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人事不省
じんじふせい
作家
作品

正岡子規

【墓】

…………………アアようよう死に心地になった。さっきひつぎき出されたまでは覚えて居たが、その後は道々棺で揺られたのと寺で鐘太鼓ではやされたので全く逆上してしまって、惜いかな木蓮屁茶居士などというのはかすかに聞えたが、その後は人事不省だった。少し今、ガタという音で始めて気がついたが、いよいよこりゃ三尺地の下に埋められたと見えるテ。静かだッて淋しいッてまるで 娑婆しゃばでいう寂莫せきばくだの蕭森しょうしんだのとは違ってるよ。

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夏目漱石

【思い出す事など】

 かく多量の血を一度に吐いた余は、その暮方の光景から、日のない真夜中を通して、明る日の天明に至る有様を巨細こさい残らず記憶している気でいた。程経ほどへさい心覚こころおぼえにつけた日記を読んで見て、その中に、ノウヒンケツ(狼狽ろうばいした妻は脳貧血をかくのごとく書いている)を起し人事不省おちいるとあるのに気がついた時、余は妻は枕辺まくらべに呼んで、当時の模様をくわしく聞く事ができた。徹頭徹尾明暸めいりょうな意識を有して注射を受けたとのみ考えていた余は、実に三十分の長い間死んでいたのであった。

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中島敦

【光と風と夢】

 私には私の仕事があった。続いて運ばれて来るに違いない負傷者の収容の為に、公会堂を使わせて貰い度いと牧師のクラーク氏等が言うので、街中を走り廻って、(極く最近、私が公安委員会に加わるようになったので)人々を叩き起し、緊急委員会を開き、公会堂を提供することに決めた。(一人の反対者あり。遂に説得す。)この事に就いての費用の拠出も可決。
 夜半、病院に戻る。医者は来ていた。二人の患者が死にひんしている。一人は腹部をやられた者。顔をゆがめつつ、しかし沈黙せる・傷々いたいたしき人事不省

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泉鏡花

【神鷺之巻】

 はたけ二三枚、つい近い、前畷まえなわての夜の雪路ゆきみちを、狸が葬式を真似まねるように、陰々と火がともれて、人影のざわざわと通り過ぎたのは――真中まんなかに戸板をいていた。――鳥旦那の、凍えて人事不省 ひとごこちなくなったのを助け出した、行列であった。

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宮本百合子

【年譜】

六月下旬に検事が来たとき私の調べの事情をはなし、自分が全く作為的な調書をとられていること、もし公判になれば、自分はそれをひるがえすということを話した。検事はそういう調べについて困ったことだといったまま帰った。七月二十日すぎ、その年の例外的な暑気と女監の非衛生な条件から、熱射病にかかり、人事不省になった。生きられないものとして運び出されて家へ帰った。三日後少しずつ意識回復した。しかし視力を失い、言語障害がおこり、翌〔々〕年春おそくはじめて巣鴨へ面会に行った。その時はじめて着た着物が、おもかった心もちが忘れられない。作家でこの年投獄された者は私一人であり中野重治は非拘禁のまま執拗に警視庁の調べをつづけられた。評論家、ジャーナリスト、歌人、俳人で検挙された人たちも少くなかった。

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海野十三

【三重宙返りの記】

「僕は、今日は、乗りませんよ」
「そんなことはない。あんたが乗らないということはない。そんなことをいうと、皆、乗らないといい出すよ。さあ、支度を」
「僕は、からだが悪いので……」
「どこが、どうわるい」
「心臓やその他……機上で人事不省 じんじふせいになるなんて、醜態しゅうたいですからねえ」
「なあに、心臓なんか、大丈夫だ。こんな機会は二度とないから、乗りなさい」

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夢野久作

【無系統虎列剌】

 ところがその夜中になって大変な事が持上った。天神髯の斎藤さんが、恐ろしく苦悶し初めてスバラシク吐瀉し続けて人事不省に陥った。熱は出ていないが見る見るうちに脈が悪くなって、ビクビクと 痙攣けいれんを起して固くなってしまった。まだ息の在るうちに、その皮膚を獣医の西木さんがつまんでみたら全く弾力を失ってしまっていたというんだ。

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野中至

【寒中滞岳記 (十月一日より十二月廿一日に至る八十二日間)】

山頂と寒気さほど差違なき五合目辺に於て、已に爽快を覚ゆるを以て考うれば、その身体に異常を感ずるものは、ただ気圧の点あるのみ、勿論運動または沐浴もくよく不如意ふにょい等も、大に媒助ばいじょする所ありしには相違なきも主として気圧薄弱のしからしむる所ならんか、しばらうたがいを存す、もし予にして羸弱るいじゃくにして、体育の素養なからんには、人事不省おちいりたる後ち、再び起つこと能わざりしならんにと、下山後医師の言を耳にしたることもありたれども、要するに予が幸に今日あるを得たるは、ひとえに有志者の特別の援助を与えられたるにる。

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甲賀三郎

【琥珀のパイプ】

 急報に接して出張した係官も一寸如何どうしていのか分らなかった。支配人と岩見とは厳重に調べられたが、支配人の言は全く信用するに足るもので、岩見も当時殆ど人事不省の状態にあったのであるから、これ亦 うたがいをかける余地がなかったのである。

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吉川英治

【三国志 桃園の巻】

 ――一方の督郵は。
 あの後、間もなく、下吏の者が寄ってきて、役所の中へ抱え入れ、手当を加えたが、五体の傷は火のように痛むし、大熱を発して、幾刻かは、まるで人事不省であった。
 だが、やがて少し落着くと、
「県尉の玄徳はどうしたっ」
 と、うわごとみたいに呶鳴った。

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Last updated : 2022/11/23