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▼参考書
涼風一陣
りょうふういちじん
涼しい風が吹き抜けること。
作家
作品

二葉亭四迷

【 浮雲 】

 庭の一隅(いちぐう)に栽込(うえこ)んだ十竿(ともと)ばかりの繊竹(なよたけ)の、葉を分けて出る月のすずしさ。月夜見の神の力の測りなくて、断雲一片の翳(かげ)だもない、蒼空(あおぞら)一面にてりわたる清光素色、唯亭々皎々(ていていきょうきょう)として雫(しずく)も滴(した)たるばかり。初は隣家の隔ての竹垣に遮(さえぎ)られて庭を半(なかば)より這初(はいはじ)め、中頃は縁側へ上(のぼ)ッて座舗(ざしき)へ這込み、稗蒔(ひえまき)の水に流れては金瀲灔(きんれんえん)、簷馬(ふうりん)の玻璃(はり)に透(とお)りては玉(ぎょく)玲瓏(れいろう)、座賞の人に影を添えて孤燈一穂(すい)の光を奪い、終(つい)に間(あわい)の壁へ這上(はいのぼ)る。涼風一陣吹到る毎(ごと)に、ませ籬(がき)によろぼい懸る夕顔の影法師が婆娑(ばさ)として舞い出し、さてわ百合(ゆり)の葉末にすがる露の珠(たま)が、忽ち蛍(ほたる)と成ッて飛迷う。

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Last updated : 2025/12/26