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▼参考書
真一文字
まいちもんじ
作家
作品

夏目漱石

【吾輩は猫である】

唇が真黒になったと見ていると、今度はその下へちょいと丸をかいた。丸の中へ点を二つうって眼をつける。真中へ小鼻の開いた鼻をかいて、真一文字に口を横へ引張った、これでは文章でも俳句でもない。主人も自分で愛想(あいそ)が尽きたと見えて、そこそこに顔を塗り消してしまった。

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夏目漱石

【虞美人草】

甲野さんは真廂(まびさし)を煽(あお)って坂の下から真一文字に坂の尽きる頂(いただ)きを見上げた。坂の尽きた頂きから、淡きうちに限りなき春の色を漲(みな)ぎらしたる果(はて)もなき空を見上げた。

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芥川龍之介

【犬と笛】

 その言(ことば)が終らない中(うち)です。恐しいつむじ風が、髪長彦の足の下から吹き起ったと思いますと、まるで一ひらの木(こ)の葉のように、見る見る黒犬は空へ舞い上って、青雲(あおぐも)の向うにかくれている、遠い生駒山の峰の方へ、真一文字に飛び始めました。

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芥川龍之介

【奉教人の死】

それより先に「しめおん」は、さかまく火の嵐の中へ、「ろおれんぞ」を救はうず一念から、真一文字に躍りこんだに由つて、翁の声は再(ふたたび)気づかはしげな、いたましい祈りの言(ことば)となつて、夜空に高くあがつたのでござる。

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寺田寅彦

【からすうりの花と蛾】

これもおそらく蛾が一種の光度計を所有しているためであろうが、それにしても何町何番地のどの家のどの部分にからすうりの花が咲いているということを、前からちゃんと承知しており、またそこまでの通路をあらかじめすっかり研究しておいたかのように真一文字に飛んで来るのである。

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有島武郎

【生まれいずる悩み】

朝から風もなく晴れ渡った午後なぞに波打ちぎわに出て見ると、やや緑色を帯びた青空のはるか遠くの地平線高く、幔幕(まんまく)を真一文字に張ったような雪雲の堆積(たいせき)に日がさして、まんべんなくばら色に輝いている。

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直木三十五

【南国太平記】

 益満は、じりじり浪人を追いつめた。浪人は、蒼白になっていた。益満は、片手で、刀を真一文字に突き出して、道の真中まで出ると、自分の投げつけた煙管を左手に拾い上げた。

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徳冨蘆花

【小説 不如帰】

しこうしてその平均を求むるに、吝嗇者(りんしょくもの)の日済(ひなし)を督促(はた)るように、われよりあせりて今戻せ明日(あす)返せとせがむが小人(しょうじん)にて、いわゆる大人(たいじん)とは一切の勘定を天道様(てんとうさま)の銀行に任して、われは真一文字にわが分をかせぐ者ぞ」とある人情 博士(はかせ)はのたまいける。

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泉鏡花

【小春の狐】

 私はちょっかいを出すように、面(おもて)を払い、耳を払い、頭を払い、袖を払った。茶番の最明寺(さいみょうじ)どののような形を、更(あらた)めて静(しずか)に歩行(ある)いた。――真一文字の日あたりで、暖かさ過ぎるので、脱いだ外套(がいとう)は、その女が持ってくれた。

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横光利一

【夜の靴 ――木人夜穿靴去、石女暁冠帽帰(指月禅師)】

 今も私は久左衛門の来ない間にと、家をぬけ出て、醤油をとりに駅の方へ、またいつものその道を歩いた。半里、平面ばかりで家一つない真一文字の道だ。どういうものか、真っ直ぐな道というものは、物を考えるより仕様のない退屈なものである。

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与謝野晶子

【晶子詩篇全集拾遺】

急ぐ女の一むれ、
青白き雪の上を
真一文字に北へ向き、
風に逆ふ髪は
後ろに靡きて
大馬の 鬣(たてがみ)の如く、
折からの日光を受けて
金色(こんじき)に染まりぬ。

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正岡容

【小説 円朝】

 奴凧のように頓狂に両袖丸めて圓太郎は、真一文字にバタバタ座敷を駈け抜けていった。

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黒島傳治

【武装せる市街】

「こゝは、津浦(しんぽ)線の界首(かいしゅ)駅から真一文字だ。まず、こゝへ、南軍が、全力をあげて殺到して来るものと見なければならん。」

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中里介山

【大菩薩峠 無明の巻】

 まもなく、この邸の裏門から驀然(まっしぐら)に走り出だした宇治山田の米友は、相生町を真一文字に、両国橋の袂(たもと)まで飛んで来て、
「これこれ、どこへ行く」

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林不忘

【丹下左膳 こけ猿の巻】

「いや、その黒焦げの死骸が、源三郎様でなければよいがと、いろいろ調べたり、また丹波らの行動がいかにも不審なので、そこここ近処をたずねたりいたし、心ならずも夜まで時をすごして、とにかく、当上屋敷へ真一文字に飛んでまいったわけ……」

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海野十三

【火星兵団】

 怪人丸木の命令一下、間もなく真暗な宇宙において、すさまじい惨劇が起った。ピート大尉のロケットが、白いガスを吐きながら、真一文字に、ぐんぐんと進んでいくところは、まことに勇ましいものがあったが、そのうち、後から、異様な形をした大きな宇宙艇が現れた。それはもちろん火星兵団の宇宙艇であった。

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Last updated : 2025/12/26