容顔美麗
ようがんびれい
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作家
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作品
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【右大臣実朝】
十二月二十六日には、御拝賀の御行列に供奉申上げる光栄の随兵の御撰定がございまして、そもそもこのたびの御儀式の随兵たるべき者は、まづ第一には、幕府譜代の勇士たる事、次には、弓馬の達者、しかしてその三つには容儀神妙の、この三徳を一身に具へてゐなければならぬとの仰せに従ひ、名門の中より特に慎重に撰び挙げられたいづれ劣らぬ容顔美麗、弓箭達者の勇士たちは、来年正月の御拝賀こそ関東無双の晴れの御儀にして殆んど千載一遇とも謂ひつべきか、このたび随兵に加へらるれば、子孫永く武門の面目として語り継がん、まことに本懐至極の事、と互ひに擁して慶祝し合ひ、ひたすら新年を待ちこがれて居られる御様子でございましたけれども、当時、鎌倉の里に於いて、何事も思はず、ただ無心にお喜びになつていらつしやつたのは、おそらく、このお方たちだけでは無かつたらうかと思はれます。
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【伯爵の釵】
――日本一にて候ぞと申しける。鎌倉殿ことごとしや、何処にて舞いて日本一とは申しけるぞ。梶原申しけるは、一歳百日の旱の候いけるに、賀茂川、桂川、水瀬切れて流れず、筒井の水も絶えて、国土の悩みにて候いけるに、――
聞くものは耳を澄まして袖を合せたのである。
――有験の高僧貴僧百人、神泉苑の池にて、仁王経を講じ奉らば、八大竜王も慈現納受たれ給うべし、と申しければ、百人の高僧貴僧を請じ、仁王経を講ぜられしかども、その験もなかりけり。また或人申しけるは、容顔美麗なる
白拍子を、百人めして、――
あれに真白な足が、と疑う、緋の袴は一段、階に劃られて、二条の紅の霞を曳きつつ、上紫に下萌黄なる、蝶鳥の刺繍の狩衣は、緑に透き、葉に靡いて、柳の中を、するすると、容顔美麗なる白拍子。紫玉は、色ある月の風情して、一千の花の
燈の影、百を数うる雪の供饌に向うて法壇の正面にすらりと立つ。
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Last updated : 2025/09/19