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有耶無耶
うやむや
作家
作品

夏目漱石

【草枕】

 静かな庭に、松の影が落ちる、遠くの海は、空の光りに応(こた)うるがごとく、応えざるがごとく、有耶無耶(うやむや)のうちに微(かす)かなる、耀(かがや)きを放つ。漁火(いさりび)は明滅す。

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夏目漱石

【虞美人草】

わが血潮は、粛々(しゅくしゅく)と動くにもかかわらず、音なくして寂定裏(じゃくじょうり)に形骸(けいがい)を土木視(どぼくし)して、しかも依稀(いき)たる活気を帯ぶ。生きてあらんほどの自覚に、生きて受くべき有耶無耶(うやむや)の累(わずらい)を捨てたるは、雲の岫(しゅう)を出で、空の朝な夕なを変わると同じく、すべての拘泥(こうでい)を超絶したる活気である。

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中島敦

【李陵】

たとい、単于を討果たしたとしても、その首を持って脱出することは、非常な機会に恵まれないかぎり、まず不可能であった。胡地(こち)にあって単于と刺違えたのでは、匈奴(きょうど)は己(おのれ)の不名誉を有耶無耶(うやむや)のうちに葬ってしまうこと必定(ひつじょう)ゆえ、おそらく漢に聞こえることはあるまい。李陵は辛抱強(しんぼうづよ)く、その不可能とも思われる機会の到来を待った。

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泉鏡花

【春昼後刻】

 唯(ただ)その有耶無耶(うやむや)であるために、男のあとを追いもならず、生長(いきなが)らえる効(かい)もないので。

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幸田露伴

【華嚴瀧】

 平和の夢からさめて十日の朝だなと意識した時には、昨夜は少し厚過ぎるやうに思つた夜被(よぎ)も更に重く覺えなかつた。湖に面した廣縁に置かれた籐椅子によつて眺めると、昨日は水の面をはつて一望をたゞ有耶無耶(うやむや)の中に埋めた霧が、今朝はあとも無く晴れて、大湖を繞(めぐ)る遠い山々の胸や腰のあたりに白雲が搖曳(えうえい)してゐるばかりで、

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坂口安吾

【二流の人】

 政宗は田舎者ではあるけれども野心と狡智にかけては黒田如水と好一対、前田利家や徳川家康から小田原陣に参加するやうにといふ秀吉の旨を受けた招請のくるのを口先だけで有耶無耶(うやむや)にして、この時とばかり近隣の豪族を攻め立て領地をひろげるに寧日(ねいじつ)もない。

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宮本百合子

【「母の膝の上に」(紹介並短評)】

 父親は、ケムブリッジ大学を卒業し、ひとから未来を属望され、自分も大いに活動する気でいたところが、彼の盲滅法な性質から、深い考えもなく或る私塾を開いている牧師の娘と恋に落ち、結婚したまま有耶無耶(うやむや)に六年間舅の助手で過してしまいました。舅の死で目を覚し、万事新にやりなおして世間に出ようと努力したが、同期の友人達には、追いすがる余地もない程時代にとりのこされて仕舞いました。

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鷹野つぎ

【草藪】

 到頭この日も附添婦を雇う話は、こんなことで有耶無耶のうちに過ぎてしまった。
 ところがその翌日の昼ごろには、うす物の良い身なりをした大兵肥満の女のひとが素通りで、とよ子の方へはいって来た。前後の事情で問わずとも次兄の妻女ということが、私にはわかっていた。

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岡本綺堂

【半七捕物帳 むらさき鯉】

宇三郎の白状で、鯉を食った者はみんな判っているんですが、身分のある人は迂濶に詮議も出来ず、大町人は金を使って内々に運動したのでしょう、その方の詮議はすべて有耶無耶(うやむや)になってしまいました。高山もお糸も無事でしたが、この一件から富蔵との秘密がばれたらしく、お糸は旦那の手が切れて何処へか立ち去ったようでした」

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夢野久作

【復讐】

「イヤ……村の者の噂は大部分事実なのです。品夫はたしかに氏素性(うじすじょう)のハッキリしない者の娘で、しかも変死者の遺児(わすれがたみ)に相違無いのです。つまり、その犯人が捕まらないために、何もかもが有耶無耶(うやむや)に葬られた形になっているので……」
「ハハア。……してみると所謂(いわゆる)迷宮事件ですな」

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岸田國士

【沢氏の二人娘】

一寿  いゝかね、そこでだよ、その七十円なにがしのお小遣も、たうとう有耶無耶で出すことになつた。ところで、吾輩がそいつを渋々出してると思ふかね。とんだ間違ひだ。オー・コントレエル。吾輩は、何時もびくびくもんで――そのうちに突つ返されやしまいかと思ひながら――それこそ、顔も見ないやうにして放り出すんだ……。

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高山樗牛

【瀧口入道】

血にこそ染まね、千束なす紅葉重(もみぢがさね)の燃ゆる計りの我が思ひに、薄墨の跡だに得還(えかへ)さぬ人の心の有耶無耶(ありやなしや)は、誰か測り、誰か知る。然(さ)なり、情(つれ)なしと見、心なしと思ひしは、僻める我身の誤なりけり。然るにても――

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堀辰雄

【菜穂子】

おれは何度今までにだって、いまの勤めを止め、何か独立の仕事をしたいと思ってそれを云い出しかけては、所長のいかにも自分を信頼しているような人の好さそうな笑顔を見ると、それもつい云いそびれて有耶無耶(うやむや)にしてしまったか分からない。そんな遠慮ばかりしていて一体おれはどうなる?

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近松秋江

【別れたる妻に送る手紙】

つい近頃のことまで、長田が自分で観、また此方から一寸々々(ちょいちょい)話しただけのことは知っている。長田の心では雪岡はまた女に凝っている、あの通り、長い間一緒にいた女とも有耶無耶(うやむや)に別れて了って、段々詰らん坊になり下っている癖に、またしても、女道楽でもあるまい、と、少しは見せしめの為にその銭は渡すこと相ならぬ、という積りなのであろうか。

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夢野久作

【一足お先に】

「……警察の連中はたしかに方針を誤っているのです。十中八九までこの事件を、強力犯(ごうりきはん)係の手に渡すに違い無いと思われます。その結果、この事件は必然的に迷宮に入って、有耶無耶(うやむや)の中(うち)に葬られる事になるでしょう。

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織田作之助

【わが町】

 こんどの談は敬吉に来て、先方は表具屋の娘だったから、これも敬吉の意見をきかぬうちに有耶無耶になった。仲人はしかし根気よく三度足を運んだのだった。

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徳田秋声

【仮装人物】

 それにもかかわらず、葉子が離れて行ったとなると、庸三は何か心が落ち着かなかった。他の誰のところへ行ったよりも安心だとは思いながら、春日夫妻のところへ駈(か)けこんで行ったことを思うと、やっぱり心配であった。今度こそ有耶無耶(うやむや)では済まされず、何か動きの取れない条件がつくものだろうと思うと、今さら寂しかった。夫人がその背後にあって、鍵(かぎ)を握っているということも、想像されなくはなかった。そうでもしてこの際お互いを縛ることが最善の方法だとは承知していたが。――

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横光利一

【旅愁】

 矢代は有耶無耶なことを云って言葉を濁したが、洋行して来た自分よりも、子供にそれをさせることのみ専念して、身を慎しみ、生涯を貯蓄に暮しつづけた父の凡庸さが、自分よりはるかに立派な行いのように思われた。

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Last updated : 2022/11/23