大言壮語
たいげんそうご |
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作家
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作品
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【鴎外漁史とは誰ぞ】
予は個人に対しても、時に応じ人を得るときは、頗る饒舌る性であるが、当時予はまた公衆に対して饒舌った。新聞雑誌は初は予を強要して語らしめたが、後にはそう大言壮語せられては困るとか云って、予の饒舌るに
辟易した。
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【八宝飯】
或は我等の几側に侍せしめ、講釈を聞かせてやるに足るものも存外少からざらん乎。と言へば大言壮語するに似たれど、
兎に角彼等を冷眼に見るは衛生上にも幾分か必要なるべし。
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【星女郎】
ここだ、と一番、三盃の酔の元気で、拝借の、その、女の浴衣の、袖を二三度、両方へ引張り引張り、ぐっと膝を突向けて、
(夫人。)と遣った――
(生命に別条はありませんでしょうな。)
卑劣なことを、この場合、あたかも大言壮語するごとく
浴せたんです。
笑うか、打つか、呆れるか、と思うと、案外、正面から私を視て、
(ええ、その御心配のござんせんように、工夫をしていますんです。)
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【自警録】
「行儀を正すことが目下の一大急務なり」
というや、今までの豪傑は急に狼狽しはじめた。露出した膝頭を気にして、衣服で掩わんとしたり、あるいは趺座をかいた足を幾分かむすび直し、正座の姿に移らんとした。僕はこれを見て、ハハア、この人が今までの
大言壮語も、その磊落の行儀も、思いつかずになした業でなく、一時の拵え気焔で人を脅かすつもりか、あるいは豪傑を衒っての業であったのだな。
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【回想録】
彫刻家の中で私が一番親しくつきあったのは荻原守衛だ。アメリカで最初に会ったが、その時の印象では油切ったあくの強い人で、大言壮語する田舎者のように感じられて、私達江戸の教養ではそういうのを実に
厭がる。然し後で考えれば、正直な丸出しの人で、段々油切った所がなくなり闊達ないいところだけが感じられて、日本に帰ってからなどは非常にいい人であった。
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【碧蹄館の戦】
松浦郡は嘗つての神功皇后征韓の遺跡であり、湾内も水深く艦隊を碇泊せしめるに便利であったのである。秀吉は、信長在世中、中国征伐の大将を命ぜられたとき、私は中国などはいらない。日本が一統されたら、朝鮮大明を征服して、そこを頂きましょうと云っていた。
それは、大言壮語してしかも信長の
猜疑を避ける秀吉らしい物云いであったのであるが、そんな事を云っている内に、だんだん自分でもその気になったのか、それとも青年時代からそんな大志があったのか、どちらか分らない。
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【三面一体の生活へ】
世界の尊敬に価するような教育上の対現代的見識も持たずに――即ち基礎となる正大な見識も持たずに――高等学校を甲と乙と二種設ける程度の、姑息な学制の改変に留まるような教育会議に、私たちは大した信頼が払われましょうか。これに対して実力ある抗議が教育界から起らないのを見ても、教育者たちの平生の不平や改革意見が甚だ頼もしくない、微温な、物蔭の泣言や大言壮語に過ぎなくなってしまいます。
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【花咲ける石】
ちかごろは田舎者の世間知らずめが威張りくさって甚だ面白くない。法神流なぞというのは山猿相手の田舎剣術だ。江戸は将軍家のお膝元。天下の剣客の雲集するところ。気のきいた名人上手が山猿などを相手にするはずはない。その理由をさとらず、井の中の蛙、大言壮語して田舎者をたぶらかすとは憎い奴だ。道場破りを致すから、用意するがよい
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【漫罵】
彼等が脳膸は奇異を旨とする探偵小説にあらざれば以て
慰藉を与ふることなし。然らざれば大言壮語して、以て彼等の胆を破らざる可からず。然らざれば平凡なる真理と普通なる道義を繰返して、彼等の心を飽かしめざるべからず。彼等は詩歌なきの民なり。文字を求むれども、詩歌を求めざるなり。作詩家を求むれども、詩人を求めざるなり。
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【増長天王】
一心の芸術は、こうも人の精血を吸ってしまうものだろうか。僅かな間に、久米一の痩せ衰えたことは非常なものであった。糸を抜かれた蛾よりも婆娑とした姿に変って、大言壮語も吐かず
弱々と佐賀の城下へ曳かれて行った。
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Last updated : 2025/09/19