作品に出てくるものの数え方(助数詞)
 
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隻
作 家
作 品
夏目漱石
【倫敦塔】
壁土を溶(とか)し込んだように見ゆるテームスの流れは波も立てず音もせず無理矢理(むりやり)に動いているかと思わるる。帆懸舟(ほかけぶね)一隻(せき)塔の下を行く。風なき河に帆をあやつるのだから不規則な三角形の白き翼がいつまでも同じ所に停(とま)っているようである。伝馬(てんま)の大きいのが二艘(そう)上(のぼ)って来る。ただ一人の船頭(せんどう)が艫(とも)に立って艪(ろ)を漕(こ)ぐ、これもほとんど動かない。
森鷗外
【舞姫】
余は通信員となりし日より、曾て大學に繁く通ひし折、養ひ得たる一隻眼孔もて、讀みては又讀み、寫しては又寫す程に、今まで一筋の道をのみ走りし知識は、自ら綜括的になりて、同郷の留學生などの大かたは、夢にも知らぬ境地に到りぬ。
芥川龍之介
【廿年後之戦争】
ホノルヽ発 昨朝五時を過る頃戦闘艦三隻装甲巡洋艦十一隻及其他若干の水雷艇並に水雷駆逐艇よりなる仏国東洋艦隊は急に当港を抜錨せり之と同時に我太平洋艦隊も又港外に進めり
島崎藤村
【夜明け前 第二部 上】
南の方に当たっては海も青く光っていて、港に碇泊(ていはく)する五隻の英と、三隻の仏艦と、一隻の米艦とを望むこともできた。だれの目にもまだ新しい港の感じが浮かばない。
梶井基次郎
【海 断片】
暗礁については一度こんなことがあった。ある年の秋、ある晩、夜のひき明けにかけてひどい暴風雨があった。明方物凄い雨風の音のなかにけたたましい鉄工所の非常汽笛が鳴り響いた。そのときの悲壮な気持を僕は今もよく覚えている。家は騒ぎ出した。人が飛んで来た。港の入口の暗礁へ一隻駆逐艦(くちくかん)が打(ぶ)つかって沈んでしまったのだ。鉄工所の人は小さなランチヘ波の凌(しの)ぎに長い竹竿を用意して荒天のなかを救助に向かった。
堀辰雄
【晩夏】
湖水は静かだった。絵はがきによくあるヨット一隻も出ていなかった。私達を載せたモオタア船だけが湖上にあって、水の面にガソリンの臭を漂わせながら、いやにエンジンの音を立て続けている。
中里介山
【大菩薩峠 小名路の巻】
水の瀬が開ける音がしたのは一隻端舟(はしけ)が、櫓(ろ)の音も忍びやかに両国橋の下を潜って、神田川へ乗り込み、この辺の河岸(かし)に舟を着けようとしているものらしい。
海野十三
【敗戦日記】
◯午後六時二十分の大本営発表が、硫黄島戦を報ず。「昨日来、敵は上陸意図をあらわし、戦艦五隻巡洋艦六隻、輸送船等多数あり。これに対してわれは攻撃を加え、戦艦一隻轟沈、巡洋艦二隻、船型未詳二隻、撃沈ほかの戦果をあげたり」徹郎君はこの方へ出かけたもののように思われる。武運を祈るや切なり、徹郎君しっかり、しっかり。
 
   
 
 

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Last updated : 2023/02/24