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▼参考書
述而不作
のべてつくらず
作家
作品

森鴎外

【渋江抽斎】

 抽斎が『老子』を以て『論語』と並称するのも、師迷庵の説に本づいている。「天は蒼々(そうそう)として上(かみ)にあり。人は両間(りょうかん)に生れて性皆相近し。習(ならい)相遠きなり。世の始より性なきの人なし。習なきの俗なし。世界万国皆其国々の習ありて同じからず。其習は本性の如く人にしみ附きて離れず。老子は自然と説く。其(そ)れ是(これ)歟(か)。孔子曰(いわく)。 述而不作(のべてつくらず)。信而好古(しんじていにしえをこのむ)。窃比我於老彭(ひそかにわれをろうほうにひす)。かく宣給(のたも)ふときは、孔子の意も亦(また)自然に相近し」といったのが即ちこれである。

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中島敦

【李陵】

自分が長い間頭の中で画(えが)いてきた構想が、史といえるものか、彼には自信はなかった。しかし、史といえてもいえなくても、とにかくそういうものが最も書かれなければならないものだ(世人にとって、後代にとって、なかんずく己自身にとって)という点については、自信があった。彼も孔子(こうし)に倣(なら)って、述べて作らぬ方針をとったが、しかし、孔子のそれとはたぶんに内容を異(こと)にした 述而不作(のべてつくらず)である、司馬遷にとって、単なる編年体の事件列挙はいまだ「述べる」の中にはいらぬものだったし、また、後世人の事実そのものを知ることを妨げるような、あまりにも道義的な断案は、むしろ「作る」の部類にはいるように思われた。

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Last updated : 2025/12/26