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▼参考書
静邃閑寂
せいすいかんじゃく
作家
作品

木下尚江

【火の柱】

 篠田はやがて学生の群と別れて、独(ひと)り沈思の歩(あゆみ)を築山の彼方(あなた)、紅葉麗(うる)はしき所に運びぬ、会衆の笑ひ興ずる声々も、いと遠く隔りて、梢(こずゑ)に来鳴く雀の歌も閑(のど)かに、目を挙ぐれば雪の不二峰(ふじがね)、近く松林の上に其頂(いただき)を見せて、掬(すく)はば手にも取り得んばかりなり、心の塵(ちり)吹き起す風もあらぬ 静邃閑寂(せいすゐかんじやく)の天地に、又た何事の憂きか残らん、時にふさはしき古人の詩歌など思ひ浮ぶるまに/\微吟しつ、岸の紅葉、空の白雲、映(うつ)して織れる錦の水の池に沿うて、やゝ東屋(あづまや)に近(ちかづ)きぬ、見れば誰やらん、我より先きに人の在り、聞ゆる足音に此方(こなた)を振り向きつ、思ひも掛けず、ソは山木の令嬢梅子なり、

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Last updated : 2025/12/26