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遮二無二
しゃにむに
作家
作品

芥川龍之介

【河童 どうか Kappa と発音してください。】

岩の上に僕を見ていた河童は一面に灰色を帯びていました。けれども今は体中すっかり緑いろに変わっているのです。僕は「畜生!」とおお声をあげ、もう一度河童かっぱへ飛びかかりました。河童が逃げ出したのはもちろんです。それから僕は三十分ばかり、熊笹くまざさを突きぬけ、岩を飛び越え、遮二無二 しゃにむに河童を追いつづけました。

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芥川龍之介

【温泉だより】

するとある農家の前に栗毛くりげの馬が一匹つないである。それを見た半之丞はあとことわればいとでも思ったのでしょう。いきなりその馬にまたがって遮二無二 しゃにむに街道を走り出しました。そこまでは勇ましかったのに違いありません。しかし馬は走り出したと思うと、たちまち麦畑へ飛びこみました。

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国木田独歩

【湯ヶ原より】

 おきぬには出逢であはなかつた。あたまへである。ぼくその翌日よくじつしさうなそらをもおそれず十國峠じつこくたうげへと單身たんしん宿やどた。宿やどものそうがゝりでめたがかない、ともれてけとすゝめても謝絶しやぜつやまくもなかぼくくものぼつもりで遮二無二 しやにむにのぼつた。

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中原中也

【夜汽車の食堂】

 雪の野原の中に、一条ひとすぢのレールがあつて、そのレールのずつと地平線に見えなくなるあたりの空に、大きなお月様がポツカリと出てゐました。レールの片側には、真ッ黒に火で焦がされた、太い木杭が立ち並んでゐて、レールを慰めてゐるやうなのでありました。
 そのレールの上を、今、円筒形の、途方もなく大きい列車が、まるで星に向つて放たれたロケットのやうに、遮二無二走つて行くのでした。

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石川啄木

【刑余の叔父】

『馬鹿野郎! 行けい。』
と、突然いきなり林の中で野獣でも吼える様に怒鳴りつける。対手がそれで平伏へこたまれば可いが、さもなければ、盃をげて、唐突いきなり両腕を攫んで戸外そとへ引摺り出す。踏む、蹴る、下駄で敲く、泥溝どぶ突仆つきのめす。める人が無ければ、殺しかねまじき勢ひだ。滅多に負ける事がない。
 それは、三日に一度必ずある。大抵夜の事だが、時とすると何日も何日も続く。又、自分が飲んでゐない時でも、喧嘩と聞けば直ぐ駆出して行つて、遮二無二中に飛込む。

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坂口安吾

【老嫗面】

 安川が子供のときの話であつた。台所から茶の間まで飯櫃を運ぶことを命じられた。子供には重すぎたので、一足毎がひきずられて行く形であつたが、運悪く敷居に爪さきを引つかけたので、飛び込むやうな激しさで前へのめつた。飯はどつと畳の上へ流れでたが、彼は生爪をはがしたために、悲鳴をあげてころげまはつた。おたきの眼には四散した飯のほかには子供の怪我も映らなかつた。一途の憎悪が稜角をたてて盛りあがり、少年の一生に拭ふべからざる悪鬼の印象を与へたのだつた。おたきは子供の後襟をいきなり掴んで物置の中へひきずりこんだ。奥へめがけて力一杯押しとばしておき、遮二無二錠を下すのだつた。おたきの いつわらざる本心が咄嗟にあらゆる計算をふみはづしてその全貌を暴露してゐた。一日の米に価ひしない子供であつた。頭のしんへ突きぬける傷の痛さに泣き狂ひながら、子供は母の心を知り、茫然己れを失ふやうな竦む思ひを感じつづけた。こぼれた飯の惜しさにも価ひしない見棄てられた傷が、自分にかくも堪へがたい苦痛を与へてゐることが、奇妙な皮肉に思はれて、自虐的な滑稽感とめくるめく憤怒を覚えた。

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岡本かの子

【蝙蝠】

 そこで別の世界の子供の声のやうに「蝙蝠来い」とわめくのを夢のやうに聞いた。中にも軽く意表の外に姿をひらめかすお涌の姿を柳の葉の間から見て、皆三はとても自分と一しよに遊べるやうな少女とは思へなかつた……だが、さういふ少女のお涌が持つて歩き出したあの黄昏時たそがれどきの蝙蝠が、何故なぜともなく 遮二無二しゃにむに皆三には欲しくてたまらなくなつたのだ。性来動物好きの少年だつた皆三が、標本に欲しかつたといふことも充分理由にはなるのだけれど……。
 母親は皆三を外へ出しては自由に遊ばせない代りに、家の中ではタイラントにして置いた。そこで蝙蝠をもらつた機会から家へ来たお涌を皆三がしきりに友達にしたがつた様子を察して、その後、お涌をお八つに呼んだりなにかと目にかけるやうになつた。

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菊池寛

【三浦右衛門の最後】

 右衛門はこれを聞いて顔色を変えた。実際彼は主君を捨てて逃げて来たのである。府中を落ちて二、三里も行った時、彼らの一群を追いかける織田家の甲冑かっちゅうが四、五町後の街道に光るのを見た時に、彼は死を恐れる心よりほかの考慮は何もなかった。彼は馬に乗ることはすこぶる不得手なので、さっきから一行にしばしば乗り遅れている。もし敵に追いつかれたら、いちばん先に片付けられるのは自分でなければならぬと思うと、今にも背中に敵の槍首が突き通りそうで、生きた心持とてはなかったのである。彼は幾度も躊躇した後、左手の林の中に馬を乗り入れるとすぐ馬を乗り放して、それから遮二無二逃げたのである。彼はこういう弱味があるので、ぐうともいえなかった。
「見せしめに剥いでしまえ」と弥惣次が怒鳴った。

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中島敦

【李陵】

 翌日からの胡軍こぐんの攻撃は猛烈を極めた。捕虜ほりょの言の中にあった最後の猛攻というのを始めたのであろう。襲撃は一日に十数回繰返された。手厳てきびしい反撃を加えつつ漢軍は徐々に南に移って行く。三日つと平地に出た。平地戦になると倍加される騎馬隊の威力にものを言わせ匈奴きょうどらは 遮二無二しゃにむに漢軍を圧倒しようとかかったが、結局またも二千の屍体したいのこして退いた。捕虜の言が偽りでなければ、これで胡軍は追撃を打切るはずである。

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谷崎潤一郎

【恐怖】

「君、君、僕は今切符を切って貰ったんだが、少し待ち合わせる人があるから、此のあとへ乗るんだ。」
掛りの男にこうことわると、例の氷包こおりづゝみを額へあてながら、私は 遮二無二しゃにむに人ごみの流れに逆って、周章狼狽しゅうしょうろうばいして、悪魔に追わるゝ如く構外へ逃げ延びた。そうして、ベンチへどたりと崩れて、漸く胸を撫で下した。何処かで後指うしろゆびを差して自分の様子をゲラゲラわらって見て居る奴があるかも知れん。………

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Last updated : 2022/11/23