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▼参考書
下司下郎
げすげろう
作家
作品

夏目漱石

【草枕】

 芝居気があると人の行為を笑う事がある。うつくしき趣味を貫(つらぬ)かんがために、不必要なる犠牲をあえてするの人情に遠きを嗤(わら)うのである。自然にうつくしき性格を発揮するの機会を待たずして、無理矢理に自己の趣味観を衒(てら)うの愚(ぐ)を笑うのである。真に個中(こちゅう)の消息を解し得たるものの嗤うはその意を得ている。趣味の何物たるをも心得ぬ下司下郎(げすげろう)の、わが卑(いや)しき心根に比較して他(た)を賤(いや)しむに至っては許しがたい。

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菊池寛

【藤十郎の恋】

弥五七 さすがは藤十郎様じゃ。なるほどなあ。心得がのうては狂言ができぬとなれば、役者は上は摂政関白から下は下司下郎のはしまで、一度はなって見なければ役者にはなれぬはずじゃ。なるほどなあ。

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嘉村礒多

【途上】

 貧弱な徳利一本、猪口(ちよく)一箇を置いた塗りの剥げた茶餉台(ちやぶだい)の前に、褌(ふんどし)一つの真つ裸のまゝ仰向けに寝ころび、骨と皮に痩(や)せ細つた毛臑(けずね)の上に片つ方の毛臑を載せて、伸びた口髭(くちひげ)をグイ/\引つ張り/\詩を考へてゐた狂詩人は、私が問ふと矢にはに跳ね起き顎(あご)を前方に突き出し唇を尖(とが)らせて、「凡人の子袋から産れたといふことさ。馬の骨とも、牛の骨とも分らん。おいら下司下郎だといふことさ!」

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夢野久作

【梅津只圓翁伝】

「慰みに遣るのなら、ほかの芸を神様に献上しなさい。神様に上ぐる芸は能よりほかにない道理がわからんか。下司下郎のお能は下司下郎だけで芝居小舎ででも 演(や)んなさい。神様の前に持って来る事はならぬ」と頑張って何と云っても聞かない。仲に立った人や宮世話人を手古摺(てこず)らせた事が毎度であった。

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Last updated : 2025/12/26