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有終之美/有終の美
ゆうしゅうのび
作家
作品

太宰治

【親友交歓】

 小学校時代の同級生とは言っても、私には、五、六人の本当の親友はあったけれども、しかし、このひとに就いての記憶はあまり無いのだ。彼だって、その頃の私に就いての思い出は、そのれいの喧嘩したとかいう事の他には、ほとんど無いのではあるまいか。しかも、たっぷり半日、親友交歓をしたのである。私には、強姦ごうかんという極端な言葉さえ思い浮んだ。
 けれども、まだまだこれでおしまいでは無かったのである。さらに有終の美一点が附加せられた。まことに痛快とも、小気味よしとも言わんかた無い男であった。玄関まで彼を送って行き、いよいよわかれる時に、彼は私の耳元で はげしく、こうささやいた。
「威張るな!」

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倉田百三

【人生における離合について】

 いったん愛し合い結び合った者は一生離れず終わりを全うするのが美しく望ましいのはいうまでもない。この現実の世ではそうした人倫の「有終の美」は稀なだけにどんなに尊いかしれない。天智天皇と藤原鎌足のような君臣の一生的の結びは彼の漢の高祖や源頼朝などの君臣の例と比べて如何に美しく、乃木夫妻のようなのは夫婦の結びの 亀鑑きかんである。

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坂口安吾

【中庸】

 余の無能、余の発狂、二つながらたぶん正しいのであろう。つたなかりし生涯をかえりみれば、有終の美をとどめたものと云うべきであろう。余は余の墓碑銘を次の如くに記しておいた。
「中庸に敗る」

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内田魯庵

【八犬伝談余】

 本来『八犬伝』は百七十一回の八犬具足ぐそくを以て終結と見るが当然である。馬琴が聖嘆せいたんの七十回本『水滸伝』を難じて、『水滸』の豪傑がもし方臘ほうろうを伐って宋朝に功を立てる後談がなかったら、『水滸伝』はただの山賊物語となってしまうと論じた筆法をそのまま適用すると、『八犬伝』も八犬具足で終って両管領かんれいとの大戦争に及ばなかったらやはりただの浮浪物語であって馬琴の小説観からは恐らく有終の美を成さざる うらみがあろう。そういう道学的小説観は今日ではもはや問題にならないが、為永春水はいでさえが貞操や家庭の団欒だんらんの教師を保護色とした時代に、馬琴ともあるものがただの浮浪生活を描いたのでは少なくも愛読者たる士君子に対して申訳が立たないから、勲功記を加えて以て完璧たらしめたのであろう。

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長谷川時雨

【マダム貞奴】

彼女には意地が何よりの命で、意気地いきじを貫くという事がどれほど至難であり、どれほど快感であり、どれほど誇らしいものであるか知れないと思っているのであろう。功なりげ、退しりぞくという東洋風の先例にならい、女子としては有終の美をなしたと思ったであろう。貞奴という日本新劇壇の最初にもった女優には、何処までも劇に没頭してもらいたかった。あの人の るいそうと目標にされるような、大女優にして残したかった。こういうのも貞奴の舞台の美を愛惜するからである。

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鳥谷部春汀

【明治人物月旦(抄)】

今や閣下は、元帥の待遇と陸軍大将の軍職とを有し、凡そ軍人としては此の上もなき最高の位置及び之れに伴へる君寵を享け、即ち所謂る功成り名遂げ、復た世に遺憾なきの人なり、顧みて更に大政治家たらむことを望むは、豈閣下の有終の美を成す所以ならむや。

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甲賀三郎

【支倉事件】

 庄司署長が支倉の自白の直後に当って今少し冷静に考えて、適当な処置を取ったならば、支倉は当時にあっては署長の温情に対して感謝の涙を流し、誰の面前に於てもその事を繰返し述べていたのであるから、決して他日みだり反噬はんぜいするような事もなく、庄司署長は有終の美をなしたのであろうが、こゝに少しく用意を欠いた為に、後日非常な面倒を 惹起じゃっきし、極一部からではあるが、署長が立身の踏台として、支倉を犠牲としたのであるなどと云われる事があったのは惜むべき事であった。

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夢野久作

【街頭から見た新東京の裏面】

 選挙民の「無自覚」ということは、吾が大和民族が天から授かった美徳で、別段珍らしい言葉ではない。吾国の村会、町会、市会、県会、国会等いう議員が、今日の如く竹篦しっぺい下がりに堕落して行く根本的の原因が、国民の政治的智識の欠乏、言葉を換えて云えば愛村、愛町、愛市、愛国心等が薄いのに原因していることは誰でも知っている。仮令たとえ普選になっても、美徳がある限り天下はいつまでも太平であろうとは誰でも感じていることで、この美徳を打破って憲政有終の美を満たすには、唯一つ「選挙民の自覚」あるのみというも また十人が十人自覚している。

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小栗虫太郎

【方子と末起】

 それは、謙吉に時世をみる眼があったからだろうか、暖簾や、伝統などに執着せずさらっと止めたことは、多くの競争者のなかにあってマネキン人形などつくるよりも、大光斎としては有終の美であったにちがいない。

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Last updated : 2022/11/23