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右往左往
うおうさおう
作家
作品

芥川龍之介

【芋粥】

五位はさつき、あの軒まで積上げた山の芋を、何十人かの若い男が、薄刃を器用に動かしながら、片端から削るやうに、勢よく切るのを見た。それからそれを、あの下司女たちが、右往左往に馳せちがつて、一つのこらず、五斛納釜へすくつては入れ、すくつては入れするのを見た。

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芥川龍之介

【偸盗】

――次郎は立本寺(りゅうほんじ)の辻(つじ)をきわどく西へ切れて、ものの二町と走るか走らないうちに、たちまち行く手の夜を破って、今自身を追っている犬の声より、より多くの犬の声が、耳を貫ぬいて起こるのを聞いた。それから、月に白(しら)んだ小路(こうじ)をふさいで、黒雲に足のはえたような犬の群れが、右往左往に入り乱れて、餌食(えじき)を争っているさまが見えた。最後に――それはほとんど寸刻のいとまもなかったくらいである。

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有島武郎

【或る女(前編)】

 始めての旅客も物慣れた旅客も、抜錨(ばつびょう)したばかりの船の甲板に立っては、落ち付いた心でいる事ができないようだった。跡始末のために忙(せわ)しく右往左往する船員の邪魔になりながら、何がなしの興奮にじっとしてはいられないような顔つきをして、乗客は一人(ひとり)残らず甲板に集まって、今まで自分たちがそば近く見ていた桟橋のほうに目を向けていた。

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與謝野晶子

【晶子詩篇全集拾遺】

線路を覗く人、
有楽町の方を眺める人、
頻りに煙草(たばこ)を強く吹かす人、
人込みを縫つて右往左往する人もある。
誰れの心もじれつたさに
何(なん)となく一寸険悪になる。
其中に女の私もゐる。

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泉鏡花

【貝の穴に河童の居る事】

「あ、あ、あ、姫君。踊って喧嘩はなりませぬ。うう、うふふ、蛇も踊るや。――藪(やぶ)の穴から狐も覗(のぞ)いて――あはは、石投魚(いしなげ)も、ぬさりと立った。」
 わっと、けたたましく絶叫して、石段の麓(ふもと)を、右往左往に、人数は五六十、飛んだろう。

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菊池寛

【真珠夫人】

 やがて式は了つた。会葬者に対する挨拶があると、会葬者達は、我先にと帰途を急いだ。式場の前には俥と自動車とが暫くは右往左往に、入り擾れた。
 信一郎は、急いで退場する群衆に、わざと取残された。彼は群衆に押されながら、意識して、彼の女性に近づいた。

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坂口安吾

【投手殺人事件】

「投手殺人事件」の凡(すべ)ての鍵は、これまでに残らず出しつくされました。作者は、もはや一言半句の附言を要しません。
 クサイあやしい人間が右往左往して、読者諸君の推理を妨げますが、諸君は論理的に既に犯人を充分に指摘することができる筈です。

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堀辰雄

【旅の絵】

おまけに私がそいつの出帆に立会いたいと思っていた欧洲航路の郵船は、もうこんな年の暮になっては一艘(いっそう)も出帆しないことがわかった。私の失望は甚(はなは)だしかった。そうしてただ小さな蒸汽船だけが石油くさい波を立てながら右往左往しているきりだった。

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有島武郎

【生まれいずる悩み】

海産物会社の印袢天(しるしばんてん)を着たり、犬の皮か何かを裏につけた外套(がいとう)を深々と羽織ったりした男たちが、右往左往に走りまわるそのあたりを目がけて、君の兄上が手慣れたさばきでさっと艫綱(ともづな)を投げると、それがすぐ幾十人もの男女の手で引っぱられる。

