いろは歌・いろはガルタ・いろは双六『目次』 

「東西伊呂波短歌評釈」
幸田露伴

幸田露伴の「東西伊呂波短歌評釈」で、
東と西の「いろはガルタ」の違いを見てみます。

 幸田 露伴(こうだ ろはん)

  • 1867年・慶応3年7月23日生 (
  • 1947年・昭和22年7月30日没(
  • 江戸下谷三枚橋横町に生まれる。
  • 本名、成行。
  • 明治18(1885)年7月、18歳の時に北海道余市の電信局に赴任。しかし、明治20年8月、文学を志すため余市を脱出。その時のことを綴ったのが『突貫紀行』。
  • 『五重塔』『運命』などの文語体作品で文壇での地位を確立。尾崎紅葉とともに紅露時代と呼ばれる時代を築いた。

東西伊呂波短歌評釈

幸田露伴

 東京と西京とは、飲食住居より言語風俗に至るまで、今猶 すこぶ る相異なるものあり。それも、やがては同じきに帰す可けれど、こゝしばらくは互に移らざらむ歟。そは兎まれ角まれ、小児の年の初に用ゐて遊ぶ 骨牌子 かるた に記されたる伊呂波短歌などいふも、東京のと西京のとは、いたく異なりて、其の同じきものは四十八枚中わづかに二三枚に過ぎざるぞおもしろき。今試に東西に行はるゝところのものを取りて之を比較せん。

*『東西伊呂波短歌評釈』の初出は、明治42年・1909年3月 です。
* 原文には「い・ろ・は」の項目分けはありませんが、便宜上編集において付加しました。
* 本文は「青空文庫」からの引用で、一行目を旧字旧仮名遣い、二行目を新字新仮名遣いとしました。
* 原文にある、それぞれの説明・解釈などは省略しました。「青空文庫」などでお読みください。
* 現代では不適切と受け取られる可能性のある表現を含む句もありますが、歴史的背景を示す意味から原形のまま掲載しています。


  • いぬも歩けば棒にあたる
    西
    いや/\三盃

  • 論より證據
    論より証拠
    西
    論語讀みの論語知らず
    論語読みの論語知らず

  • 花より團子
    花より団子
    西
    針の孔から天

  • にくまれ子は世にはびこる
    西
    おなじ

  • ほね折り損のくたびれ儲け
    西
    ほとけの顏も三度
    ほとけの顔も三度

  • 屁をつて尻すぼめ
    屁をって尻すぼめ
    西
    下手な長談義

  • 年寄りの冷水
    西
    豆腐にかすがひ
    豆腐にかすがい

  • 塵積つて山
    塵積って山
    西
    地獄の沙汰も金

  • 律義者りちぎものの子澤山
    律義者りちぎものの子沢山
    西
    綸言りんげん汗の如し

  • ぬす人の昼寐
    ぬす人の昼寝
    西
    ぬかに釘

  • るりもはりも照せば光る
    西
    類を以て聚る

  • 老いては子に従ふ
    老いては子に従う
    西
    負ふた子に教へられ
    負うた子に教えられ

  • われ鍋に綴蓋
    西
    笑ふ門には
    笑う門には

  • かつたいのかさうらみ
    かったいのかさうらみ
    西
    蛙の面に水

  • よしのずゐから天を覗く
    よしのずいから天を覗く
    西
    よめとほめ
    よめとおめ

  • たびは道づれ
    西
    たていたに水

  • れうやく口に苦し
    りょうやく口に苦し
    西
    れんぎで腹切る

  • 惣領の甚六
    西
    袖のふりあはせも
    袖のふりあわせも

  • 月夜に釜をぬかれる
    西
    東におなじ

  • 念には念を入れよ
    西
    猫に小判

  • なきつらに蜂
    西
    なす時の閻魔顔

  • 江戸
    樂あれば苦あり
    楽あれば苦あり
    西
    來年の事云へば鬼が笑ふ
    来年の事云えば鬼が笑う

  • 無理がとほれば道理引込む
    無理がとおれば道理引込む
    西
    むまの耳に風
    *編集注:「むま」は「馬」のこと。『平安以降、「むま」と表記した例が多い(小学館・日本国語大辞典)』

  • うそから出た眞
    うそから出た真
    西
    氏より育ち

  • 芋の煮えたも御存知ない
    西
    鰯の頭も信心がら
    *編集注:「信心がら」は「信心柄」で、「から」とされることが多いが、ここでは濁音となっている。狩野亨吉『安藤昌益』に「聽くものよりすれば鰯の頭も信心柄と取られ」、夏目漱石『創作家の態度』に「ことごとく信心がらの鰯の頭と同じような利目が」、石川啄木『葬列』に「かの鰯の頭も信心柄の殊勝な連中が」などと見られる。

  • 咽頭のどもと過ぐれば熱さ忘るゝ
    咽頭のどもと過ぐれば熱さ忘るる
    西
    鑿といへば鎚
    鑿といえば鎚

  • 鬼に鐵棒かなぼう
    鬼に鉄棒かなぼう
    西
    鬼も一八

  • くさいものには蓋
    西
    くさいものに蝿

  • やす物買ひの錢失ひ
    やす物買いの銭失い
    西
    やみに鐵砲
    やみに鉄砲

  • 負けるは勝
    西
    まかぬ種子たねは生えぬ

  • 藝は身を助ける
    芸は身を助ける
    西
    下駄に燒味噌
    下駄に焼味噌

  • ふみはやりたし書く手は持たず
    西
    ふくろうの宵だくみ

  • 子は三界の首枷
    西
    これにこりよ道西坊

  • えてに帆を上げ
    西
    えんと月日

  • 亭主の好きな赤烏帽子
    西
    寺から里へ

  • あたま隠して尻かくさず
    西
    あきなひは牛の涎
    あきないは牛の涎

  • 三遍囘つて煙草にしよ
    三遍回って煙草にしょ
    西
    猿も木から墜ちる

  • 聞いて極楽見て地獄
    西
    義理と犢鼻褌

  • ゆだん大敵
    西
    ゆうれいの濱風
    ゆうれいの浜風

  • めの上のたん瘤
    西
    めくらのかきのぞき

  • 身から出た錆
    西
    身は身でとほる
    身は身でとおる

  • 知らぬが仏
    西
    しわんぼの柿の核子たね

  • 綠は異なもの
    縁は異なもの
    西
    綠の下の舞
    縁の下の舞

  • びん乏暇無し
    西
    瓢箪に鯰

  • もんぜんの小僧習はぬ経を読む
    もんぜんの小僧習わぬ経を読む
    西
    餅屋は餅屋

  • せに腹はかへられぬ
    せに腹はかえられぬ
    西
    雪隠で饅頭

  • 粹が身をくふ
    粋が身をくう
    西
    雀百まで躍りやまず

  • 京の夢大阪の夢
    西
    京に田舎あり

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Last updated : 2022/11/23