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▼参考書
和気香風
かきこうふう
作家
作品

二葉亭四迷

【浮雲】

 お勢の帰宅した初より、自分には気が付かぬでも文三の胸には虫が生(わい)た。なれどもその頃はまだ小さく場(ば)取らず、胸に在ッても邪魔に成らぬ而已(のみ)か、そのムズムズと蠢動(うごめ)く時は世界中が一所(ひとところ)に集る如く、又この世から極楽浄土へ往生する如く、又春の日に 瓊葩綉葉(けいはしゅうよう)の間、和気(かき) 香風の 中(うち)に、臥榻(がとう)を据えてその上に臥(ね)そべり、次第に遠(とおざか)り往く虻(あぶ)の声を聞きながら、眠(ねぶ)るでもなく眠らぬでもなく、唯ウトウトとしているが如く、何ともかとも言様なく愉快(こころよか)ッたが、

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Last updated : 2025/12/26