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▼参考書
遊冶放蕩
ゆうやほうとう
作家
作品

福沢諭吉

【徳育如何】

 その趣(おもむき)は、老成人が少年に向い、直接にその 遊冶放蕩(ゆうやほうとう)を責め、かえって少年のために己(おの)が昔年の品行を摘発枚挙せられ、白頭汗を流して赤面するものに異ならず。直接の譴責は各自個々の間にてもなおかつ効を見ること少なし。いわんや天下億万の後進生に向ってこれを責むるにおいてをや。労して功なきのみならず、かえってこれを激するの禍(わざわい)なきを期すべからざるなり。

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福沢諭吉

【学問のすすめ】

 譬えば父母の指図を聴かざる道楽息子へみだりに銭を与えて、その遊冶放蕩を逞しゅうせしむるは、保護の世話は行き届きて指図の世話は行なわれざるものなり。子供は謹慎勉強して父母の命に従うといえども、この子供に衣食をも十分に給せずして無学文盲の苦界に 陥(おとしい)らしむるは、指図の世話のみをなして保護の世話を怠るものなり。甲は不孝にして乙は不慈なり。ともにこれを人間の悪事と言うべし。

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福沢諭吉

【教育の事】

妓楼(ぎろう)酒店の帰りにいささかの土産を携えて子供を悦(よろこ)ばしめんとするも、子供はその至情に感ずるよりも、かえって土産の出処を内心に穿鑿(せんさく)することあるべし。この他なお細かに吟味せば、蓄妾淫奔(ちくしょういんぽん)・ 遊冶放蕩(ゆうやほうとう)、口にいい紙に記すに忍びざるの事情あらん。この一家の醜体を現に子供に示して、明らかにこれに傚(なら)えと口に唱えざるも、その実は無辜(むこ)の小児を勧めて醜体に導くものなり。これを譬(たと)えば、毒物を以て直(じか)にこれを口に喰(く)らわしめずして、その毒を瓦斯(ガス)に製し空気に混じて吸入せしむるが如し。これを無情といわざるを得んや。鬼蛇の名称差支(さしつかえ)なかるべし。

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Last updated : 2025/12/26