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▼参考書
故事来歴
こじらいれき
作家
作品

永井荷風

【日和下駄 一名 東京散策記】

小石川植物園内の大銀杏は維新後危(あやう)く伐(き)り倒されようとした斧(おの)の跡が残っているために今ではかえって老樹を愛重(あいちょう)する人の多く知る処となっている。東京市中にはもしそれほどの故事来歴を有せざる銀杏の大木を探り歩いたならまだなかなか数多いことであろう。

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織田作之助

【木の都】

藤原家隆卿であらうか「ちぎりあれば難波(なには)の里にやどり来て波の入日ををがみつるかな」とこの高台で歌つた頃には、もう夕陽丘の名は約束されてゐたかと思はれる。しかし、再び年少の頃の私は、そのやうな故事来歴は 与(あづか)り知らず、ただ口繩坂の中腹に夕陽丘女学校があることに、年少多感の胸をひそかに燃やしてゐたのである。

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坂口安吾

【明治開化 安吾捕物 その十三 幻の塔】

「相変らずの石頭だなア。尊公は。三次郎が盗ッ人を殺すワケがあるかえ。当身(あてみ)で倒す腕もある。まして祝言の当夜だぜ。石頭には人の心が解けないなア。人の心には曰くインネン故事来歴があって、右が左にはならないものだぜ。ちとオレの小説を学ぶがいいや」
「ハッハッハ。貴公の犯人は誰だえ」

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内田魯庵

【八犬伝談余】

馬琴の衒学癖(げんがくへき)は病(やまい)膏肓(こうこう)に入(い)ったもので、無知なる田夫野人(でんぶやじん)の口からさえ故事来歴を講釈せしむる事が珍らしくないが、自ら群書を渉猟する事が出来なくなってからも相変らず和漢の故事を 列(なら)べ立てるのは得意の羅大経(らたいけい)や『瑯琊代酔篇(ろうやたいすいへん)』が口を衝(つ)いて出(い)づるので、その博覧強記が決して俄仕込(にわかじこみ)にあらざるを証して余りがある。

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久生十蘭

【顎十郎捕物帳 丹頂の鶴】

精も根(こん)も吟味の練磨(れんま)に打ちこんで、こうも身を痩せさせているのは、しゃれや冗談でやっているのではありません。多寡が死(おっこ)ちた鶴一羽。ひと目、創をあらためて、いわく因縁(いんねん) 故事来歴(こじらいれき)、死んだものか殺されたものか、突き創なら獲物はなに。どういうやつが、どんなぐあいにどういうわけあいでやったものか、その場で即答できねえようでは、お上の御用はつとまらない。

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夢野久作

【難船小僧】

現在、陸上(おか)では酒場(のみや)でも税関でも海員(ふね)の奴等(やつら)が寄ると触(さわ)るとその噂(うわさ)ばっかりで持切(もちき)ってますぜ。アラスカ丸の船長(おやじ)はそんな曰(いわ)く因縁、故事来歴附の小僧だって事を、知って拾ったんだか……どうだかってんでね。

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Last updated : 2025/12/26