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岸田國士

【喧嘩上手 (トオキイ脚本)】

武部  (手帳を出し)なに? 千円……。よし有りがたい。
人々の間にこの時が伝はると、そこで、群集は雪崩の如く、右往左往しはじめる。何れも、中腰になつて、床の上を見廻す。(合唱)
その光景を前に、漫画家三人は、それ/″\、スケツチブツクを取り出して、写生をする。

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横光利一

【花園の思想】

舟から樽が、太股が、鮪(まぐろ)と鯛(たい)と鰹が海の色に輝きながら溌溂(はつらつ)と上って来た。突如として漁場は、時ならぬ暁のように光り出した。毛の生えた太股は、魚の波の中を右往左往に屈折した。鯛は太股に跨(またが)られたまま薔薇色の女のように観念し、鮪は計画を貯えた砲弾のように、落ちつき払って並んでいた。

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岡本かの子

【決闘場】

 留める事は思い及ばなかった。此のやけの命がけの闘いは彼女を惨酷に引き裂くようで恐ろしかった。彼女の体は男達の周りを右往左往した。彼女は男達の血の闘争に彼女自身も加わったような気がした。此の決闘の原因が自分にあることを彼女は勿論(もちろん)知って居た。

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原民喜

【苦しく美しき夏】

……寝つけない夜床の上で、彼はよく茫然と終末の日の予感におののいた。焚附(たきつけ)を作るために、彼は朽木に斧(おの)をあてたことがある。すると無数の羽根蟻(はねあり)が足許(あしもと)の地面を匐(は)い廻った。白い卵をかかえて、右往左往する昆虫(こんちゅう)はそのまま人間の群集の混乱の姿だった。都市が崩壊し暗黒になってしまっている図が時々彼の夢には現れるのだった。

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伊藤左千夫

【去年】

 驚いている間もない。妻を使いの者とともに駆け着けさせ、自分はただちに博士を依頼すべく飛び出して家を出でて二、三丁、もう町は明け渡っている。往来の人も少なくはない。どうしても俥(くるま)が得られなく、自分は重い体を汗みじくに急いだ。電車道まで来てもまだ電車もない。往来の人はいずれも足早に右往左往している。

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折口信夫

【だいがくの研究】

とう/\、松の宮の境内に、絵馬堂を拵へるといふ事で、竪棒を切つて、其柱にしてからは、祭りが来ても、だいがくは出なくなつた。天幕其他、未練の種になる物はすべて売り払はれて、揃へのゆかたの若者どもが、右往左往に入り乱れる喧嘩沙汰も痕を絶つことになつた。

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吉行エイスケ

【バルザックの寝巻姿】

 数ヶ月後、妾達の東洋曲芸団の一行は、巴里のゲエテ街にいました。モンマルトルは相も変わらず放縦(ほうじゅう)な展覧会が開催されて、黒い山高帽の群とメランコリックな造花の女が、右往左往していました。妾達の小屋はセエヌ左岸のアルマの橋を渡ったところに、日本画の万灯に飾られて、富士山や田園の書割(かきわり)にかこまれて、賑かにメリンスの友禅の魅力を場末の巴里(パリ)人に挨拶していたのです。

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林芙美子

【或る女】

 ボーイが右往左往してゐるので、二人が立つて行つても少しも目立たなかつた。控室の大きな長椅子に腰を降ろして吻つとしてゐると、花聟と花嫁が家族の人達に圍まれてぞろぞろ會場を出て來た。新婚旅行へ出る仕度でもするのだらう、花嫁につきそつて、美容師が三人、花嫁の袂をささげて歩いて來た。

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宮本百合子

【蠹魚】

 東京書籍館は、今の上野帝国図書館の前身である。いつ何処だのかは覚えないが、この書籍館時代の図書館の内部の木版画を観たことがある。羽織袴、多分まだ両刀を挾した男達が、驚くべく顴骨の高い眦の怒った顔で小さく右往左往している処に一つ衝立があり、木の卓子に向って読書している者、板敷の床を二階に昇ろうとする者の後姿などが雑然と一目で見える絵だ。

