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▼参考書
現世利益
げんぜりやく
作家
作品

芥川龍之介

【俊寛】

「すると康頼(やすより)は怒(おこ)ったぞ。ああ云う大嗔恚(だいしんい)を起すようでは、現世利益 (げんぜりやく)はともかくも、後生往生(ごしょうおうじょう)は覚束(おぼつか)ないものじゃ。――が、その内に困まった事には、少将もいつか康頼と一しょに、神信心を始めたではないか? それも熊野(くまの)とか王子(おうじ)とか、由緒(ゆいしょ)のある神を拝むのではない。この島の火山には鎮護(ちんご)のためか、岩殿(いわどの)と云う祠(ほこら)がある。その岩殿へ詣でるのじゃ。――火山と云えば思い出したが、お前はまだ火山を見た事はあるまい?」

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幸田露伴

【平将門】

此様な不祥のある度に威を張るのは僧侶巫覡(ふげき)で、扶桑略記(ふさうりやくき)だの、日本紀略だの、本朝世紀などを見れば、厭(いと)はしいほど現世利益を祈る祈祷が繰返されて、何程 厭(いと)はしい宗教状態であるかと思はせられる。

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紫式部
與謝野晶子訳

【源氏物語 夕顔】

 ずっと明け方近くなってきた。この家に鶏(とり)の声は聞こえないで、現世利益 (りやく)の御岳教(みたけきょう)の信心なのか、老人らしい声で、起(た)ったりすわったりして、とても忙しく苦しそうにして祈る声が聞かれた。源氏は身にしむように思って、朝露と同じように短い命を持つ人間が、この世に何の慾(よく)を持って祈祷(きとう)などをするのだろうと聞いているうちに、
「南無(なむ)当来の導師」
 と阿弥陀如来(あみだにょらい)を呼びかけた。
「そら聞いてごらん。現世利益だけが目的じゃなかった」

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折口信夫

【雪の島 熊本利平氏に寄す】

浄瑠璃と説経との根本の区別を言へば、浄瑠璃は現世利益、説経は来世転生を語るものと言へよう。

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種田山頭火

【行乞記 山口】

堀行乞、七時から九時まで、そして島地行乞、十時から十二時まで。
花尾八幡宮の社殿で昼休み二時間。
途中、現世利益の御祈祷を頼まれたが 碗(マヽ)曲に断る、そんな事は私の柄にない事だから!
岩の間から雫する水はよいな。

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Last updated : 2025/12/26