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▼参考書
論功行賞
ろんこうこうしょう
作家
作品

岡本綺堂

【思い出草】

 今思えば十一年八月二十三日の夜(よ)であった。夜半(よなか)に近所の人が皆起きた。私の家でも起きて戸を明けると、何か知らないがポンポンパチパチいう音が聞える。父は鉄砲の音だという。母は心配する、姉は泣き出す。父は表へ見に出たが、やがて帰って来て「何でも竹橋内(たけばしうち)で騒動が起ったらしい。時々に流丸(ながれたま)が飛んで来るから戸を閉めておけ」という。私は衾(よぎ)を被って蚊帳(かや)の中に小さくなっていると、暫(しば)らくしてパチパチの音も止(や)んだ。これは近衛兵の一部が西南役の論功行賞に不平を 懐(いだ)いて、突然暴挙を企てたものと後(のち)に判った。

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中里介山

【大菩薩峠 山科の巻】

いったん浅井長政の妻となって、浅井氏亡ぶる時に里へ戻された信長の妹お市の方は、美男として聞えた信長の妹であり、国色として絶倫な淀君の母であるだけに、残(のこ)んの色香(いろか)人を迷わしむるものがあって、浅井亡びた後の論功行賞としては、この美しい後家さんを賜わりたいということに、内心、織田の宿将どもが鎬(しのぎ)を削ったが、そこは貫禄と言い、功績と言い、順序と言い、柴田に上越するものはない。

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Last updated : 2025/12/26