の空間のうちに、眇眇びょうたるうつせみの一身を歩ませ、起るところなく、終るところなく、時間の浪路を、今日も、昨日も、明日も、明後日も、歩み歩み歩ませられて尽くることなき、旅路になやむ人にとっては、「鈴慕」の音節ほど、人間の脳を根本から振り動かして泣かせるものはないのです。

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賀川豊彦

【空中征服】

 なるほど、言われてみると蝸牛の角の上で武者人形のような小さい男が二人とも甲冑に身を堅め、栗毛の馬に跨って果し合いをしている。
「えい! 」と元気よく槍をしごいて、互に渡り合った。可哀相に突いたほうが先に落た。そして突かれた者もすぐ後から落た。それで戦争がすんだことかと思うていると、また後から鎧武者が、角の上に馳け上る。そして、角の上の一平方ミリメートルにも足らぬ場所の争奪戦をやっている。
「あれじゃ! あれじゃ! 蛙の子よ、わかったか? 人間はあんな賤しいものじゃ。わしの親類の蝸牛の、あの角の上に一平方ミリメートルにも足らぬ空間があるのじゃが、その所有権を主張して、毎日、毎日、ああやって騒動をしているのじゃ。雨が降ろうが、風が吹こうが角上の闘争は年中のことじゃ。わしらはあまり珍らしくないので、気にも止めないが、初めて来たものには珍らしかろう」
 市長もまったく驚いてしまった。蝸牛角上の争いということは昔から聞いていたが、小川の底から見ると、それが現実に見えるのである。
「人間はあれだから、困るのだ! あんなことをしていて人類進化など言って叫ぶものがあるから、おまえらの仲間の哲学者はよほど低能じゃなア! 近頃階級闘争をしきって叫ぶ唯物主義の哲学者が多いようだが、それらも蝸牛角上の争闘論者なんだろうなア? 困ったことじゃ」

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Last updated : 2022/11/23