作品に出てくるものの数え方(助数詞)
 
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滴
作 家
作 品
芥川龍之介
【尼提】
無智愚昧(むちぐまい)の衆生(しゅじょう)に対する、海よりも深い憐憫(れんびん)の情はその青紺色(せいこんしょく)の目の中にも一滴(いってき)さえ浮べさせたのである。こう言う大慈悲心を動かした如来はたちまち平生の神通力(じんつうりき)により、この年をとった除糞人(じょふんにん)をも弟子(でし)の数(かず)に加えようと決心した。
山本宣治

【婦人雑誌と猫】
「併し彼女達の世界は何と小さいものだらう。斯様に狭く、又石器時代の様に斯くも古い、又いぢらしい程単純で善良で柔和で謙遜で、徹頭徹尾女らしく出来て居る。此薄つぺらな月並雑誌の悪い印刷の頁を繰る時、一滴を落とすまいと努めても困難である。」

国木田独歩
【窮死】
十二歳ごろの時、浮浪少年とのかどで、しばらく監獄に飼われていたが、いろいろの身のためになるお話を聞かされた後、門から追い出された。それから三十いくつになるまで種々な労働に身を任して、やはり以前の浮浪生活を続けて来たのである。この冬に肺を病んでから一滴飲むことすらできず、土方にせよ、立ちん坊にせよ、それを休めばすぐ食うことができないのであった。
嘉村礒多
【足相撲】
やがて日が暮れ體中に酒の沁みるのを待つて、いよいよこれから談話を始めようとする前、腹こしらへにと言つて蕎麥(そば)を出されたが、私は半分ほど食べ殘した。するとZ・K氏は眞赤に怒つて、そんな禮儀を知らん人間に談話は出來んと言つて叱り出した。私は直樣(すぐさま)丼(どんぶり)の蓋を取つておつゆ一滴餘さず掻込んで謝つたが、Z・K氏の機嫌は直りさうもなく、明日出直して來いと私を突き返した。
田中貢太郎
【蕎麦餅】
一滴もいけない季和はそう言って断った。
「一杯位はよろしゅうございましょう」
「有難いが、私は一滴も飲めない」
「では、食物をあげましょうか」
ガールシン
二葉亭四迷 訳
【四日間】
相変らずの油照(あぶらでり)、手も顔も既(も)うひりひりする。残少なの一滴残さず飲干して了った。渇(かわ)いて渇いて耐えられぬので、一滴(ひとしずく)甞める積(つもり)で、おもわずガブリと皆飲んだのだ。嗚呼(ああ)彼(あ)の騎兵がツイ側(そば)を通る時、何故(なぜ)おれは声を立てて呼ばなかったろう? よし彼(あれ)が敵であったにしろ、まだ其方が勝(まし)であったものを。
有島武郎
【カインの末裔】
狂暴な仁右衛門は赤坊を亡(な)くしてから手がつけられないほど狂暴になった。その狂暴を募らせるように烈(はげ)しい盛夏が来た。春先きの長雨を償うように一滴も降らなかった。秋に収穫すべき作物は裏葉が片端(かたっぱし)から黄色に変った。自然に抵抗し切れない失望の声が、黙りこくった農夫の姿から叫ばれた。
萩原朔太郎著
【詩集 月に吠える】
君の電流体の感情はあらゆる液体を固体に凝結せずんばやまない。竹の葉の水気が集つて一滴となり、腐れた酒の蒸気が冷(つめ)たいランビキの玻璃に透明な酒精の雫を形づくる迄のそれ自身の洗練はかりそめのものではない。君のセンチメンタリズムの信条はまさしく木炭が金剛石になるまでの永い永い時の長さを、一瞬の間に縮める、この凝念の強さであらう。摩訶不思議なる此の真言の秘密はただ詩人のみが知る。
 
   
 
 
 

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Last updated : 2019/05/16