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▼参考書
進退去就
しんたいきょしゅう
作家
作品

二葉亭四迷

【浮雲】

若しお勢さえ、天は荒れても地は老ても、海は枯(か)れても石は爛(ただ)れても、文三がこの上どんなに零落しても、母親がこの後どんな言(こと)を云い出しても、決してその初(はじめ)の志を悛(あらた)めないと定(きま)ッていれば、叔母が面(つら)を脹(ふく)らしても眼を剥出(むきだ)しても、それしきの事なら忍びもなる。文三は叔母の意見に背(そむ)く事が出来る。既に叔母の意見に背く事が出来れば、モウ昇に一着を輸する必要もない。「かつ窮して乱するは大丈夫の為(す)るを愧(はず)る所だ」
 そうだそうだ、文三の病原はお勢の心に在る。お勢の心一ツで進退去就を決しさえすればイサクサは無い。何故最初から其処に心附かなかッたか、今と成ッて考えて見ると文三我ながら我が怪しまれる。
 お勢に相談する、極めて上策。恐らくはこれに越す思案も有るまい。

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Last updated : 2025/12/26