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▼参考書
四海兄弟
しかいけいてい
作家
作品

高山樗牛

【瀧口入道】

名利(みやうり)の外に身を處(お)けば、自(おのづ)から嫉妬の念も起らず、憎惡(ぞうを)の情も萌(きざ)さず、山も川も木も草も、愛らしき垂髫(うなゐ)も、醜(みにく)き老婆も、我れに惠む者も、我れを賤しむ者も、我れには等しく可愛らしく覺えぬ。げに一視平等(いつしびやうどう)の佛眼(ぶつげん)には四海兄弟と見えしとかや。病めるものは之を慰め、貧しきものは之を分ち、 心曲(こゝろまが)りて郷里の害を爲すものには因果應報の道理を諭(さと)し、凡(すべ)て人の爲め世の爲めに益あることは躊躇(たゆた)ふことなく爲(な)し、絶えて彼此(かれこれ)の差別(しやべつ)なし。

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肝付兼行

【海島冐險奇譚 海底軍艦 序】

我か艦員の接待に、懇篤周旋の勞を取りし、妙齡の貴夫人令孃にして、總員八名一人の男子を混へす、我か明日の解纜を新紙に知り、來りて惜別の意を表せむか爲めならむとは。其風姿の美にして擧止の健なる、梅花積雪を凌くの慨あり。其公誼に厚く友愛に深き、以て四海兄弟の情を表するに足る。此の如くにして始めて大國民の母たり配たるに耻ちすと謂ふへし。

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陸羯南

【近時政論考】

八十九年における仏国大革命は実に国民的感情の第二変遷を来たせり。この革命はもと毫も国民的感情に関係なく、その鋒もっぱら旧慣の破壊に向かい、封建論を唱うる者を死刑に処したるがごときの点より見れば、むしろ国民的感情に反対するの観ありき。しかれども国民的政治は国民統一をもってその一条件となす。封建遺制の錯雑を一掃して、かの宣言書にいわゆる単一不分の共和国を立つるは、日本の維新改革に近似して内部における国民的精神の発達と言うべし。すでにして仏人の国民精神すなわち愛国心はその適度を越えてほとんど非国民精神を呼び起こしたり。宣言の一条たる四海兄弟の原則は端なく国民といえる 藩籬(はんり)を忘れしめ、共和国の兵は国の異同を問わずただ暴君に向かうべしと大叫するに至りたり。

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吉川英治

【私本太平記 八荒帖】

 年はこえて、すぐ正月がきていた。
 けれど新しい年の紀号も、
 元弘三年
 正慶二年(北方)
 と、敵味方によって称(よ)びわけられるという変則な地上では、もとより四海兄弟などと 唱(とな)えて祝福し合う初春景色などはどこにもない。
 ただ高時の執権邸(しっけんてい)のおくで三ヵ日には鼓(つづみ)の音がもれていたくらいなもの。

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Last updated : 2025/12/26