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磊落粗朴
らいらくそぼく |
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作家
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作品
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鳥谷部春汀 |
【明治人物月旦(抄)】
皆彼れが気象の外表たらざる莫し 然れども彼れ不幸にして、如何なる時代の英雄にも大抵普通なる特質を其風采に欠けり。英雄の特質とは何ぞや曰く磊落粗朴の野性、曰く道理に拘泥せずして盲進する獣力是れなり 彼れの衣貌は寧ろワザとらしき躰裁を示すに非ずや 彼れは一髪を櫛るにも、香水と鏡台とを要すというに非ずや、其蝮蛇の如き眼光もて四方を睥睨するの、如何に注意深き神経質を表するかを見よ 其一言一句を苟もせずして勉て多弁の弊を避くるの、如何に小心翼々として或る点に謹慎なるかを見よ、単に彼れの風采よりいええば、彼れは虚飾にして異を衒うの癖あるものゝ如く、即ち衣冠の英雄にして裸躰の英雄に非らざるの嫌あるを免かれず。
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然れども彼れ不幸にして、如何なる時代の英雄にも大抵普通なる特質を其風采に欠けり。英雄の特質とは何ぞや曰く