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▼参考書
千辛万苦
せんしんばんく
作家
作品

島崎藤村

【夜明け前 第一部下】

あの蝿帽子峠の手前に、クラヤミ峠というのがございます。」と儀十郎は言って見せた。「ひどい峠で、三里の間は闇(やみ)を行くようだと申しますんで、それで俗にクラヤミでございますさ。あの辺は深い雪と聞きますから、浪士も難渋いたしましたろうよ。」
「千辛万苦の旅ですね。」
 と勝重も言っていた。

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福沢諭吉

【成学即身実業の説、学生諸氏に告ぐ】

 むかしの学問は学問が目的にして、ただその難きを悦び、千辛万苦すなわち千快万楽にして余念なかりしものなれども、今の学問は目的にあらずして生計を求むるの方便なり。生計に縁なき学問は、封建士族の事なりといわざるをえず。

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福沢諭吉

【瘠我慢の説】

 左(さ)れば自国の衰頽(すいたい)に際し、敵に対して固(もと)より勝算(しょうさん)なき場合にても、千辛万苦(せんしんばんく)、力のあらん限りを尽(つく)し、いよいよ勝敗の極(きょく)に至りて始めて和を講ずるか、もしくは死を決するは立国の公道にして、国民が国に報ずるの義務と称すべきものなり。

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菊池寛

【仇討三態】

 恐ろしい空虚が、彼の心を閉した。すべてが煙のように空(むな)しいことに思われた。千辛万苦のうちに過した十六年の旅が、ばかばかしかった。敵に対する憎悪も、武士の意地も、亡父への孝節も、すべてが白々しい夢のように消えてしまった。

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泉鏡花

【星女郎】

 その頃は、もう生れかわったようになって、何某(なにがし)の令夫人だった貴婦人は、我が身も同(おんな)じに、悲(かなし)み傷(いた)んで、何は措(お)いても、その悪い癖を撓(た)め直そうと、千辛万苦(せんしんばんく)したけれども、お綾は、怪(あやし)い情を制し得ない。

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林不忘

【安重根 ――十四の場面――】

敵の汝に逢わんとて
水陸幾万里
千辛万苦を尽しつつ
輪船火車を乗り代えて
露清両地を過ぐるとき
行装のたびごとに
天道様に祈りをなし
イエス氏にも敬拝すらく
平常一度び逢うことの何ぞ遅きや
心し給え心し給え
東半島大韓帝国に心したまえ

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国枝史郎

【剣侠】

「長の月日お父上の敵、陣十郎めを討とう討とうと、千辛万苦いたしても、今に討つことならぬとは、われわれ二人神や仏に、見放された結果かもしれませぬ……将来どのように探そうとも、陣十郎の行衛結局知れず……知れず終(じま)いになろうもしれませぬ……わしにとっては無念至極ではござるが、澄江殿にとってはその方が、かえってよいかもしれませぬのう……アッハッハッよいともよいとも!」

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井上円了

【西航日録】

他日、一大プロフェッサーとなりて帰朝あるは、今より期して待つべきなり。また同氏の宅において、河口慧海氏に会するを得たるは、奇縁といわざるべからず。氏もまた哲学館出身にして、さきに千辛万苦をなめ、九死に一生を賭して、ヒマラヤ山中、無人の絶境に入り、ついに入蔵の目的を達するを得。

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夢野久作

【斬られたさに】

関所破りの疑いをかけたらしい腕利きの老人に、どこからともなく附き纏われまして生きた空もなく逐(お)い廻わされました時の、怖ろしゅう御座いましたこと……それから四国路まで狭迷(さまよ)いまして、千辛万苦致しました末、ようようの思いで当地に立越えてみますれば……

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吉川英治

【三国志 赤壁の巻】

兄君の孫策(そんさく)、いずれも寡兵(かへい)をひっさげて、戦乱の中に起ち、千辛万苦の浮沈をつぶさにおなめ遊ばして、はじめて、呉の基業をおひらきなされたものじゃが、そなたのみは、まったく呉城の楽園に生れて楽園に育ち、今、三代の世を受けついで君臨しておられる。

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Last updated : 2025/12/26