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大胆不敵
だいたんふてき
作家
作品

坂口安吾

【狼園】

 私達の面前へ現れた少女はその訝しげな視線によつて先づ我々を交互に焼けつくやうに凝視め続けた。その眼は次第に大胆不敵な光りを加へ、その視線が私の顔に向けられた時には、恰も眼光が次第に膠着するもののやうな執拗な厚みを感じたほどであつた。少女は全く無言であつた。突然二九太は少女の前へ進んでいつた。コップに酒をつぎそれを突きだしながら激しい視線で少女を凝視めた。

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織田作之助

【聴雨】

 彼の棋風は、「坂田将棋」といふ名称を生んだくらゐの個性の強い、横紙破りのものであつた。それを、ひとびとはつひに見ることが出来なくなつた。かつて大崎八段と対局した時、いきなり角頭の歩を突くといふ奇想天外の手を指したことがある。果し合ひの最中に草鞋わらぢの紐を結ぶやうな手である。負けるを承知にしても、なんと不逞々々ふてぶてしい男かとあきれるくらゐの、大胆不敵な乱暴さであつた。棋界は殆んど驚倒した。一事が万事、坂田の対局には大なり小なりこのやうな 大向おほむかふをうな らせる奇手が現はれた。その彼が急に永い沈黙を守つてしまつたのである。

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菊池寛

【川中島合戦】

 時正に秋もなかば、軍旅の好期である。飯山に出でた謙信は、善光寺にもとどまらず、大胆不敵にも敵の堅城たる海津城の後方をグルリと廻り、海津城の西方十八町にある妻女山(西条山ともかく)に向った。北国街道の一軍は、善光寺近くの旭山城に一部隊を残し、善光寺から川中島を南進し、海津城の前面を悠々通って妻女山に到着した。
 甲の名将高坂こうさか弾正昌信の守る堅城の前後を会釈もなく通って、敵地深く侵入して妻女山に占拠したわけである。正に大胆不敵の振舞で敵も味方も驚いた。しかし妻女山たる、巧みに海津城の防禦正面を避け、その側背を脅かしている好位置で、戦術上地形判断の妙を極めたものであるらしい。凡将ならば千曲川の左岸に陣取って、海津城にかかって行ったに違いないのである。

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萩原朔太郎

【日清戦争異聞(原田重吉の夢)】

「中隊長殿! 誓って責務を遂行します。」
 と、漢語調の軍隊言葉で、如何いかにも日本軍人らしく、彼は勇ましい返事をした。そして先頭に進んで行き、敵の守備兵が固めている、玄武門に近づいて行った。彼の受けた命令は、その玄武門に火薬を装置し、爆発の点火をすることだった。だが彼の作業を終った時に、重吉の勇気は百倍した。彼は大胆不敵になり、無謀にもただ一人、門を乗り越えて敵の大軍中に び降りた。

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野村胡堂

【楽聖物語】

 今世紀の初頭から第一次欧州大戦前まで、最も大胆にして革命的な音楽家として喧伝けんでんされた。その音楽論は官能主義に徹して、伝統を無視したものであったが、畢竟ひっきょうはカンディンスキーの絵画におけると同様、理論におぼれて、優れた才能をのばし切らぬうちに倒れてしまった形である。しかし視覚や嗅覚きゅうかくまでも音楽に採り入れようとした試みは大胆不敵で興味の深いものであった。
「法悦の詩」と「プロメテウス」はその代表作で、幸いビクターにストコフスキーの指揮で入っている(七五一五―八)。

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岸田國士

【ある夫婦の歴史】

「僕には言はないね。むろんもう、どつかで見せられてるだらうがね」
 こんな会話の間に、夫婦の気持は別々な方向に動いていつた。夫の達郎は、ロベエル・コンシャアルのタンゲイすべからざる行動を追ひ、妻の真帆子は、志村鈴江の大胆不敵な態度に引きかへて、自分の影の薄さ、夫への勝算歴然とした抗議さへ控へたくなるやうな心の弱さを、歯がゆく思ふのであつた。

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中谷宇吉郎

【茶碗の曲線 ――茶道精進の或る友人に――】

 弟は大分苦しんでいたらしいが、研究がまとまらないうちに巴里パリへ行くことになり、向うで病気をして、帰って間もなく死んでしまった。それで土器の形の数学的考察という一風変ったこの研究は、とうとうの目を見ずにそれ切りになってしまった。
 今から考えてみると、これはずいぶん大胆不敵な研究にとりかかったものである。もしこれが出来上ったら、或る時代に或る民族または部落民が持っていた精神文化を数学的に規定出来ることになる。そんなことがやすやすと出来るはずがない。

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島木健作

【黒猫】

 私はすぐには眠れなかった。やはり彼奴であったということが私を眠らせなかった。そう意外だったという気もしなかったし、裏切られたという気もしなかった。何だか痛快なような笑いのこみあげてくるような気持だった。それは彼の大胆不敵さに対する 歎称たんしょう であったかも知れない。そういえば彼奴ははじめから終りまで鳴声ひとつ立てなかったじゃないか。私は今はじめてそのことに気づいた。

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吉川英治

【三国志 群星の巻】

呂伯奢りょはくしゃを殺して戻ったくせにしてさ、おれとしたことが、彼がたずさえていた美酒と果実を奪ってくるのを、すっかり忘れていたよ。やはり幾らかあわてていたんだな」
「…………」
 陳宮には、それに返辞する勇気もなかった。
 馬を隠して、しばらくの後、またそこへ戻って来てみると、曹操は、古廟の軒下に、月の光を浴びていかにも快よげに熟睡していた。
「……なんという大胆不敵な人だろう」
 陳宮は、その寝顔を、つくづくと見入りながら、憎みもしたり、感心もした。
 憎むほうの心は、
(自分は、この人物を買いかぶった。この人こそ、真に憂国の大忠臣だと考えたのだ。ところがなんぞ計らん、狼虎にひとしい大野心家に過ぎない)

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Last updated : 2022/11/23