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織田作之助

【競馬】

そうか、やはり五番がいいかねと、五番の馬がスタートでひどく出遅れる癖(くせ)があるのを忘れて、それを買ってしまうのだ。――人々はもはや耳かきですくうほどの理性すら無くしてしまい、場内を黒く走る風にふと寒々と吹(ふ)かれて右往左往する表情は、何か狂気(きょうき)じみていた。

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高村光雲

【幕末維新懐古談 浅草の大火のはなし】

雷門から観音堂の方へ逃げようとしても、危険が切迫したので雷門も戸を閉(し)めてしまったから、いよいよ一方口になって、吾妻橋の方へ人は波を打って逃げ出し、一方は花川戸、馬道方面、一方は橋を渡って本所へと遁(に)げて行く。その遁げる人たちは荷物の山に遮られ、右往左往している中に、片ッ端から荷の山も焼け亡(う)せて跡は一面に火の海となるという有様……ただ、もう物凄い光景でありました。

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太宰治

【多頭蛇哲学】

アンチテエゼの成立が、その成立の見透しが、甚(はなは)だややこしく、あいまいになって来て、自己のかねて隠し持ったる唯物論的弁証法の切れ味も、なんだか心細くなり、狼狽(ろうばい)して右往左往している一群の知識人のためにも、この全体主義哲学は、その世界観、その認識論を、ためらわず活溌に展開させなければなるまい。未完成であると思う。それだけ努力のし甲斐(がい)があろう。

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種田山頭火

【行乞記 (一)】

行乞相があまりよくない、句も出来ない、そして追憶が乱れ雲のやうに胸中を右往左往して困る。……

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原民喜

【書簡 家族・親族宛】

ドイツで飲むからうまいらしい さて代表軍の元氣は盛ですか この間東京出發の際は少し痩れて居たやうだが 長の旅路のこと故 勢と自愛が肝要ですぞ デエトリツヒのやうな女どもが右往左往して居る伯林 ナチスのナスビ鬚 それから柳町ではまた遠からず芽出度いことがあるさうです

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松本泰

【日蔭の街】

まだ時間は早かったし、それに飽気なく柏が帰ってしまったので、どうしても此儘、寂しい川岸の下宿へ帰る気になれなかった。目の下の大通りを数限りない自動車や、乗合自動車(バス)が右往左往に疾走ってゆく、両側に立並んだ、明るい飾窓(ショーウィンドウ)の前を、黒い人影が隙間もなく、ギッシリとかたまり合って、

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野口雨情

【大利根八十里を溯る】

 丁度、その夜の丑満(うしみつ)頃である。やみをつんざいてけたたましいときの声が聞えた。ハテナと思ふ瞬間に、階上階下の廊側(らうがは)に右往左往するおびただしい足音も聞えて来た。私は『山賊の襲来』と直感して、すぐはね起きたのである。

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中里介山

【大菩薩峠 黒業白業の巻】

その近いあたりは、なんでも一面の大湖のように水が張りきってしまったらしく、その間を高張提灯(たかはりぢょうちん)や炬火(たいまつ)が右往左往に飛んでいるのは、さながら戦場のような光景でありました。その戦場のような光景はながめることはできないながら、その罵り合う声は、明瞭に竜之助の耳まで響いて来るのであります。

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  • それぞれの四字熟語の詳しい意味などは、辞典や専門書でお確かめください。
  • このサイトの制作時点では、三省堂の『新明解 四字熟語辞典』が、前版の5,600語を凌ぐ6,500語を収録し、出版社によれば『類書中最大。よく使われる四字熟語は区別して掲示。簡潔な「意味」、詳しい「補説」「故事」で、意味と用法を明解に解説。豊富に収録した著名作家の「用例」で、生きた使い方を体感。「類義語」「対義語」を多数掲示して、広がりと奥行きを実感』などとしています。

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Last updated : 2022/11/23