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自問自答
じもんじとう
作家
作品

太宰治

【風の便り】

あなたは臆するところ無く遊びます。周囲の思惑を少しも顧慮せず、それこそ、ずっかずっか足音高く遊びます。そうして遊びの責任を、遊びの刑罰を、ちゃんと覚悟して、逃げも隠れもせず平然たるものがあります。一言の弁明も致しません。それゆえ、あなたの大胆な遊びは、汚れがなくて綺麗に見えます。私たちは、いつでもおっかなびっくりで、心の中で卑怯な自問自答を繰りかえし、わずかに窮余のへんてこな申し開きを捏造し、責任をのがれ、遊びの刑罰を避けようと致しますから、ちょっとの遊びもたいへんいやらしく、さもしく、けちくさくなってしまいます。五十を越えたあなたのほうが、三十八歳の私よりも、ずっと若くて 颯爽さっそうとしているという事実は、私にとって、たしかに驚異でありました。

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坂口安吾

【三十歳】

 それから十年、終戦後の御作を読むうち、「戯作について」の日記の記事に、茫然と致したのです。
 あのころの私は毎日のように矢田さんをお訪ね致しておりました。矢田さんの寛大な心に甘えて、私はダダッ子のように黙って坐って、あの方の放心とも物思いともつかぬ寂しい顔や、複雑な微笑の翳を目にとめて、私はみるような澄んだ思いになるのでした。矢田さんは、寂しい人です。どうして、こんなに寂しい人なのだろう、美貌と才気にめぐまれたこの人の心をあたゝめる何物もないのだろうか、私はいつも自問自答していたのです。
 あなたと矢田さんが、あのような関係にあったとは! 矢田さんにも幸福な時があったんだ、私は当時を追憶して、思いは切なく澄むばかりです。

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種田山頭火

【其中日記 (五)】

晴、春風しゆう/\だつたが、午後は曇つて降つた、しかし昨日の雪のとけるといつしよに冬はいつてしまつたらしい。
草が萠えだした、虫も這ひだした、私も歩きださう。
一片の音信が、彼と彼女と私とをして泣かしたり笑はしたりする、どうにもならない私たちではあるが。
街へ出て、米すこしばかり手に入れる、餅ばかりでは困る。
心臓がわるい、心臓はいのちだ、多分、それは私にとつて致命的なものだらう。
どうせ畳の上では徃生のできない山頭火ですね、と私は時々自問自答する、それが私の性情で、そして私の宿命かも知れない!

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有島武郎

【カインの末裔】

 彼れが気がついた時には、 何方どっちをどう歩いたのか、昆布岳の下を流れるシリベシ河の河岸の丸石に腰かけてぼんやり河面かわづらを眺めていた。彼れの眼の前を透明な水が跡から跡から同じような渦紋かもんを描いては消し描いては消して流れていた。彼れはじっとそのたわむれを見詰めながら、遠い過去の記憶でも追うように今日の出来事を頭の中で思い浮べていた。すべての事が他人事ひとごとのように順序よく手に取るように記憶によみがえった。しかし自分が放り出される所まで来ると記憶の糸はぷっつり切れてしまった。彼れはそこの所を幾度も無関心に繰返した。笠井の娘――笠井の娘――笠井の娘がどうしたんだ――彼れは自問自答した。段々眼がかすんで来た。笠井の娘……笠井……笠井だな馬を 片輪かたわにしたのは。そう考えても笠井は彼れに全く関係のない人間のようだった。その名は彼れの感情を少しも動かす力にはならなかった。彼れはそうしたままで深い眠りに落ちてしまった。

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長谷川時雨

【田沢稲船】

「そんな生計みすぎも、書くための、命をささえるしろなのだろう。」
と、それは、思いやりのある暗い眼つきをしたが――ああ、やっぱり、くらべものにはならないのだ。好い気になって、のんきな気持ちで聴いていたが――
(じゃあ、あたしは、何を目的に、一生懸命になったら好いのだ。)
 自問自答すると、(恋愛)という答えしか出なかった。そしてまた、その目標は美妙斎だと思わないわけにはいかなかった。

