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▼参考書
糟糠之妻/糟糠の妻
そうこうのつま
作家
作品

福沢諭吉

【徳育如何】

 新に沐(もく)する者は必ず冠(かん)を弾(だん)し、新に浴する者は必ず衣を振うとは、身を重んずるの謂(いい)なり。我が身、金玉なるがゆえに、いやしくも瑕瑾(かきん)を生ずべからず、汚穢(おわい)に近接すべからず。この金玉の身をもって、この醜行は犯すべからず。この卑屈には沈むべからず。花柳(かりゅう)の美、愛すべし、糟糠(そうこう)の老大、厭(いと)うに堪えたりといえども、糟糠の妻を堂より下すは、我が金玉の身に不似合なり。長兄愚にして、我れ富貴なりといえども、弟にして兄を凌辱するは、我が金玉の身によくすべからず。

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岸田國士

【愛妻家の一例】

 彼は、二十二で結婚した。巴里で腰弁生活をはじめた時代である。処女作の出版を断わられた時代である。
 細君はマリネットという愛称で呼ばれ、十年の糟糠の妻は、彼の眼に常に新鮮であった。

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菊池寛

【真珠夫人】

 荘田家の墓地は、あの有名なN大将の墓から十間と離れていないところにあった。美奈子の母が死んだ時、父は貧乏時代を世帯の苦労に苦しみ抜いて、碌々夫の栄華の日にも会わずに、死んで行った糟糠の妻に対する、せめてもの心やりとして、此処に広大な墓地を営んだ。無論、自分自身も、妻の後を追うて、直ぐ其処に埋められると云うことは夢にも知らないで。

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織田作之助

【可能性の文学】

この一句には坂田でなければ言えないという個性的な影像があり、そして坂田という人の一生を宿命的に象徴しているともいえよう。苦労を掛けた 糟糠(そうこう) の妻は「阿呆な将棋をさしなはんなや」という言葉を遺言にして死に、娘は男を作って駈落ちし、そして、一生一代の対局に「阿呆な将棋をさし」てしまった坂田三吉が後世に残したのは、結局この「銀が泣いてる」という一句だけであった。

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太宰治

【人間失格】

 また、犯人意識、という言葉もあります。自分は、この人間の世の中に於いて、一生その意識に苦しめられながらも、しかし、それは自分の 糟糠(そうこう) の妻の如き好 伴侶(はんりょ)で、そいつと二人きりで侘(わ)びしく遊びたわむれているというのも、自分の生きている姿勢の一つだったかも知れないし、また、俗に、脛(すね)に傷持つ身、という言葉もあるようですが、その傷は、自分の赤ん坊の時から、自然に片方の脛にあらわれて、長ずるに及んで治癒するどころか、いよいよ深くなるばかりで、

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長谷川時雨

【明治美人伝】

 野沢屋茂木氏には 糟糠(そうこう) の妻があった。彼女は遊女上りでこそあるが、一心になって夫を助け家を 富(とま)した大切な妻であった。その他に野沢屋には総番頭支配人に、生糸店として野沢屋の名をなさせた大功のある人物があった。その二人のために、さすがに溺(おぼ)れた主人も彼女をすぐに家に入れなかった。長い年月を彼女は外妾として暮さなければならなかった。

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幸田露伴

【鵞鳥】

是非(ぜひ)も無い、簡素(かんそ)な晩食(ばんしょく)は平常(いつも)の通りに済(す)まされたが、主人の様子は平常(いつも)の通りでは無かった。激(げき)しているのでも無く、怖(おそ)れているのでも無いらしい。が、何かと談話(だんわ)をしてその糸口(いとぐち)を引出そうとしても、夫はうるさがるばかりであった。サア、まことの 糟糠(そうこう) の妻たる夫思いの細君はついに 堪(こら)えかねて、真正面から、
「あなたは今日はどうかなさったの。」
と逼(せま)って訊いた。

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Last updated : 2025/12/26