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衆生済度
しゅじょうさいど
作家
作品

菊池寛

【恩讐の彼方に】

「重ね重ねの悪業を重ねた汝じゃから、有司の手によって身を梟木きょうぼくに晒され、現在の報いを自ら受くるのも一法じゃが、それでは未来永劫、焦熱地獄の苦艱くげんを受けておらねばならぬぞよ。それよりも、仏道に帰依きえし、衆生済度しゅじょうさいどのために、身命を捨てて人々を救うと共に、汝自身を救うのが肝心じゃ」と、教化した。

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田中貢太郎

【長者】

「私は衆生済度のためにこんなことをしております」
「人に物を貰うに、何が衆生済度じゃ、それよりゃ、俺がお前を済度してやろう」
 長者はこう云うが早いか、旅僧の持っている鉄鉢を引ったくって、傍にある石の上に投げつけたので、鉢は音を立てて八つに砕けて空に飛び散った。

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島村抱月

【序に代えて人生観上の自然主義を論ず】

かえって否定するものの心事が疑われてならない。(衆生済度しゅじょうさいどの方便なら構わないが)傍に千万巻の経典を積んでも、自分の知識は「道徳の底に自己あり」という一言でこれを斥ける勇気を持っている。

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三木清

【親鸞】

本願はつねに歴史的現実(機)に相応するところの衆生済度の愛の願いである。ひとは邪道を離れて仏門に入る。そのとき彼がまず為そうとすることは何であるか。

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柳宗悦

【民藝とは何か】

その貧しさは不自然なものではないのです。その粗末さにもどこか自然な美しさが見えるのです。あの茶人は「ゆがみ」にも「傷」にも美を認めました。あの如来の衆生済度しゅじょうさいどの誓願が果されなかった場合がないのと同じなのです。民藝品たることと「救わるること」とを、二つに分けて考えることはできません。救わるる世界の中で彼等が作られているからです。思えば民藝品は絶大な他力の中に抱かれているのです。

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坂口安吾

【金銭無情】

私は然し、最上先生には一つだけ足りないものがあると思ふな。それはつまり浮気は宗教である、といふ思想に就てゞすな。即ち浮気は宗教であるですよ。キリストも釈迦も説法をやるです。これ即ち口説くどきですよ。衆生済度しゅじょうさいどといふですな。浮気も即ち救ふといふことです。口説は即ち女人を救ふ道ですよ。浮気によつて救ふ。肉体によつて救ふ。口説のカラ鉄砲といふのは、いけねえな。一万円あげるとか、お店をもたせてあげるとか、嘘をついて女を口説いてはいけないです。

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豊島与志雄

【秦の出発】

「そいつが問題なんだ。もともと、僕の愛情も……不純だったかも知れない。はじめはあれの一風変ったところに心が惹かれ、それからはあの霊界のことだ。あまり概略的な言い方だけれど、神秘を失うことは精神を失うことだと僕は思っている。キリスト教も、マホメット教も、予言者が出現しなくなってからは堕落した。仏教も、真如探求から衆生済度へ転向してから低俗になった。日本のあのみそぎ修業は――これは君の方がよく知ってる筈だが――神の世界を持ち続けてる間しか、生きた生命はなかろう。神秘、奇蹟、霊界……現代人の知性では理解出来難い何物か、それを失う時には、人間の高い精神も滅びてしまう。と言って、僕は霊界の存在を信ずるのではない。それは信じないが、然し、右の理論だけは確信している。そしてこれがまた東洋の信念なのだ。」

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中里介山

【大菩薩峠 小名路の巻】

お寺にいては、そういろいろのものをやるわけには参りませんから、在家ざいけにおりますうちに、あれこれと手を出しておきたいと思っているんでございます。それでは芸人になるとおこごとが出るかも知れませんが、私は芸人でよろしうございます、とても名僧智識となって、衆生済度しゅじょうさいどを致すようなことは、私共の及ぶところではございませんから、芸人となって、いろいろの面白い音曲を皆様にお聞かせ申し、皆様をお喜ばせ申すことができれば、それで結構でございます。

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  • それぞれの四字熟語の詳しい意味などは、辞典や専門書でお確かめください。
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Last updated : 2022/11/23