作品に出てくるものの数え方(助数詞)
 
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輪
作 家
作 品
芥川龍之介
【白】
ある秋の真夜中です。体も心も疲れ切った白は主人の家へ帰って来ました。勿論(もちろん)お嬢さんや坊ちゃんはとうに床(とこ)へはいっています。いや、今は誰一人起きているものもありますまい。ひっそりした裏庭の芝生(しばふ)の上にも、ただ高い棕櫚(しゅろ)の木の梢(こずえ)に白い一輪浮んでいるだけです。白は昔の犬小屋の前に、露(つゆ)に濡(ぬ)れた体を休めました。それから寂しい月を相手に、こういう独語(ひとりごと)を始めました。
大町桂月
【月譜】
月の名所は桂浜といへる郷里のうた、たゞ記憶に存するのみにて、幼少の時より他郷に流寓して、未だ郷にかへりたることなければ、まことはその桂浜の月見しことなけれど、名たゝる海南絶勝の地の、危礁乱立する浜辺に、よりては砕くる浪の花しろく、九十九湾縹渺として烟にくるゝ夕雲をはらひはてし秋風を浜松の梢にのこして、長鯨潮を吹く浪路の末に、一輪の名あらひ出されたらむは、如何に心ゆくべきかぎりぞや。
泉鏡花
【高野聖】
既(すで)に目も眩(くら)んで倒れそうになると、禍(わざわい)はこの辺が絶頂であったと見えて、隧道(トンネル)を抜けたように、遥(はるか)に一輪(いちりん)のかすれたを拝んだのは、蛭の林の出口なので。
岡本綺堂
【影を踏まれた女 −−「近代異妖編」】
「寒うござんすね。」
「おせきちやん、御覧よ。月がよく冴(さ)えてゐる。」
要次郎に云はれて、おせきも思はず振り仰ぐと、向う側の屋根の物干(ものほし)の上に、一輪の冬のは、冷(つめた)い鏡のやうに冴えてゐた。
「好いお月様ねえ。」
太宰治
【葉桜と魔笛】
タンポポの一輪の贈りものでも、決して恥じずに差し出すのが、最も勇気ある、男らしい態度であると信じます。
岡本かの子
【小町の芍薬】
失神したやうになつてゐた君助は、やがて気がつくと少女が口づけた芍薬の一輪折り取つた。
堀辰雄
【美しい村】
突然、私の窓の面している中庭の、とっくにもう花を失っている躑躅(つつじ)の茂(しげ)みの向うの、別館(べっかん)の窓ぎわに、一輪向日葵(ひまわり)が咲きでもしたかのように、何んだか思いがけないようなものが、まぶしいほど、日にきらきらとかがやき出したように思えた。
佐左木俊郎
【季節の植物帳】
梅の花はなんとなく先駆者(せんくしゃ)という感じです。寒さをおそれず、肌を刺すような北風の中で弾(はじ)けるだけに、なんとはなしに草木の先駆者というような気がします。梅の一輪二輪と綻(ほころ)びるころの朝夕は、空気がまだ本当に冷えびえとしていて、路傍(ろぼう)には白刃(しらは)のような霜柱が立ち並び、水溜まりには薄い氷がはっています。私達は冬の長い習慣で、襟(えり)の中にすくんでいる首を、無理に伸ばすようにして、ふところ手のまま見上げるのです。本当に、ふところ手のまま、一輪二輸と綻(ほころ)びかけたのを見上げるのです。
 
   
 
 
 

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Last updated : 2019/05/16