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▼参考書
老婆心切
ろうばしんせつ
「老婆心(ろうばしん)」に同じ。
  老婆心切を老婆親切と書く向きがあるが、三文字の場合「老婆親」とは書かない。
作家
作品

尾崎紅葉

【金色夜叉】

 然し、こうしてわざわざ尋ねて来たものであるから、 此方(こちら) では既に折れて出ているのだ。そうしてお前さんに会うて話と謂うは、 決(けつ) して身勝手な事を言いに来たじゃない、やはり 其方(そちら) の身の上に就いて善かれと計いたい老婆心切(ろうばしんせつ) 。私の方ではその当時に在ってもお前さんを棄てた覚は無し、又 今日(こんにち)も五年前も同じ考量(かんがえ)で居るのだ。それを、まあ、若い人の血気と謂うのであろう。

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坪内逍遙

【小説神髄】

我が浅識(せんしき) なる小説者流に小説といふ一大美術のその目的のある所を残る隈なく知らせむとの 老婆深切(ろうばしんせつ)にいでたる事にて、決して以心伝心なる真(まこと)の法度(ほうど)を語るにあらねば、世の賢明なる博識(ものしり)たち妄(みだ) りに法則の二字を捉えておのれの不明をな 咎(とが) めたまひそ。

  

滝沢馬琴

【馬琴書翰集・天保九年十月二十二日 篠斎宛】

此書とゝもに、御歌も永く世に伝んとのミ思ひし老婆深切ニて、君達より加入してくれと頼れ奉りしにあらねバ、

  

夏目漱石

【倫敦消息】

また一般の挙動も大に叮嚀(ていねい)になった。これは漱石が一言の争もせず冥々(めいめい)の裡(うち)にこの御転婆を屈伏せしめたのである。――そんな得意談はどうでも善(よ)いとして、この国の女ことに婆さんとくると、いわゆる老婆親切と云う訳かも知れんが、自分の使う英語に頼みもせぬ註解を加えたり、この字は分りますかなどという事がたくさんある。

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有島武郎

【惜みなく愛は奪う】

 私はこれ以上をもうお前にいうまい。私は老婆親切の 饒舌(じょうぜつ)の為めに既に余りに疲れた。


然し彼等の最上の宝なる個性の権威は全く顧みられなかった。美しく磨(みが)き上げられた個性は、恩を知ることが出来ないとでもいうのか。余りなる無理解。不必要な老婆親切。私は父である。そして父である体験から明かにいおう。私は子供に感謝すべきものをこそ持っておれ、子供から感謝さるべき何物をも持ってはいない。


 私の意味する本能を逆用して、自滅の方に進むものがあるならば、私はこの上更にいうべき何物をも持たぬだろう。本当をいえば、誤解を恐れるなら、私は始めから何事をもいわぬがいいのだ。私は私の柄にもない不遜(ふそん)な老婆親切をもうやめねばならぬ。

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中里介山

【大菩薩峠 他生の巻】

 しかし、医者はその職業の性質上、科学者でなければならないことを知っているはずの先生ですから、科学を軽蔑するつもりはないにきまっている。近く寄って見ることを悪いとはいわないが、遠く離れて拝むことを忘れてはならないとの老婆親切かも知れません。偉大なる科学者は必ずこの二つを心得ている――というような気焔は揚げませんでした。

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「 老婆心 ( ろうばしん ) 」での用例
作家
作品

夏目漱石

【私の個人主義】

 以上はただ私の経験だけをざっとお話ししたのでありますけれども、そのお話しを致した意味は全くあなたがたのご参考になりはしまいかという老婆心(ろうばしん)からなのであります。

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織田作之助

【鬼】

「――いや、その積りはなかったんだが、はいってた筈の財布にうっかりはいっていなかったりはいっていても、雑誌社から来た為替だけだったりしてね、つい、立て替えさせてしまったんだね。――そうか、そんな風に思われているのか」
 不思議そうな顔をしていた。
「へんな老婆心を出すようだが、料理屋なら話して為替で払えばいいじゃないか」
「そうも思ったんだが、実はその為替期間が切れて無効になってるんだよ」

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太宰治

【虚構の春】

どこか 温(あたたか)い土地か温泉に行って静かに思索してはいかがでしょう。青森の兄さんとも相談して、よろしくとりはからわれるよう 老婆心(ろうばしん)までに申し上げます。或いは最早(もは)や温泉行きの手筈(てはず)もついていることかと思います。温泉に引越したら御様子願い上げます。

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Last updated : 2025/12/26