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▼参考書
内典外典
ないてんげてん
作家
作品

芥川龍之介

【鼻】

 最後に、内供は、内典外典(ないてんげてん)の中に、自分と同じような鼻のある人物を見出して、せめても幾分の心やりにしようとさえ思った事がある。けれども、目連(もくれん)や、舎利弗(しゃりほつ)の鼻が長かったとは、どの経文にも書いてない。勿論竜樹(りゅうじゅ)や馬鳴(めみょう)も、人並の鼻を備えた菩薩(ぼさつ)である。内供は、震旦(しんたん)の話の序(ついで)に蜀漢(しょくかん)の劉玄徳(りゅうげんとく)の耳が長かったと云う事を聞いた時に、それが鼻だったら、どのくらい自分は心細くなくなるだろうと思った。

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折口信夫

【死者の書】

郎女の手に、此巻が渡った時、姫は端近く膝行(いざ)り出て、元興寺の方を礼拝した。其後で、
難波とやらは、どちらに当るかえ。
と尋ねて、示す方角へ、活(い)き活(い)きした顔を向けた。其目からは、珠数の珠(たま)の水精(すいしょう)のような涙が、こぼれ出ていた。
其からと言うものは、来る日もくる日も、此元興寺の縁起文を手写した。内典・外典其上に又、 大日本(おおやまと)びとなる父の書いた文(もん)。指から腕、腕から胸、胸から又心へ、沁(し)み沁(じ)みと深く、魂を育てる智慧の這入(はい)って行くのを、覚えたのである。
大日本日高見(おおやまとひたかみ)の国。国々に伝わるありとある歌諺(うたことわざ)、又其旧辞(もとつごと)。第一には、中臣の氏の神語り。藤原の家の古物語り。多くの語(かた)り詞(ごと)を、絶えては考え継ぐ如く、語り進んでは途切れ勝ちに、呪々(のろのろ)しく、くねくねしく、独り語りする語部や、乳母(おも)や、嚼母(まま)たちの唱える詞(ことば)が、今更めいて、寂しく胸に蘇(よみがえ)って来る。

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Last updated : 2025/12/26