『近世流行商人狂哥絵図』に見る
「江戸時代の行商人と売り声」
= 曲亭馬琴 =

熊の伝三膏薬くまのでんざこうやく
近世流行商人狂哥絵図・熊の傳三膏薬/熊の伝三膏薬
  • 絵にマウスを乗せると、部分的に拡大して表示されます。
 ・原文/翻刻(歴史的仮名遣い。*変体仮名は現用に置き換え)

《近世流行商人狂哥絵図》


熊の傳三膏薬



これはみなさまごそんじの
くまの傳三が熊のかうやく
きりきずしゆもつも
即座になほる
物はためしとおつしやろふ
これ此うでをきりまする
ところへかうすりこめば
見るうちにたちまちなほる
かぶれもできず
きものへつかず
なんときみやうじやござりませぬか

なるほどきみやうだ
かふてゆくべい
これこれ
こゝへも一かいください
 ・読み下し(現代仮名遣い・漢字交じり・振り仮名)

《近世流行商人狂哥絵図》


熊の伝三膏薬

くまのでんざこうやく


これは皆様御存じの
熊の伝三でんざが熊の膏薬
切り傷腫物しゅもつ
即座に治る
物は試しとおっしゃろう
これこの腕を切りまする
ところへこう擦り込めば
見るうちにたちまち治る
かぶれも出来ず
着物へつかず
なんと奇妙じゃござりませぬか

なるほど奇妙だ
うて行くべい
これこれ
ここへも一貝ひとかいください
  • この「近世流行商人狂哥絵図」に、狂歌が二首載っている。
『熊の傳三膏薬/熊の伝三膏薬』(曲亭馬琴・近世流行商人狂哥絵図)
・原文/翻刻(歴史的仮名遣い。*変体仮名は現用に置き換え)
これはみなさまごそんじの
くまの傳三が熊のかうやく
きりきずしゆもつも即座になほる
物はためしとおつしやろふ
これ此うでをきりまする
ところへかうすりこめば
見るうちにたちまちなほる
かぶれもできずきものへつかず
なんときみやうじやござりませぬか

なるほどきみやうだ
かふてゆくべい
これこれこゝへも一かいください
・読み下し(現代仮名遣い・漢字交じり・振り仮名)
これは皆様御存じの
熊の 伝三でんざが熊の膏薬
切り傷腫物しゅもつも即座に治る
物は試しとおっしゃろう
これこの腕を切りまする
ところへこう擦り込めば
見るうちにたちまち治る
かぶれも出来ず物へつかず
なんと奇妙じゃござりませぬか

なるほど奇妙だ
うて行くべい
これこれここへも一貝ひとかいください

近世流行商人 きんせいりゅうこうあきんど 狂哥絵図 きょうかえず は、曲亭馬琴きょくていばきん (明和4年6月9日(1767年7月4日) - 嘉永元年11月6日(1848年12月1日)/江戸時代後期の読本作者。代表作は『椿説弓張月』『南総里見八犬伝』)の作品です。天保6年・1835年 に刊行されたもので、江戸時代の行商人の姿と売り声を記しています。

 「二十三番狂歌合」「流行商人絵詞二十三番狂歌合」「近世商人狂歌合」などとも呼ばれます。

 画像は国立国会図書館所蔵によります。このページでは、画像を明るくするために当サイト独自の色彩補正を行っており、国立国会図書館が公開している原画とは色調が若干違います。

《参考》
  • 野村文紹による「世の中のくさぐさ記」(明治26年・1893年版)に描かれた『熊の伝三膏薬』
  • 熊の毛皮が敷かれ、膏薬を入れる蛤の殻が並べられている。

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Last updated : 2022/11/23