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山川草木
さんせんそうもく
作家
作品

高村光太郎

【智恵子抄】

メトロポオル


智恵子が憧れてゐた深い自然の真只中に
運命の曲折はわたくしを叩きこんだ。
運命は生きた智恵子を都会に殺し、
都会の子であるわたくしをここに置く。
岩手の山は荒々しく美しくまじりけなく、
わたくしを囲んで仮借しない。
虚偽と遊惰とはここの土壌に生存できず、
わたくしは自然のやうに一刻を争ひ、
ただ全裸を投げて前進する。
智恵子は死んでよみがへり、
わたくしの肉に宿つてここに生き、
かくの如き山川草木にまみれてよろこぶ。
変幻きはまりない宇宙の現象、
転変かぎりない世代の起伏、
それをみんな智恵子がうけとめ、
それをわたくしが触知する。
わたくしの心はにぎはひ、
山林孤棲こせいと人のいふ
小さな山小屋の囲炉裏に居て
ここを地上のメトロポオルとひとり思ふ。

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和辻哲郎

【寺田さんに最後に逢った時】

人間の作る機械よりもはるかに精巧な機構を持った植物が、しかも実に豊富な変様をもって眼の前に展開されている。自分たちが今いるのはわびしい小さな電車の中ではなくして、実ににぎやかな、驚くべき見世物の充満した、アリスの鏡の国よりももっと不思議な世界である。我々は驚異の海のただ中に浮かんでいる。山川草木はことごとく浄光を発して光り輝く。そういったような気持ちを寺田さんは我々に伝えてくれるのである。こうしてあの小さい電車のなかの一時間は自分には実に楽しいものになった。

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折口信夫

【神道の新しい方向】

だからまづ其最初の難点であるところの、これらの大きな神々をば、われ/\の人間系図の中から引き離して、系図以外に独立した宗教上の神として考へるのが、至当だと思ひます。さうして其神によつて、われ/\の心身がかく発育して来た。われ/\の神話の上では、われ/\の住んでゐる此土地も、われ/\の眺める山川草木も、総て此神が、それ/″\、適当な霊魂を附与したのが発育して来て、国土として生き、草木として生き、山川として成長して来た。人間・動物・地理・地物皆、生命を完了してゐるのだといふことをば、まう一度、新しい立場から信じ直さなければならないと思ひます。つまりわれ/\の知識の復活が、まづ必要なのです。

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小出楢重

【大切な雰囲気 大切な雰囲気】

 近代芸術の画因モチーフとして機械というものが現れた。機械のなかった世界にあっては、人は自然界の万物のみを愛し、画家はまたその姿のみを描いた。だが、われわれの周囲が都会であり、近代であり、それが極度に発達し、機械がわれわれの生活を包んでしまえば、われわれは山川草木を見る以上に、毎日機械を眺め、それに包まれてしまう。すると、われわれは山川草木を愛していたとその同じ心でボイラーを愛しエンジンを磨く。昔は 塩原多助しおばらたすけが馬のために泣いたが、今はキートンが機関車と別れをおしむ。紳士は十六ミリ映写機のなめらかなる廻転を賞し、その運動の美しさに惚込ほれこみ、自動車の車体の色彩に興味を覚え、エンジンの分解に一日をついやし、その運動に見惚みとれたりする。

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北村透谷

【松島に於て芭蕉翁を読む】

 冥交契合の長短は、霊韻をくるの多少なり。霊韻を享くるの多少は、後に産出すべき詩歌の霊不霊なり。冥交契合の長き時は、おのづか山川草木うちに己れと同様の生命を認め来つて、一条の万有的精神を遠暢ゑんちやうし、唯一のうちに円成せる真美を認め、われ彼れが一部分か、彼れわれが一部分か、と疑ふ迄に風光のうちに己れを箝入かんにふ し得るなり。

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坂口安吾

【決戦川中島 上杉謙信の巻 ――越後守安吾将軍の奮戦記――】

 丸薬をのみこむようにバイを呑みこみはじめたのである。余がいくつも食さぬうちに、山盛りのバイがカラになった。放善坊は息つくヒマももどかしげに女中に命じた。
「もっと大きな皿にもっと山盛りにもってこい」
「キサマ、本当にうまいのか」
「うまいですとも。見直しましたよ。あなたも相当な食通だ。海底にも海底の山川草木があるものですが、その全ての精気がこもってますな。これは少くとも七十五尋以上の深海に生育していますよ」

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豊島与志雄

【白蛾 ――近代説話――】

 然し、人の感情の動きは、山川草木に関するものではなく、やはり人間に関するものでありましょうか。谷間の暗渠の蓋を取り去ったならば、そこに昔の小川が出現してくるであろうかと思われるような、妙なことが、実は起っていたのです。一言でいいますれば、街々の被覆が取り去られた焼け跡に、あの橋のたもとのお千代さんが出現していました。

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寺田寅彦

【俳諧の本質的概論】

 芭蕉の俳諧に現われた恋の句については小宮豊隆こみやとよたか君が本講座において周到な研究を発表されている。その説にもあるように俳諧に現われている恋は濃艶のうえん痛切であってもその底にあるものは恋のあわれであり、さびしおりである。すなわち恋の風雅であり、風雅の一相としての恋愛であり性欲である。恋の中に浸りながら恋を静観しうる心の余裕があるものでなければ俳諧の恋の句を作る事はできない。実際芭蕉は人間禽獣きんじゅうはもちろん山川草木あらゆる存在に熱烈な恋をしかけ、恋をしかけられた人である。芭蕉の句の中で単に景物を詠じたような句でありながら非常になまなましい官能的な実感のある句があるのは人の知るところであろう。これは彼の万象に対する感情が恋情に類したものであった事を物語るであろうと思われる。

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豊島与志雄

【自由人】

「僕は郷土という観念を持ち合わせません。僕にもし郷土というものがあるとしたら、その自然、つまり山川草木については、もう倦き倦きして、少しの新鮮みも感じませんし、その人間、つまり同郷人については、汗や垢にまみれた自分の肉体に対すると同様、古くさいその体臭に、嫌悪の念を覚ゆるばかりです。だから、郷土に自分自身を繋ぎとめるもの、例えば戸籍というようなものが、もし売れるものなら、僕は喜んでそれを売り払ってしまうでしょう。

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種田山頭火

【其中日記 (九)】

 十月廿六日 曇。

――酒をつつしみませう――、と自問自答した。
炭屋の小父さんが炭を持つて来て、しばらく話した。
いよ/\酒をやめる機縁が熟したらしい、肉体的にも精神的にも、経済的にも生活的にも(といつて全然アルコールと絶縁することは不可能だらうが)、これはまことに大事出来だ、自己革命の最たるものだ。
午後、樹明君来庵、ちりでほどよく飲んだ、そして六時のサイレンを聞いて、おとなしく別れた。
ばら/\雨、山川草木いよ/\うつくしい。
まづしささびしさにたへて、――月、虫、時雨。
石油が切れてゐるので宵から寝る。
おつとりとして生きたいな。

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Last updated : 2022/11/23