吉田兼好「徒然草」に見る月
第二十一段
よろずの事は、月見るにこそ…」

 吉田兼好よしだけんこう(弘安6年〈1283年〉頃? - 文和元年/正平7年〈1352年〉以後?)が書いたとされる「徒然草つれづれぐさ」には月が多数出てくる。

*引用した文章は、各段とも省略している部分があります。
  • 《第二十一段》
    万のことは、月見るにこそ、慰むものなれ
  • 《第八十三段》
    「亢竜の悔あり」とかやいふこと侍るなり。月満ちては欠け、物盛りにしては衰ふ。万の事、先の詰まりたるは、破れに近き道なり
  • 《第百三十七段》
    花は盛りに、月は隈なきをのみ、見るものかは。雨に対ひて月を恋ひ、垂れこめて春の行衛知らぬも、なほ、あはれに情深し
    望月の隈なきを、千里の外まで眺めたるよりも、暁近くなりて待ちいでたるが、いと心深う、青みたる樣にて、深き山の杉の梢に見えたる、木の間の影、うちしぐれたるむら雲がくれのほど、またなくあはれなり
  • 《第二百十一二段》
    秋の月は、限りなくめでたきものなり。いつとても月はかくこそあれとて、思ひ分かざらん人は、無下に心うかるべき事なり
  • 《第二百三十九段》
    八月十五日・九月十三日は、婁宿なり。この宿、清明なる故に、月を翫ぶに良夜とす
  • 《第二百四十一段》
    望月の円かなる事は、暫くも住せず、やがて欠けぬ
《徒然草 第二十一段》
 ここでは、「どんなときも、月を見ると心が癒やされる」と記した「第二十一段」の全文を見てみます。
吉田兼好「徒然草」
《第二十一段》
 嵯峨本(慶長・元和年間)
(国立国会図書館蔵)
 よろずのことは、月見るにこそ、慰むものなれ。ある人の、「月ばかり面白きものはあらじ」と言ひしに、またひとり、「露こそなほあはれなれ」と争ひしこそ、をかしけれ。折にふれば、何かはあはれならざらん。
 月・花はさらなり。風のみこそ、人に心はつくめれ。岩に砕けて清く流るる水の気色こそ、時をも分かずめでたけれ。「げんしょう、日夜ひんがしに流れ去る。愁人のために留まること、少時しばらくもせず」といへる詩を見侍りしこそ、あはれなりしか。
 嵆康けいこうも、「山沢に遊びて、魚鳥を見れば、心楽しぶ」と言へり。人どおく、水草清き所にさまよひありきたるばかり、心慰むことはあらじ。

 第二十一段

  よろず のことは、月見るにこそ、慰むものなれ。ある人の、「月ばかり面白きものはあらじ」と言ひしに、またひとり、「露こそなほあはれなれ」と争ひしこそ、をかしけれ。折にふれば、何かはあはれならざらん。

 月・花はさらなり。風のみこそ、人に心はつくめれ。岩に砕けて清く流るる水の気色こそ、時をも分かずめでたけれ。「げんしょう、日夜ひんがしに流れ去る。愁人のために留まること、少時しばらくもせず」といへる詩を見侍りしこそ、あはれなりしか。

 嵆康けいこうも、「山沢に遊びて、魚鳥を見れば、心楽しぶ」と言へり。人どおく、水草清き所にさまよひありきたるばかり、心慰むことはあらじ。

 よろずのことは、つきみるにこそ、なぐさむものなれ。あるひとの、「つきばかりおもしろきものはあらじ」といいしに、またひとり、「つゆこそなほあ われなれ」とあらそいしこそ、おかしけれ。おりにふれば、なにかはあはれならざらん。

 つき・はなはさらなり、かぜのみこそ、ひとにこころはつくめれ。いわにくだけてきよくながるゝみずのけしきこそ、ときをもわかずめでたけれ。「げん・しょう、にちや、ひんがしにながれさる。しゅうじんのためにとどまることしばらくもせず」といえるしをみはべりしこそ、あはれなりしか。

 けいこうも、「さんたくにあそびて、ぎょちょうをみれば、こころたのしぶ」といえり。ひととおく、みずくさきよきところにさまよいありきたるばかり、 こころなぐさむことはあらじ。

 どんなときも、月を見ると心が癒やされるものである。ある人が、「月ほど面白いものはない」と言ったところ、また一人が「露こそ趣深い」と争ったのは実に面白いことであった。折にふれれば、何であろうと趣深くないことがあろうか。

 月・花は言うまでもない。風はまったく、人に風流心を与えるものであろう。岩に砕けて清く流れる水の情景は、実に、季節を問わず素晴らしいものだ。
げん しょう の川は、日夜東に流れ去る。それを愁う人のために留まることは、一時もない」という詩を見ると、実に感慨深い。

 竹林の七賢の一人 嵆康 けいこう も、「山の沢に遊んで魚や鳥を見れば心は楽しむ」と言った。人里遠く、水や草が清らかな所にさまよい歩くことほど心慰められることはない。

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Last updated : 2020/06/30