息災延命
そくさいえんめい
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作家
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作品
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岡本綺堂
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【
経帷子の秘密
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本来ならば、めでたいと祝うのが当然でありながら、それを聞いて近江屋の夫婦は一種の不安に襲われた。不吉の予感が彼等のこころを暗くした。お峰は世間の母親のように、初孫の顔を見るのを楽しみに安閑とその日を送ってはいられなかった。かれは日ごろ信心する神社や仏寺に参詣して、娘の無事出産を祈るのは勿論、まだ見ぬ孫の息災延命をひたすらに願った。
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中里介山 |
【
大菩薩峠 農奴の巻
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或いは観音を的にし、或いは聖天を的にして、ただ単に祈る心は要するに、病気を直したい、息災延命で暮したい、女には惚れられ、お金はたくさん儲かりますように――裸にしてしまえば要するに、そんなものだが、さて、それにしても、その信心ごころという殊勝なものを、無下に軽蔑してはよろしくない。
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泉鏡花 |
【
売色鴨南蛮
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魔を除け、死神を払う禁厭であろう、明神の御手洗の水を掬って、雫ばかり宗吉の頭髪を濡らしたが、
「……息災、延命、息災延命、学問、学校、心願成就。」
と、手よりも濡れた瞳を閉じて、頸白く、御堂をば伏拝み、
「一口めしあがれ、……気を静めて――私も。」
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直木三十五
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【
南国太平記
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息災、延命の護摩壇は、円形であった。中央に八葉の蓮華を模した黄白の泥で塗った火炉があり、正面を北方として、行者は、南方の礼盤上に坐るのである。
右手には、塗香と、加持物、房花、扇、箸、三種の護摩木を置き、左手には、芥子、丸香、散香、薬種、名香、切花を置いてある。行者の前の壇上には、蘇油、鈴、独鈷、三鈷、五鈷、その右に、二本の杓、飯食、五穀を供え、左手には嗽口、灑水を置いてあった。
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井上円了
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【
迷信と宗教
】
民間にては、神社仏閣へ百度参りすることがある。例えば、慢性胃病のものが神仏に百度参りすれば、その御力にて全癒すと信ずるは迷信なるべきも、毎日一心になって百度参りを継続すれば、自然に全治するに至るわけである。四国遍路や三十三番巡礼なども、これによって仏様より一家の息災延命を与えてもらうものと信ずるは迷信なるべきも、身体を健全にし、見聞を広くし、精神を修養する点において利益することすくなくない。
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Last updated : 2025/09/19