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林芙美子

【多摩川】

「まだ、夕飯を食べてゐないんだけど、何かみつくろつて持つて來て下さい。ついでにビールもほしいな……」
 女中が浴衣を擴げながら、二人に着替へて風呂はどうかと訊いてゐる。周次は浴衣に着替へてさつさと風呂にはいりに行つた。風呂は鑛泉なのか藥臭い匂ひがしてゐた。
 何の爲に二人でこんなところへ來たのか、周次は自分でも妙な氣持ちだつたが、どんなに遲くなつても、兎に角、自分だけは歸らうと思ふのだつた。――女の方から勝手に去つておいて、いまさら、また、自分からよりを戻す氣にはどうしてもなれない。周次は自分で自問自答しながら、のびのびと廣い浴槽にひたつて眼をとぢてゐた。
 くみ子の良人の義太郎が、この二月に急性肺炎で亡くなつたことも知つてゐたが、周次は別にくやみ状も出さなかつた。

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宮本百合子

【田舎風なヒューモレスク】

 私は……しっかり眼と耳をつぶって寝返りを打った。
「しかし」
 いつか、また自問自答が始まった。
「――もち論あれがシュロの葉の立てる音だということはわかってはいるが……しかし、万一、そう万万万ガ[#「ガ」は小書き]一、その吉さという男が、血迷って女房を殺し、おれを馬鹿だといって笑ったかかあはどこにいると暴れ込んで来たら、自分はどうそれを扱ったものであろう」
 私は女だ。吉さが刃物をもって来ては一応かないそうもない。が、あそこにいる、命ばかりはお助けとはまたいえそうもない。ああ、昔の女侠客はそういう場合どうしたか、私も講談で知ってはいる。勇ましく体をつき出し、こうたんかを切るのだ。

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岡本かの子

【母子叙情】

 なるほど、かの女とても、むす子が偉くなるに越した事はないと思う。偉くなればそれだけ、世の中から便利を授かって暮して行ける。この意味からなら願っても、むす子に偉くなって貰いたい。しかし、親の身の誇りや満足のためなら、決してむす子はその道具になるには及ばない。実をいうとかの女も主人逸作と共に、時代の運に乗せられて、多少、知名の紳士淑女の仲間入りをしている。そして、自身めた経験からみたそういう世の中というものに、親身しんみのむす子をあてはめるため、しかったり、気苦労さすのは引合わないような気がする。
「では、なぜ?」とかの女はその夫人には明さなかったむす子を巴里パリへ留学させて置く気持の真実を久し振りに、自問自答してみた。まえにはいろいろと、その理由が立派な趣意書のように、心に うかんだものだが、もうそんな理屈臭いことは考えたくなかった。かの女は悩ましそうに、帽子のつばの反りを直して、吐き出すように自分に云った。

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水野仙子

【日の光を浴びて】

 わたし戸外そとみゝそばだて、それからすこくびをもたげてしづかな部屋へやなか見廻みまはしながら、自問自答 じもんじたふをした。

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嘉村礒多

【業苦】

 圭一郎はこれまで幾回も同じ意味のことを、千登世に不憫ふびんをかけて欲しいといふことを父にも妹にも書き送つたが、どうにも抽象的にしか書けない程自分自身がやましかつた。
 生活の革命――さういふ文字がもたらす高尚な内容が圭一郎の今度の行爲の中に全然皆無だといふのではなく、寧ろさうしたものが多量に含まれてあると思ひたかつた。が、靜かに顧みて自問自答する時彼は我乍ら唾棄の思ひがされ冷汗のおのづと流れるのを覺えた。

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吉川英治

【折々の記】

 また、いつ頃からか、私は、靈山人、或は靈山子と篏した十數枚の繪畫やら一帖餘の繪反古をも、書庫につツこんだ儘、時折、くり展げては、
 ――どうして、これ程な人が、不遇のまゝ終つたらうか。また、世人に今もかへりみられないのだらうか。
 そんな想ひを久しく自問自答してゐた。

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Last updated : 2022/11/23