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▼参考書
大勇猛心
だいゆうもうしん
《参考》「大勇猛心」の読みを、臨済宗・黄檗宗の公式サイト『臨黄ネット  』では「だいゆうみょうしん」としている。
「勇猛心」勇猛なこころ。いさみたって、何物にも屈しないこころ。[精選版 日本国語大辞典]
作家
作品

森鴎外

【うたかたの記】

かくては所詮(しょせん)、我業(わざ)の進まむこと覚束(おぼつか)なしと、旅店の二階に籠(こ)もりて、長椅子(ながいす)の覆革(おおいかわ)に穴あけむとせし頃もありしが、一朝(いっちょう) 大勇猛心を 奮(ふる)いおこして、わがあらん限(かぎり)の力をこめて、この花売の娘の姿を無窮(むきゅう)に伝へんと思いたちぬ。

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坂口安吾

【青鬼の褌を洗う女】

エッちゃんは浮かない顔で、いっぺん自信がくずれると、せっかくの大勇猛心や善戦が身にすぎた奇蹟のように思われるらしく、その後はますますネバリがなくなり、シマッタと思うと全然手ごたえなくヘタヘタだらしなく負けるようになった。

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木村小舟

【太陽系統の滅亡】

「馬鹿野郎、吾らはそんな世迷言にかす耳を有たぬぞ、こうなった上は一寸の光陰も軽んずべからずだ、愚図(ぐず)愚図(ぐず)すれば撲(ぶ)ち殺されるぞ、生命が惜しくば早く下れ下れ!」
 彼らは全く狂気の沙汰である。されどこれを物ともせず、大勇猛心を起して彼はいった。

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太宰治

【竹青 ――新曲聊斎志異――】

乃公の如きは幼少の頃より、もっぱら其(そ)の独(ひと)りを慎んで古聖賢の道を究(きわ)め、学んで而(しこう)して時に之(これ)を習っても、遠方から福音の訪れ来る気配はさらに無く、毎日毎日、忍び難い侮辱ばかり受けて、大勇猛心を起して郷試に応じても 無慙(むざん)の失敗をするし、この世には鉄面皮の悪人ばかり栄えて、乃公の如き気の弱い貧書生は永遠の敗者として嘲笑せられるだけのものか。

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倉田百三

【青春の息の痕】

私は、信仰の大切なこと、そして徹底した深いキリストの心地が感服いたされます。私は、けれどなかなか信じられません。パンを神にデペンドする大勇猛心が出ません。私はしかし私の将来を純粋の信仰生活のなかに築きたい気はもはやコンスタントな深い根を張ったねがいになっています。

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国枝史郎

【北斎と幽霊】

 その夜とうとう融川は死んだ。
 この報知(しらせ)を耳にした時、豊後守の驚愕は他(よそ)の見る眼も気の毒なほどで、怏々(おうおう)として楽しまず自然勤務(つとめ)も怠(おこた)りがちとなった。
 これに反して北斎は一時に精神(こころ)が緊張(ひきし)まった。
「やはり師匠は偉かった。威武にも屈せず権力にも恐れず、堂々と所信を披瀝したあげく、身を殺して顧(かえりみ)なかったのは大丈夫でなければ出来ない所業(しわざ)だ。……これに比べては貧乏などは物の数にも入りはしない。荻生徂徠(おぎゅうそらい)は炒豆(いりまめ)を齧って古人を談じたというではないか。豆腐の殻を食ったところで活きようと思えば活きられる。……葛飾へ帰るのは止めにしよう。やはり江戸に止どまって絵筆を握ることにしよう」
 ――大勇猛心を揮い起こしたのであった。

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Last updated : 2025/12/26