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▼参考書
拱手傍観
きょうしゅぼうかん
作家
作品

中島敦

【光と風と夢】

 ラウペパ王は、彼とマターファとの間に立とうとする私の調停を斥(しりぞ)けた。面と向っている時は極めて愛想の良い男だのに、会わないでいると、直ぐ斯(こ)うだ。彼自身の意志でないことは明らかだが。
 ポリネシア式の優柔不断が戦争を容易に起させないであろうことを唯一の頼として、 拱手(きょうしゅ) 傍観している外はないのか? 権力を 有(も)つのは善い事だ。もし、それが、それを濫用しない理性の下にある時は。

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日野強

【新疆所感】

よろしく国家の事業として、国庫の資財をもって、大探検隊を組織するか、もしくは政府の保護をもって、公共団体より調査隊を派遣せしめ、広くかつ詳に調査せざるべからず。泰西諸強国は、つねに国家の事業として、あるいは国庫の保護をもって、未開地の探検に従事せしめ、勢力扶植に汲々たるに、帝国ひとり拱手傍観の状あるは、真に千古の遺憾にあらずや。識者もって如何となす。

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太宰治

【右大臣実朝】

たのみにしていた御一族の三浦さまには裏切られ、翌朝、かねて打合せて置いたとおりに横山馬允時兼さまの三千余騎が腰越浦に馳せ参じて和田さまの陣に加わりましたが、もうその頃には、将軍家の御教書もひろく行きわたり、和田勢の逆賊たることが決定せられてしまつて居りましたから、それまで去就に迷って拱手傍観していました諸将も続々と北条勢に来り投じ、ついに和田氏御一族全滅のむざんな結末と相成りました。

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林不忘

【丹下左膳 日光の巻】

「雉子(きじ)もなかずば射たれまい」の長柄川(ながらがわ)の故事で、これは誰でも知っていますが。
 弘仁(こうにん)のころとか、長柄川に橋をかけようという大工事です。何千という人夫、大工を使い、幾万の費用をつぎこんでも、濁流とうとうと渦まいて、水の力はおさえるべくもありません。さかまく水勢をながめて、拱手(きょうしゅ) 傍観のありさま。

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本庄陸男

【石狩川】

機会は次々と齎(もた)らされていたのに――会津救援には何を措(お)いても駈(か)けつけるべきであったのに―― 拱手(こうしゅ) 傍観を強いられた彼らは、むざむざと数百の生命を 屠(ほふ)らしたではないか。

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亀井勝一郎

【大和古寺風物誌】

法隆寺金堂の壁画は朝に夕に一片ずつ崩れて行く。模写してみたところで所詮(しょせん)ははかない希望にすぎまい。今更どうにも補修出来かねるらしい。 拱手(きょうしゅ) 傍観してその崩壊を眺めているより他に 術(すべ)はないのだ。しかしこれが壁画の運命であろう。この運命を直視したとき、はじめて念仏の声がおのずから心に湧くのではなかろうか。

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横光利一

【欧洲紀行】

スペインの争乱など、その観念の争闘であることは、今は誰でも知っていることだが、それにしても旅行者は、何らかの意味でスパイと見られ得る可能が、新しく生じて来たのであるから、この封建思想の錯誤には、何人もまき込まれずにはおられない。かい潜る度に、新しい縄の取手に追いかけられる近代人は、拱手傍観の態度で日を送ることなど、今は夢である。

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日野強

【新疆所感】

泰西諸強国は、つねに国家の事業として、あるいは国庫の保護をもって、未開地の探検に従事せしめ、勢力扶植に汲々たるに、帝国ひとり拱手傍観の状あるは、真に千古の遺憾にあらずや。識者もって如何となす。

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山本周五郎

【ひとごろし】

六兵衛にはその半分もわからず、この男は正真正銘の田舎侍だな、などと思いながら聞いていた。
「かように仔細がわかった以上」と中年の侍は続けた、「わが藩としても 拱手 (きょうしゅ) 傍観はできません、すぐさま奉行所の人数を繰出して、この宿の見張りをさせましょう、あなたはゆっくり休息して下さい、その武芸者になにかあったら即刻お知らせをします、宿はこの向うの田川がいいでしょう」

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河本大作

【私が張作霖を殺した】

すでに排日は奉天城内では言語に絶し、邦人小学生の通学などは、危険で出来ないという状況、奉天在留の邦人達は、関東軍を唯一の頼みとしていたが、拱手傍観の態度などで少なからず失望するというよりは、むしろこれを怨んだ。

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吉川英治

【三国志 臣道の巻】

いま曹操を討つのを、誰が無名のいくさと誹(そし)りましょうぞ。武王の紂(ちゅう)を討ち、越王(えつおう)の呉を仆す、すべて時あって、変に応じたものです。いたずらに安泰をねがって、世のうごきを 拱手傍観(きょうしゅぼうかん)していた国で、百年の基礎をさだめた例がありましょうか。

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Last updated : 2025/12/26