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色即是空
しきそくぜくう
作家
作品

森鴎外

【柵草紙の山房論文】

 われはかいなでの詩人に向ひて、大詩人になれともいはず、又大詩人に向ひて審美の理を談ぜむともせず。されどいやしくも言を立つるものに逢ふときは、昧者と雖も打ち棄ておくことなし。早稻田文學にして其記實を以て理を聽くことの初發心を作るといはゞ、われはまた我が談理を以て美を觀ることの初發心を作るといはむ。
 逍遙子また言へることあり。われは空理を後にして現實を先にすと。現實に對するに空理を以てしたるは、佛家のいはゆる色即是空の空なるか知らねど、よの常の用語に從ふときは、こゝにても實を揚げ理を抑へたるに似たらむか。

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坂口安吾

【明日は天気になれ】

 二番目は酒、で一番目の分るところが絶妙である。「なるほど。シャレの手としちゃア、気がきいてるぜ。よーし、オレもやろう」
 というので、二番目を言っただけで一番目がピタリという奴はほかにないかとウの目タカの目で探しても、オイソレと見つかるものではない。シャレは類型をさがして、お手本に似せようと心掛けるようでは、もうシャレ本来の精彩を失ってしまうものだ。
 こういうシャレが実在しては、お前の趣味は? ときかれても、バカバカしくて、それではと返事をする気になれないのが当り前であろう。また、きく方も、きく方だ。
 しかし、突きつめればそういうものではあるが、何事につけても「二番目が酒です」式では人生花も実もない。造った物はこわれる。人間は死ぬ。色即是空。これじゃ出家遁世する以外に手がない。
「与太郎じゃねえか。大きくなったな。いくつになった?」
「きいて、どうする」
「年ぐらいきいたっていいじゃないか。そう、そう、今度中学校をでたってな。お前、なんになる」
「死ねば白骨となるな」

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太宰治

【新釈諸国噺】

「いや、ひどいめに遭った。」と吉郎兵衛は冷汗をぬぐい、「それにしても、吉州も、きたない女になりやがった。」
色即是空 しきそくぜくうか。」と甚太夫はひやかした。
「ほんとうに、」吉郎兵衛は、少しも笑わず溜息をつき、「わしはもう、きょうから遊びをやめるよ。卒堵婆小町そとばこまちを眼前にありありと見ました。」
「出家でもしたいところだね。」と六右衛門はひとりごとのように言い、「わしはもう殺されるのではないかと思った。おちぶれた昔の友達ほどおそろしいものはない。みちで逢っても、こちらから言葉をかけるのは遠慮すべきものかも知れない。誰だい、一ばん先に言葉をかけたのは。」

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横光利一

【欧洲紀行】

印度洋羽毛動かず鳥立ちぬ

 太陽の直下のため、ここは風波が起らぬと見える。人心もこれに準じるものらしい。人々の眼の黒く大きいのは、強い光線と闘って来たからだが、とうとう自然に負けて今では眼だけがぎろりと自然の眼のようになっている。このような眼でこそ色即是空というような虚無的な思想が生れたのであろう。日本は長い間これを真似して来たのである。得たものは無だ。生命を鴻毛の軽きにするのもここからだが、印度人の自然への執着の強さに比して日本のは何と変った獲物であろうか。

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野村胡堂

【錢形平次捕物控 髷切り】

「南無、南無、南無」
 乞食坊主は何やら口の中でブツブツ言つて居ります。五十前後、或は六十近いかも知れません。何を食べて生きて居るかわかりませんが、骨と皮ばかりの青黒くからびた身體を、羊羹やうかん色になつた破れ御衣ごろもに包んで、髯だらけの顏、蟲喰むしくひ頭、陽にけて思ひおくところなく眞つ黒になつた顏を少し阿呆あほたらしく擧げて、意味もない念佛やらお經やらを、ブツブツつぶやくと言つた世にも情けない存在です。
 心も空に、吉原へ飛んで行く遊冶郎いうやらうの中に、たま/\諸行無常とか、色即是空 しきそくぜくうとか言つた後生氣を出して、此乞食坊主の鐵鉢に、小錢を投り込んで行く人間も、まれにはあることでせう。
「少し訊き度いことがあるんだがな」
「へエ」

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宮本百合子

【日記 一九二五年(大正十四年)】

十月三十日

(金曜)
 今日瀧田氏の葬儀、告別式本郷にある。出かけた。かえりに家に廻る。少し足りないような書生、自分も座布団に坐り、手をもみ、口の端のこわれた、花柳病のありそうな男、然し、性質はよさそうで、故瀧田氏をしんからおしむらしく話した。つい先頃結婚して秋田に行った長女泣いて玄関から入らなかったと。又「先生は鯉がすきでねえ、鯉ばかり眺めてったが――鯉ばかりのこってしまってねえ」と。夜そんな話をして居るとフトY、東京毛織の塚口という男の死亡広告を見、深く動かされたらしかった。この男は、彼女との間にいきさつがあった人の由。死んでしまった。色即是空という感を私まで抱いた。彼のためにYの感じただろうすべての感情! 不思議という心持がする。
 林町でモ服とかえた。かえり肴町マデスエ子と来、お下げどめを買ってやる。

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吉川英治

【宮本武蔵 風の巻】

「困らしてやるとも、くそったれ婆め、鬼婆め!」
「オオ、オオ。なんとでもいうがよいわい。さあさあ、そこを退きなされ。今、お通の首を掻き切って、それからとっくりと話して進ぜる」
「た、たれが、薄情婆の談義などを聞くかっ」
「そうでない、胴を離れたお通の首を見てからじっと考えてみるがよいわさ。美貌きれいがなんじゃあ……美しい女子おなごも死ねば白骨……色即是空しきそくぜくうを目に見せて進ぜよう」
「うるせえッ、うるせえッ」
 又八は、狂わしげに、強くかぶりを振って、
「……アーア。考えてみると、おれの望みはやっぱりお通だった。時々、これじゃいけないと思って、なにか立身のみちを捜そう、なにか一つ励みを出そうと、真面目な奮発が起るのも、その時には、お通と添うことを考えているからだった。――家名でもねえし、こんなくそ婆アのためでもねえ。――お通が望みにあったればこそ」

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Last updated : 2022/11/23